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利用者と元利用者と会った休日

障害者のスポーツ大会で
うちの施設が出店することになった。

 
私は勤務日ではなかったが
同僚や利用者が販売をしているので様子を見に行った。

天気にも恵まれ
たくさんの人がそのイベントに来ていた。
お店もたくさん出店している。

 
うちの施設のブースを見つけた。
「なんで真咲さんがここに!?」販売をしていた利用者は驚いていた。

その日は新施設長も来ていて
私に「あちらでボッチャ体験をしているか、利用者Aさんと行ってきてみてはどうですか?」と言った。

 
おいおい
私は一応休みだぞ。

と、少し思ったが
利用者とボッチャ体験は楽しそうだ。

 
私はボッチャは初めて知った。
障害福祉の世界で働くようになり
利用者からボッチャの話を聞いた。

「ボッチャを知っていますか?」と係の人に言われ
だからそう伝えたら
「ボッチャは障害者だけでなく、健常者もやりますよ。」と言われた。

 
私が無知なだけかもしれないが
競技として
健常者でやっている人の話は私は聞いたことがなかった。

 
Aさんと対決をする。

Aさんは経験者で運動神経抜群、私は初めてだし、運動神経は鈍い。

 
ルールは、まず白のボールを投げ
その後交互に二人で色付きボール(赤、青)を複数投げ
白のボールの近くにボールを転がした方が勝ちと聞いた。

半分くらいボールを投げたところで
白のボールや相手のボールを狙って転がし
妨害してもいいと聞いた。
それを最初に言ってほしかった。

 
私はAさんに負けた。

販売ブースに戻ると
新施設長から、今度はダーツをAさんとやってみたらどうかと提案され、行う。

 
当たった本数に応じて参加賞のもらえる数が変わるらしく
私はまたしてもAさんに負けた。悔しい。

 
それを見ていたAさんの保護者から「真咲さん、ガチでしたね。」と言われた。

そりゃあそうだ。やるからにはガチだ。
ガチでやって負けるくらいなのだから。

 
その様子を見ていた利用者Bさんが私とストラックアウトをやりたがり
新施設長に言われ
今度はBさんと行った。

ストラックアウトは一個以外私は全部当たり
一番成績がよかった。

 
参加賞をもらって振り返ると
そこには前の職場の利用者Cさんと保護者がいた。

「Cさん!Cさん!」
 
「ともかさんだぁ!ともかさんだぁ!」

ハイタッチをする。
Cさんと再会するのは一年ぶりだった。  
去年、別イベントで販売ブースに来てくれた。

 
久々に話をした。

「今ね、〇〇さんと〇〇さんが休みなんだよ。コロナになっちゃったって。だから私も今、別施設を(併用)利用しているの。」

「Dちゃんがね、ともかさんに会いたがってるよ。“ともかさんは?ともかさんは?”、って毎日言ってるよ。」

Dちゃん…………。

私はDちゃんの顔が浮かんだ。
私も会いたくてたまらない、元担当利用者。

退職してから一度も会っていなかった。

 
 
バスの時間が近いから、と
あまり話せはしなかったけど
私は嬉しかった。

 
最後にCさんに言った。

「コロナが落ち着いたら、必ず前の職場にまた会いに行くから!」

「みんなによろしく伝えてね!私は元気だよ、って!」

私は二人の姿が見えなくなるまで見送った。

 
Cさんの家は
スポーツをやるのも見るのも好きだから
思えばスポーツ大会で再会したのは
意外性でもなんでもなかった。

 
「真咲さんの知り合い?」

「はい、前の職場の利用者と保護者です。」

同僚に聞かれ、答える。
前の職場の人は私を下の名前で、今の職場の人は私を名字で呼ぶ。

最初は慣れなかったけど
でも
今は馴染みつつある。

 
私は休みの日はなるべく外に出掛ける。

だって会う約束はできないし
前の職場には行けないから
偶然を願うしかないんだ。

 
偶然、前の職場の人達と再会するのを
私は毎日願っている。

退職してから 
もう二年以上経っているのに。

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