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移転先の下見

職員会議の日は利用者が来ていない。

だからその日、会議の後
職員みんなで移転先の施設に行った。

 
その日来ていた女性職員みんなで車に乗り込む。
なんだか女子会みたいで楽しい。
キャッキャしながら駐車場に着き、少し歩いて移転先の建物に向かう。

 
私はギョッとした。
ずっと隣の建物が移転先だと思っていたからだ。

 
一人恥ずかしくなりながら、気を新たに建物の中に入る。

外観も中もあたたかい色味で
なるほど前施設長が決めたというその色は明るかった。

庭も室内も広い。
だけど私はその広さが喜べなかった。
広すぎて誰かを見失いそうな気がしたから。

 
法律の関係でクーラーがつけられない部屋がいくつかあり
近隣の人の意見で開けられない窓がいくつかあった。

駐車場は狭い上に信号が近くて入りにくかった。
形状的にバックで入らなければいけない。

広い庭はいらないから
駐車場を広げてほしかった。

 
職員駐車場が広いのはありがたかったが
早歩きで徒歩5分と遠かった。

出勤時間は早まり
施設は遠くなり
駐車場まで歩くのならば
今よりも20分は早く家を出なければいけないだろう。

 
職員みんなでキャッキャしながら歩く道は
確かに楽しくはあった。

 
その後、保護者向けに内覧会があった後
利用者も新たな施設を何度も見に行った。

 
先日私も利用者や施設長ともう一度見に行った。

駐車場に初めて送迎車を停めたが
想像以上に停めにくかった。

 
今の施設も停めにくいが
それがマシに思えるほどだった。
おまけに門扉まである。
一旦邪魔な位置に停車してから門扉を開け、そこからのバック駐車は面倒だった。

 
利用者と手を繋ぎながら進んだ。

そして玄関でギョッとした。
私の靴下に穴が空いていたからだ。
あぁ恥ずかしい。

 
以前見た時はまだごちゃっとしており
建設中だったが
だいぶ部屋らしくなってきた。

だけど、いたるところに不備が見つかり、やり直しだという。
移転までもう日がないのに移転は無事終わるのかと不安になった。

そう、移転までもう日はない。

 
もうすぐ今の建物での活動は終わる。

見れば見るほど今の建物や環境がいい気がしたが
利用者は新しい建物で歌い、独り言を言い
畳に座ってくつろいでいた。

くるくる椅子に座ったり、かくれんぼしたりと楽しそうだった。

住めば都になるといいな。

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