入院52日目:15万円
朝は雨が降っていて寒かった。もっと厚手のズボンを履いてくればよかったと悔いた。5月なのに11度だった。
だけど、午後は一気に晴れて暑くなった。最高気温は17度。今日はそんな日だった。
午後、納税事務所に行き、利用者とひたすらに保護シールを剥がす仕事をした。
この作業は二日目だが、実に性に合っていて楽しい。明日は他の職員が行くので残念だ。
私が出掛けている間、施設では不穏な利用者が色々やって大変だったようだ。
先日入った職員はやはり動きがいまいちだ。入りたてだからか、今後動きはよくなるのだろうか。
最初に感じた、気が利いてテキパキ動けるタイプではないという予感は当たっているとしか思えない。
仕事に慣れ、覚えるまでの間、不穏な利用者は待ってはくれない。
仕事はなかなかに楽にならなかった。
みんな仕事がたまる一方、負担がたまる一方だった。
だけど、残業する気は起きなかった。
私はやる気がなかった。
どうせサービス残業だし、仕事は褒められはしないし、認められもしない。
お金ももらえないのだし、無駄に頑張る必要はない。
リーダーだってあんなに頑張っていたし、あんなに能力があったのに、割に合わなくて辞めてしまった。
私みたいな凡才は尚更、頑張る必要はない。それほどの仕事ではない。
むしろ残業するとあまりいい反応はされないし、適当でいい。
私はみんなと駐車場まで話しながら帰りたかった。
早く帰って夕飯を作らなければいけない。
お母さんの入院費は1ヶ月15万円だったらしい。
前の検査入院は12万円だった。
高額医療費でマックス額は7万円くらいのはずだが、食費や個室代は払わなければいけないと友達から聞いた。
働けない上にこれだけ支出があるのだし、やはり今後はやたらに姉や甥にご飯等を奢らないでほしい。
15万円。
お父さんはため息を吐いているけれど、私は15万円でお母さんがあそこまで劇的に動けるようになったのなら安いものだと思う。
例えば300万円でお母さんの右足が元に戻るなら、私は迷わずに一括で払う。
これからも色々と今年はお金がかかるだろう。
それでも、お母さんが生きているならそれでいい。
お母さんは毎朝新聞の花の記事を切り抜きしてノートに貼っていた。
入院してからはお父さんが代わりに切り抜きしていた。
退院後に貼ってもらおうとためていたが、先日お母さんに全て渡していた。
糊で貼るのもリハビリだと、お父さんは切り抜きまでしかしなかった。
お母さんは楽しみながら貼っているようだ。
お母さんはよくLINEで「今は○○見てるよ」と、テレビの何を見ているか教えてくれる。
同じテレビを見ていると、繋がっているようで嬉しい。
詰め物がとれた。
明後日は仕事休みだから歯医者に行こう。
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