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焼おにぎりとカツ丼

その日の販売は
始まりからついていなかった。

 
まず、駐車場が空いていなかった。

 
警備員からは徒歩10分以上の場所に停めて
そこから荷物を運ぶように言われた。

荷物は大量なのに
そう言われた。

 
私は入口で降ろしたいと話したら
細かく駐車の位置を指定された。


荷物を一旦外に降ろし、その荷物を抱えて何往復かして室内に運び
私はそこで利用者に荷物番を頼んだ。

何故そこでイベントと決まっているのに
駐車場を前もって確保してくれないのだろうか。

何故警備員はイベントも
そのイベントが福祉施設がやることすら
把握していないのだろうか。

 
前回も今回もこの調子だった。 
不誠実にも程がある。

 
利用者に一人荷物番をさせる姿を見ても
駐車場の警備員は融通がきかず
私は汗だらけで走って利用者の元に行った。

 
その日の販売はお客様がほとんどいなくて暇だった。

 
蒸し暑く
汗が後から後からたれてくる。

「それパクリじゃねぇの?」
「俺金ないし、そんなもん買わねぇよ。」

公的な職業の方が
わざわざ私達に言いに来てくださった。
私はともかく、利用者に言わないでほしい。

 
 
その日の売上はひどかったが
利用者は私に「販売楽しかったね!」「色々な人に会えて嬉しい!」と笑いかけた。

なんて心が美しいのだろうか。

 
その利用者のお母さんが私に手作りの焼おにぎりを差し入れにくれて
ジーンとした。

そのおいしさや優しさに泣けてきた。

 
施設に戻ったら
調理師さんが給食をあたためてくれた。

その日はカツ丼。
あたたかくて優しい味で
私はまたも泣きそうになった。

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