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神のDB(023)

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n24718b336576

後のお話:https://note.com/daikiha/n/n9a057eb3b6b6

【3】

『たく、あのヘタレ』
と、呟く声が聴こえるここは、レストラン&バー「クエリ」。
現在、2012年2月4日土曜日の午後3時。
週末のランチタイムも人段落して、客足も途絶えたアフタヌーンな午後のひと時。

カウンターの中でグラスを磨いている京耶は、肘を顎に当てながら不機嫌に座わる先ほどの呟いた声の主、ますみをみて、
『誰のことですか?ますみ』
と質問した。

『決まってます、ダイキのことです』
と、これまた不機嫌度が増したますみが答える。

『そうですか。しかし、大樹様がヘタレであることは、前から分かっていたことではないですか?何か、ありましたか?』
これまた、自然とダイキをけなす言葉を織り交ぜながら京耶はますみに質問した。

『別にたいしたことではないです。只、煮え切らない、というか、はっきりしない、っていうか。チョコだって別に。。』
『チョコ?ですか?』
『えっ! あ、ううん、なんでもないです、兄さま。そんなに重要なことでないですから、ご心配なく。』
と、少し慌てた様子で、ますみは話を終わらす。

しばらくの静けさ。

『いいではないですか。今年は無駄にならないのですから。がんばってくださいね、ますみ』
と、唐突に優しい笑みを浮かべながら京耶は言った。

『なっ!な、なにを言っているんですか!兄さま。別に毎年チョコを作っていた、とか、結局渡せず無駄にしていたとか、今年はチョコが渡せる、とか気にしているわけじゃなくって、でして、その、わたしは、』
『はい、わかってますよ、ますみ。さあ、お店の開店の準備をしましょう。』
『あ、ううぅ、もう!はい、わかりました!』
と、顔を真っ赤にしたますみは、カウンターの椅子から立ち上がりつつ、京耶の方を少しうらめしい表情をしながら言った。

京耶はそんなますみに、さらに朗らかな笑顔を向けていた。
そう、妹の今を、うれしく想いながら。


【Ⅱ】

ヴゥーン
無音の空間に響く音。
本来ならありえない音が響く空間。
そんな空間に佇む影。
『さて。』

影が呟く

空間が振動した瞬間、男が現れる。

『プラン通りだ』
『御意』
男はそう言うと、再び消える。

ヴゥーン
無音の空間に響く音。
ただそこに佇む影は、静かに顔を上げた。


【4】

2012年2月5日、日曜日。節分の次の次の日、バラ捲かれていた大豆もハトの胃袋に収まって落ち着いた休日

ボクはレストラン&バー「クエリ」にいた。
というか、ここ以外行くところがないんかい?と、心配していただく方もいらっしゃるかと思いますが。。。それは仕方ないのです。

だって、
『ダイキさん、今日はいいお天気ですね。こんな日は洗濯物が良く乾くので、なんだか嬉しい気持ちになりませんか?』

う~ん、癒されるぅぅ~。そうそう、これこれ、今のボクに必要なのは。

『?』
っと、少しボクの態度に不思議な想いを抱いている彼女は、ここのアルバイトの河合唯(かわいゆい)ちゃん。
今年の3月に高校を卒業する(ピッチピチチチ!!)女子高校生である。

いつも笑顔で、気遣う優しい言葉をかけてくれて、その仕草はあどけなく、ほわっっとした雰囲気をかもし出している
容姿は、髪型はショートカットで少し前髪をたらして、目はぱっちりと大きめ。。で、胸は少し控えめ。

で・も、それでイーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんです!
唯ちゃんは、それでいいのです!

人には生まれにしてキャラクターがあるのです!
足すらっとして、目はキッツキツな釣り目、性格もキッツキツで胸は美乳な豊乳の美人や
胸がぼっきゅーんな巨乳にして、スタイルは細身、にらみがきついすらっとした流し目と回し蹴りが綺麗に入りそうな長い足をもつ美人
なんぞもいらっしゃいますが、世の中に絶対に必須なキャラクターとして必要なのが『かわいい女の子』です!

ま・さ・に、唯ちゃんはそのキャラクター。
身長は少し小さめ、胸も少し控えめだけども、目はぱっちり大きくて、程よくついたムニムニの体つきからかもし出されるほや~んとした癒しオーラのかわい子ちゃん!

