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アンネの日記/アンネ・フランク

以前、テレビでアンネやナチスについて特集をしていたのをきっかけに本を購入した。

先に漫画版を読んだ。涙が止まらない。さて、漫画の次はいよいよ本だ…と思ったが
私は購入したもののしばらく手を出さなかった。

 
まず第一に、私はオチを知っている。

いつか戦争が終わったら…と夢見ている少女が、あと一ヶ月生き延びれば連合軍が助けに来るところで亡くなったのを知っている。

 
第二に、ネタバレで文庫版は過激だと聞いていた。
性的な描写や家族に批判的な内容も多いらしいことを知っていた(漫画版の数十倍はひどい)。

 
第三に、ページ数が600ページと極太だった。
「あしながおじさん」や「アルジャーノンに花束を」でもそうだが、日記形式や手紙形式はなかなかに一気読みが難しく(基本的には日常淡々的だから)、読むのが長期戦になることを知っていた。
 
 
だが、コロナウィルスで外出が思うようにできなくなり、自宅での過ごす時間が増え
今こそ「アンネの日記」を読むべきだと思った。読みたくなった。時は来たのだ。

 
第一次世界大戦後の話だ。

アンネ・フランクは裕福な家に生まれ、両親、姉、お手伝いさんと暮らしていた。
明るく活発で言いたいことはなんでも言ってしまう…悪く言えば屁理屈屋だが、その明るさから友人はたくさんいて、ボーイフレンドもたくさんいたらしい(羨ましいなこのやろう)。

 
しかし、ヒトラーがドイツで総統になると、ユダヤ人狩り・ユダヤ人差別がひどくなっていく。
父親は身の安全を考え、ドイツからオランダに家族みんなで引っ越し。
しばらくはドイツよりは平穏な日々が続いたが
学校やお店は指定、洋服にダビデの星マークをつけなくちゃいけない、電車やバスは乗ってはいけない……そんな制限はかかるようになる。

ドイツが次々とヨーロッパに戦争をしかけたからだ。

 
そしてオランダはたった4日で降伏してしまう。
ユダヤ人狩りはオランダでも始まってしまう。

 
ある日、アンネの姉にナチスから呼び出し状が届いたのを機に(強制連行)
アンネ家族は隠れ家に移り住む。

 
アンネが隠れ家に住んだのは13~15歳で、その間は一切外に出ていないのだ。
アンネは13歳の誕生日プレゼントにもらった日記帳に、誕生日から隠れ家での生活の日々(ナチスに捕まる三日前まで)を綴る。

 
まず、アンネは高飛車で自分に素直で屁理屈で知ったかぶりな性格だ。引くことを知らない。謙遜もしない。
ボーイフレンドや友人たくさんいる自慢やら、先生ら大人への批判が激しい。

 
なかなか序盤は読むのが疲れる。

 
隠れ家ではアンネ一家が住み、少し遅れてフォン・ダーン一家が、更に遅れてデュッセル氏が加わり、8人での共同生活となる。
 
 
思春期真っ盛りのアンネは親批判や大人批判がひどい。というか、誰も褒めてなくない?ってくらい愚痴がひどい。
いやそりゃ生意気だって周りから責められるわな…ってくらいひどい。

 
ここあたりもなかなか読むのが疲れる。
思春期特有の反抗期というか、感受性の強さビシビシの日記だ。

 
ただ、隠れ家生活に協力してくれているオランダ人のミープらや今生きていることには感謝している。ユダヤ人狩りにあうよりは幸せだ、と何度も思っているし、今の生活の中で楽しさを見いだそうとしている明るさや強さは読み応えがある。

 
また、トイレの時間が制限されていたり、お風呂に入れなかったり、生理が始まってしまったり、自由に窓があけられなかったり、洋服が成長に合わせてツンツルテンになってしまったり、他家族との共同生活の大変さ、戦争中の隠れ家での暮らしの描写は素晴らしい。

 
しかし、読みすすめていくうちに変化が訪れる。

同居人のペーターと仲良くなることで恋愛日記率が上がったり、他者への批判よりも自分の内面を見つめ直したり、夢や希望や不安を書くようになっていく。
傲慢さが減ったというか、心の成長や変化を日記から感じることができる。

 
そして、隠れ家での生活の質がどんどん悪くなっていっているのを見ても、まだ1943年?まだ1944年?更に悪くなるのこれ…と、読み進めていると複雑な気持ちになる。
果たして私は隠れ家でこんな風に物資が少なくてお互いいがみ合っている(苛々や不満がすごい)中で、ポジティブさを失わずに日記を書けるだろうか。
出版を視野に入れてユーモラスさを入れたりもしていたらしいが(戦後にみんなの戦争体験記を募集しようと思う、とラジオで流れる)、なかなかアンネのようには振る舞えない。 コロナ禍でさえ、ここまで私はメンタルをやられているのだ。

 
中盤あたりからはだいぶ読みやすくなってきたと思う。

アンネの前を向いた日記を読めば読むほど、隠れ家に住んでいた人のうち父親以外亡くなったことや、最後の日記を書いた三日後に誰かの密告(近年、誰が密告したか話題になっていますね)で捕まってしまうことが脳裏によぎる。

 
死ぬことが分かっていて読むのは「100日後に死ぬワニ」を彷彿する。

  
私はアンネに似ている。
言わなくてもいい場面で気に入らない場合はストレートに大人に言ってしまう。そして失敗してしまう。

 
そして私も6歳の時に親から赤い日記帳(鍵付き)をもらって、私も日記を書く習慣がついた。

引っ越しを機に段ボールいっぱい分の日記は捨て、かつSNS発達から日記帳からブログにチェンジしたが、私も日記を書き出したのは親からのプレゼントが始まりなのだ。

 
自粛している時は強く思う。
アンネに比べたらマシだ、と。

 
家で家族と過ごせる。食べ物はあるし、洋服もある。散歩もできる。友人と連絡はとれる。陽射しを浴びて散歩ができる。

 
アンネは…当時のユダヤ人はみんなみんな、ユダヤ人というだけで600万人(ユダヤ人のうち、2/3)が虐殺されたのだ。
隠れ家でも常に怯えて暮らしたのだ。
 
 
制限がなんだ。不便がなんだ。
まだまだだ。まだまだ長期戦だ。日々の中に楽しみを探して、コロナウィルス収束を待つしかない。

 
アンネが頑張っていたように、私も立ち向かいたい。

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