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往復書簡/湊かなえ

「北のカナリアたち」という映画の原作と帯で知る。

文庫後ろの内容と第一章の「十年後の卒業文集」と内容が合わないと思ったら
別のストーリーというオチ。

 
なるほど、各章100ページほどの中編小説だったのか、と三章まで読んで気づく。
伏線探しに躍起になった私って一体…。

今まで読んだ湊かなえ作品で短編集はないし
100ページでは短編にしては長いし……と、言い訳。
 
 
 
ただ、この文庫収録作品はほんの一部しかつながりはないものの
何人かの登場人物が手紙のやりとりをしているという構成は同じである。
 
 
【十年後の卒業文集】
(内容)
少人数しかいない、同じ部活の仲間が結婚したことをきっかけに久々に再会し
手紙のやりとりをして浮かび上がるのは
楽しかった部活での思い出と千秋の怪我の真相のこと……海外赴任していた悦子は千秋の怪我のことを知らず、彼女が今行方不明だということも知らなかった。
 
 
海外赴任をトリックにし
都合の悪いことを上手く誤魔化せていたと思う。
さすが女優、といったところか。

 
途中から悦子は怪しいなぁと思っていたが 
まさかの最後の手紙がどんでん返し。

私は気づかなかったけど
読書家の人なら早々に真相に気づいたかも。
 
 
ただ、数年後に会おうと
筆跡や姿ってそんなに分からないものなのだろうか。
少人数の部活仲間なら誰か1人くらい気づきそうな気がする…
という疑問。
 
 
「部活は楽しかったね」と言いつつ
女性陣の関係性や心情は巧妙に隠されていた。相変わらずのリアリティ。

悦子は最後の手紙をどう受け取るだろう。
実は悦子も別の誰かと更につながっていたら面白い。黒幕は浩一くん説あったら笑える。
 
 
最後まで読んだ後にタイトルを見るとなるほどと唸る。
誰も死ななくてグロくないので、グロ苦手な私にはありがたい。
 
 
「好きな人は誰?」
それを複数人で話題にする時は大抵その場に合わせた回答をする人がいるものだ(女子あるある)。

私が高校1年の時、クラスに四天王がいて
「誰派?」という話によくなった。

四天王はクラスにいたかっこいい人4人を指すんだけど(F4みたいですね)
もちろん四天王以外にもかっこいい人はいて(私のアイドルはバスケ少年で、四天王ではなかった)
今までの人生の中で高1の頃が1番クラスにイケメンがいた。
私の高校自体がイケメン率高かった。

 
余談だが、私のその憧れの君の人は
のちにクラスメートと結婚したのだが
その前に彼女は別のクラスメートとも付き合っていて
女子みんなでビックリした。

 
私のクラスは男女仲があまりよくなかった。

嫌っているわけではなく
関わらないし、話さないのが普通だった。
共学で男女比率同じくらいだったのに。

中学時代は男女仲よかったから高校時代とはあまりのギャップである(職場環境は中学時代に似ているので、また話せるように戻った)。

一体あの環境下でいつの間に彼女は付き合うまでに至ったのかと、是非その技を伝授されたい。

今からでも間に合うのだろうか。
 
 
 
【二十年後の宿題】
(内容)
主人公は恩師の頼みで、恩師のかつての教え子が「今、幸せかどうか?」を聞きに回り、結果を手紙で恩師に伝える。
話を聞いて驚いたのは、20年前に不幸な事故があったこと…。
ちなみに主人公は放送部顧問である。
私が一章とつながっていると思ったのは一章のみんなが、放送部だったからだ。

 
恩師のイメージが手紙によって変わるのが面白い。
教師は万人ウケしないという話。
でも最後まで読むと、恩師がとてもいい先生で、人として家族を大切にする気持ちも兼ね備えていたと思う。 