うーん、満足。
ボクはこれで来週からまた会社に。。

『ういーーっす!!兄貴!おざーす!!』

・・・・一気にテンションダウンやぁ。。

『やっぱここにいやしたね、兄貴!今日もいつも通りの気だるさバツグンで、絶好調っすね!』

あつい。いや、暑苦しいこの金髪つんつん(ワックス大量使用)な大柄な男は近森仁(ちかもりじん)。
元ヤンキーでその日暮らしのバイトをしている半ニートな、
『兄貴!ここにいるなら連絡くださいっすよ!舎弟として兄貴の警護はオレの仕事ですから!』
なぜかボクの舎弟、となっている(彼の中だけで)

『もう、仁君!ダイキさんはお疲れなんですよ!少し静かにしてあげて。』
『わりいわりい、唯。すまん。気をつけるから、そんなにおこんなって。兄貴からも言ってやってくださいよ』

と、ボクに振るなや、と思いつつ見つめるこの二人、実は幼馴染であり、

『もう、ダイキさんは普段のお仕事に加えて「特訓」もしているだから、もう少し気を使ってあげないといけないでしょ?』
そして、このレジスタンス日本支部 所属のレジスタンスでもある。

ここレストラン&バー「クエリ」は、実は神の世界の支配からの脱却と「神のDB」の破壊を目的とした集団「レジスタンス」の日本支部。
彼らレジスタンスは彼らの主「救世主」とその側近「4賢者」を敬い、護り、目的を達成するための集団。
その集団が敬う主、現在の「救世主」がボク。
またまた~、と思う方が500億人(世界人口超えて宇宙にまでか!)はいらっしゃるかと思いますが、本当らしいです、ハイ。
仁君は第一遊撃隊所属の特攻隊長、そして唯ちゃんは第二遊撃隊所属の後方支援担当だ。
そして、そんな彼らレジスタンスを束ねる日本支部のリーダーが、
『うふふ、仁君も唯くんも、大樹さんに夢中ですね。大樹さん、わたくし、そのカリスマ性に敬意を払わせて頂きます。』
と、これまた素直に受けられない胡散臭さをかもし出している「クエリ」のマスター、祠堂京耶さんである。

そして、キッチンにいるマスターの後ろでポニテを揺らしながら仕込みをしている女の子が、
『ん?なに人のお尻みてるのよ、スケベ。刺すわよ』
っと、これまた美人で巨乳でキッツキツな目線と言葉の暴力と包丁をこちらに向けているのが、おなじくレジスタンス第一遊撃隊所属の騎士、祠堂ますみ。マスターの妹さんでもある。

『ウェイト。まあ、まちなさいますみさん。お尻は見てないとは言わないけど、スケベは前からでしょ?それだけで包丁で刺されては命が幾つあっても(シュ!)』
ドス!ボクの後ろに何か刺さった音がした。そして、頬から・・
『きゃぁぁ!ダイキさん、血、頬から血が流れてます!大変ですぅ!!』
『唯。大丈夫よ。峰打ちだから。』
・・・峰打ち?
『って!こるりゃ!ますみ!包丁投げるなや!って峰打ちってなんだ!思いっきり刃の方がボクのほう向いてなげているじゃないかい!!ってウェイトウェイト。二本目はやめましょう。ますみさん。』
と、こちらの抗議に武力で(包丁で)押さえつけようとするますみに、ボクは停戦を申し出た。
『ふん!そんなの唾つけておけばすぐ直るわよ。(ペロ)はい』
っと、ますみは自分の指に唾液をつけて、ボクの頬に唾液を塗りまわした。
『おわっ!痛いわ!乱暴に・・しないでくださいィィ』
と、再びますみに睨まれて尻つぼむボク。

『ああ、ダイキさん、救急箱もってきましたら、手当てしますので、そこに座ってください。』
と、唯ちゃんが救急箱を持ってきてくれた。
『はうぅ。ありがとう、唯ちゃん。そんな優しくて、気がつくところも好きにょぉ~』
『はう!そんな。。好き、だなんて、当たり前のことしただけですからぁ。。』
と、赤くなって俯きながら救急箱から薬を取る唯ちゃん。うーん、ますます貴重ないい子。天然記念物に指定したいぐらいです、ハイ。

そんなやり取りをみていたますみは『ふん』と後ろ向きになり、仕込みの続きをする。
まあ、いつものことだから、慣れてしまってはいるんだけど。。。あ、そういえば頬に。。
『ますみ。』

『なによ。』
と、後ろを向きながら答えるますみ。そんな後姿に、

『ごめん、ありがとう』
その瞬間、肩をびくっっとさせ、『なに言ってんのよ、バカ』と言ったきり、仕込みを続ける。
そんなますみの反応になぜか、ボクは微笑と共にいつもの「日常」を感じて、そして

安堵した。

『うふぇー、ますねぇ、今日も兄貴にゲキキビっすねぇ。まあ、兄貴もいつものですけど。良く体もつっすよねぇ』
『うふふ、そうですねぇ。まあ、今日のますみは少しご機嫌が良くないようですね。唯くんと大樹さんのやり取りが』
『なんですか、兄さま。(キラン)』
『いえいえ、なんでもないですが・・・、ますみ、ひとつお願いが。』
『はい?』
『仕込みをする前に、手は洗ってくださいね。さすがに大樹さんの血が入ったレタスはお客様に出せませんので。』
『うぅ!あ、はい、わかりました!』
と、ますみは、洗面所のところにあわてて行く。そんなますみを見つめる京耶。そして、店内を見回し、窓の外をみて

『ふぅ。今日も平和、ですね。』

と、微笑むのであった。

前のお話:https://note.com/daikiha/n/n24718b336576

後のお話:https://note.com/daikiha/n/n9a057eb3b6b6

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