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扇風機と思いやり
その日は朝から利用者が不穏な様子で
リーダーは朝から個別対応だった。
攻撃的な言動が続いたようだから
どんなに神経をすり減らしたことだろう。
お昼も13:30頃だったし
ちゃっちゃと食べなきゃいけないし
食べた気はしなかっただろう。
その日の夕方
私は個室で一人作業をしていた。
送迎から戻ったリーダーが扇風機を抱えて歩いていた為
各部屋に出すのかと思っていた。
扇風機を用意する担当は他の方だが
去年も今年も
リーダーが朝早く、もしくは夕方に
一人で準備している。
扇風機だけでなく
季節に合わせた備品を用意してくれるのは
いつもリーダーだった。
一旦別室に道具を取りに行き
戻ると
扇風機が置かれていた。
「どうぞ、使ってください。首振りにしましたが、固定にしても自由なので。終わったら事務室に持ってきてもらえますか?」
私はビックリした。
扇風機は私の為だった。
思いがけない出来事に私はドキマギして
「ありがとうございます。」とか「いつもすみません。」とか
そんなことを言った。
その日は蒸し暑く
扇風機の風が心地よかった。
作業が終わり
扇風機を抱えて事務室に行くと
リーダーが一人で事務仕事をしていた。
「今日蒸し暑くないですか?暑いですよね。」
そう言ったので
私はリーダーの隣に扇風機を置いた。
…リーダーが事務室の扇風機を私の為に運び
リーダーは扇風機のない中仕事をしていたとその時知った。
今日一日疲れているだろうに。
暑がりなのに。
事務室は暑いのに。
私は扉を閉めてやっていたし
いくらでもスルーできたのに。
なんで?
どうして?
なんでそんなに優しいの?
なんで私に優しいの?
リーダーが私に譲った扇風機だと気づいた時
不覚にも泣きそうになった。
リーダーの奥さんや子どもが羨ましい。
こんな一同僚にもこんなに優しいなら
家庭はどんなにあたたかいだろうか。
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