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私とバセドウ病③【職場にカミングアウト】

職場に着いた私は
何事もなかったように笑顔で、しかし申し訳なさそうに
「遅れてすみません。」等と言いながら頭を下げた。

 
まずはキッチンに向かった。
時刻は13:15。
給食を食べないと始まらない。

しかし、不思議なことに私はお腹が空いていなかった。

 
事務長(調理員も兼務)はスープを温めていた。
私の顔を見ると真っ先に「どうだった?」と聞いた。

 
「バセドウ病でした。」

私は答えた。
そう答えるだけで
涙が込み上げてきて必死で笑った。

 
「絢香の?」

事務長が言う。

 
事務長は40代で癌だったことを話し
これくらいの年は体を壊すよねと話した。

 
私は給食を食べた。
お腹は空いていなかったけど
一口、また一口と食べると涙がまた込み上げてきた。

 
ご飯を食べ終わったら久々に利用者と作業をした。
いつもの作業だ。

それだけで嬉しかった。

 
利用者の送迎をした際

「真咲さん、通院で連日休んでいて大丈夫だったんですか?娘(利用者)も毎日心配していましたよ。」

と、保護者から言われた。

 
バセドウ病です、なんて言えない。
また月末に二回通院するんです、なんて。
これから二週間おきに通院、なんて。

言えない。

 
腕には痛々しい注射の跡が複数ある。
暑いけど、腕はまくれなかった。

 
送迎後、私は新施設長の元に行った。
確かに動悸がし、息が切れる。全てバセドウ病のせいか。はたまた気持ちのせいかは分からない。

 
立って息切れする私に
新施設長は「座って話して大丈夫ですよ。」と言った。

 
私は一部始終話した。

 
「バセドウ病って、あの歌手の?」

新施設長は絢香の話を出した。
さっき事務長も同じ反応をしていたので似た者同士だろう。

 
「通院を第一優先にしてください。」
「病気により負担のかかっている業務があれば、遠慮なくおっしゃってください。」

話を聞いた後
新施設長はそう言った。

 
だから来年度からやる予定の某業務がちょっと不安だと話したら
「それは一年交替でやる業務ですので。」と、ぴしゃりと言われた。

 
そういうところがストレスなんだよなぁ…

と内心思いつつ
「不安はありますが、周りの同僚に助言をいただきつつ頑張ります。」と
まるで面接のような模範的な言葉を私は発した。

 
でもとりあえずは否定的なことは言われなかったし
通院で休むことは許可されたので一安心した。

 
私は正職員の同僚にも報告した。

「病気により負担のかかっている業務があれば、遠慮なく言って。私、バセドウ病詳しくないからさ。」

そんな風に言ってくれてありがたかった。

 
私は正職員のみんなに症状や病気、通院日を伝えたが
ただ一人リーダーにだけは症状や病気は言えなかった。

 
頭に円形脱毛が五つもあるなんて言えなかった。

リーダーはきっとそんなこといい意味で気にしないけど
私は恥ずかしくて言えなかった。

 
リーダーが手帳に私の通院日を記入する。
申し訳なかった。

 
仕事が終わり、スマホを見ると
LINEやTwitterを通してたくさんの友達が優しい言葉をかけてくれた。

ウルッとしてしまう。ありがたい。

 
帰宅後、家族にも改めて話し(通院後にLINEをしていた)
どの治療がいいか話したりした。
 

 
周りからはあたたかい反応だったものの
それから私は悶々とした日々を過ごした。

 
やはり月二回の通院はまだしも、月四回は厳しい。
その他の病院の通院もあるから尚更だ。

 
有給もあまり残ってないし
近隣の土曜日もやっているクリニックに通院した方がいいのではないかと真剣に迷った。

 
私の状態が大学病院レベルなのか
クリニックでもいいレベルかが
今の私にはよく分からなかった。

 
だけど近隣の甲状腺の病院はやはりネットでも評判が悪く
私は頭を抱えるしかなかった。

 
次の通院は三週間後だし
主治医もまだ決まっていない。

主治医次第だと私は言い聞かせる。

 
主治医との相性が悪かったり
月四回の通院が続くようなら話をしてみよう。

そう思った。

 
朝は三種類の薬を飲むように言われた。

高熱やめまいが出たら予約日を待たずに通院と言われたが
今のところ副作用は出ていないのでホッとした。

バセドウ病、と名前は仰々しいが
頭に円形脱毛がある以外は変わらずに元気で
本当にバセドウ病か疑問にさえ思ってしまう。

でも今月は5回以上鼻血が出る。
ネットではバセドウ病と関係ないと書かれていたが
私と同様の状態の方もいるようだ。

 
主治医はどんな方か
何を言われるか
今から気になるし
通院システムがハイテクなので分かりにくいのも少し不安だ。

後はまあ
なるようになれ、だ。

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