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読書感想文11

人間は賢い。

火を上手に使い、石器や土器を発明して環境に働きかけることができた。文明を作り出し、社会を築いて、成層圏を飛び越えて宇宙空間にまで生息域を拡大している。これは間違いなく生物種としては大繁栄である。

同時に人類は愚かだ。

戦争で互いを殺し合うし、刹那的な享楽のために自らが生きる環境を壊滅的で不可逆的に破壊したりする。

あたしの日常生活なんて愚かなことばかりだ。小さな頃から忘れ物癖はひどいし、だめだとわかっていても先送りしてしまうし、毎月ちゃんと定期的に(週1回とか)更新しようとしているnoteだって月末にまとめて書いている有様だ。

そして巷の本屋さんを見れば、愚かな自分がいかに賢くなるか(もしくは賢く見せかけるか)についての方法論を述べた本が平積みされてベストセラーになっていたりするので、きっとみんなそういう方法を求めているのだろう。

一体どういうことなのか。愚かで賢く無知なのに知によって反映する人間とはなんとも不思議な生き物だ。

こんな問題意識で書かれている本。それが『知ってるつもり -無知の科学-』である。

この本は、「知識の錯覚」をメインに、人間の知識のあり方について研究した成果を一般向けにまとめた本である。「知識の錯覚」とはまさにこの本のタイトルにある通り、「知ってるつもり」のこと。本人は知っていると思っていることも、少し深く突っ込んでみると実は全然わかっていなかった、なんてことはザラにある。

自転車を描いてくれ、と言われて正確に描けるだろうか。特にチェーンとペダルの位置はどうだろう。チェーンは自転車のどの部分に接続されている?ペダルはチェーンとどういう関係?

トイレの仕組みを知っている?と聞かれたら、大体の人は「知っている」と答えると思うが(あたしも)、1から10まで原理を詳しく説明できるだろうか?あの取手を動かすと水が流れる仕組み、流した水が流れ続けずに止まる仕組み、汚物を目の前から消し去るほどの水流を電気なしで生み出す仕組み、よくよく考えるとトイレの仕組みは複雑で、ほとんど自分はわかっていないことに気づく。

そんなことが世の中には溢れていて、あたしらはそれに気づかず生きている。むしろ気づかずに生きることができるように、利用するのに専門知識が必要無い形で隠されている。素晴らしい設計思想だ。

この本ではそういった事例の紹介から、人間の思考の構造、間違いの仕組み、人工知能の設計、社会構造、コミュニティのあり方など幅広い内容を「人間の無知」をベースに考えていく。

あたしが個人的にとても興味があったのは、

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僕が大学教員として、また家庭の主夫として日々考えていることのまとめです。内容は育児とダイエットと読書感想文が多めで、分野はあまり統一されて…

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