 
映画化もされた作品で、このシーンはどんな風になったのかと考えながら読んだ。
こちらは事故で1人亡くなるものの、やはりグロくないので読んでいて安心。

「贖罪」に比べると軽い。サラッとしているミステリーだ。
もはやジャンルはミステリーに入るのか自信がない。
 
 
利恵と古岡の関係性が好き。
恋人ではないけど、ある意味恋人以上の関係が私は好きだ。

確かに両親の話によると、今は父の日や母の日にちなんだものは幼稚園や学級でやらないし、私が子どもの頃と時代は変わったのだろう。
ただ、当時から両親が離婚していたり、家庭環境が悪いと子ども達は色々言われたり、嫌な思いはしてきたのは想像がつく。
実際、私もそういうクラスメートに上手く言葉が返せなかったり、傷つけてしまって謝ったりした…なんせ小学生だ。 
今でもそうだが、私は思ったことをストレートに言いがちで配慮が足りないのだ。

 
私は大人になるにつれて、自分がいかに家族に恵まれてきたのかを知った。
愛情面だけでなく、長期休みの時には旅行に連れて行ってもらったり、習い事をしたりと、経済面でも苦労はなかった(お小遣いでやりくりできない、今月ピンチ!なんて個人的な苦労はあったが)。

 
恩師の旦那さんが好き。
凝った玉子焼きを作ったり、鳥の鳴き声を教えたり、奥さんと仲良くて…
優しい人だと思う。
 
事故に巻き込まれた生徒はみんな、旦那さんが好きで
恩師のことも当時は色々あっても
大人になって分かる恩師の偉大さを感じている。
 
 
湊かなえさんの作品の中で、あったかい作品だと思う。
 
 
 
最後の生徒さんがあぁいう形で見つかったのもやられたし(思えば伏線もあったのだが)
実は亡くなったのは2人だったというオチも切ない。

しかし、最後の手紙は何故名前が書いていないのだろうか。
内容も短すぎてとってつけた感が否めない。
そしてふと思った。

先生、もしかして、亡くなったのだろうか。
 
  
 
 
 
【十五年後の補習】
(内容)
婚約者が電気もろくに通っていないような国に国際ボランティア隊に参加し、エアメールで文通することに。
15年前の事件のことを彼女は忘れていたが、徐々にとんでもないことを思い出してしまう……。

 
 
最初はラブラブバカップルかよ、みたいな手紙のやりとりが
段々事件の核心に迫ってきて
追いつめられた彼女と
国際ボランティア隊に参加した理由を話して「さよなら」と告げる彼のやりとりに
まんまと騙された渡辺さんです(笑)
純くんごめんよ~騙されちゃったよ~!

 
「二十年後の宿題」でもそうですが
家庭環境に恵まれていない人に言い放つのは本当に酷です。
努力次第でどうにもできないしね。

私も昔、家族をバカにされた時にケンカしました。
「私のことを悪く言うのはともかく、お母さんを悪く言わないでよ!」確かそんな風に言い返しました。中学時代のことです。
この小説を読んであの日のことがリアルに浮かびました。忘れられないんですよ。

 
「十五年後の補習」の意味合いを知った時
なるほど、だから補習なんだな~と感心。
タイトルがある意味ネタバレです、この文庫。

 
なんだかんだでやっぱり
この2人は絆が深かった。
あったかいと思う。
純くんの嘘も万里子の行動も。

 
由美ちゃんや従姉妹の気持ちも私は分からないでもない。
別れたいわけではない。
痛いのが嫌なだけ。優しくされたい、愛されたいだけ。

昔、「智佳ちゃんはDV被害に遭いそう。」と言われたし、自分でも思ったが
今のところ恋愛対象の男性には手をあげられたことはない。

 
 
 
 
【一年後の連絡網】
短編です。
国際ボランティア隊の手紙のやりとりで、ほんのちょっと「二十年後の宿題」と「十五年後の補習」が絡んでいます。

エピローグ的なものですね。

 
 
 
「十年後の卒業文集」は登場人物が多くて手紙のやりとりも複数だからちょい苦戦したが
基本的にはサラサラと読みやすかった。

さて、次は何を読もうかな♪



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