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雨の日の買い物
その日は雨が降っていた。
毎週月曜日は利用者のお昼をみんなで歩いて買いに行く。
それは雨でも変わらない。
出発時は小雨だったが
段々雨足が強まっていった。
スーパーまでは徒歩30分。
次第にみんな無口になる。
私は利用者AさんとBさんと一緒に歩いた。
Aさんは歩くスピードが速く、Bさんはゆっくりだ。
Aさんは時々チラッと後ろを見てBさんを待つ。
そんな二人を見ていると微笑ましかった。
Aさんはお弁当を選ぶことに時間がかかる。
毎週月曜日の買い物は、金額や買う物に制限がある。
大体一食600円計算だし、菓子パン、飲み物、それにプリン等デザートを買ってはいけない。
更に、なるべくサラダ等野菜を買わなければいけない。
「もし天丼も食べたい場合はすぐに用意しますので言ってくださいね!」
店員さんが言ってくれた。
ありがたかった。
Bさんは選ぶことが早く、チャッチャと買い物をすませたが
Aさんはハンバーグ弁当か鮭弁当で悩んでいた。
かれこれ20分だ。
私がアドバイスをしても、うんうん悩んでいる。
そんな様子を先程の店員さんが見ていた。
「じゃあ、ハンバーグ弁当を買って、鮭単体で買ってみてはいかがでしょうか?」
「実は、予算が決まっていまして。一ヶ月で使えるお金に限りがあるので、それはできないんですよ。」
私はそう伝えた。
最終的にAさんが鮭弁当を選んだ時、その店員さんは「こちらのお弁当の方が鮭が大きくてお得ですよ。」と言ってくださった。
「ありがとうございます。」
Aさんが頭を下げる。
「またのお越しをお待ちしております。」
店員さんも頭を下げた。
あたたかい気持ちになった。
その店員さんが優しく声をかけてくれるのは
これが初めてではない。
今までも何回か
こうして声をかけてくれた。
障害者が団体で毎週決まった曜日に来るから
きっと私達を覚えていてくれて
こうして声をかけてくれるのだろう。
20分以上もお弁当売り場でうろうろしても
あたたかく見守ってくれてありがたい。
外は雨だし
肌寒いが
心はあたたかい。
帰り道
行きと同じように
雨の中30分歩く。
行きと同じように
Aさんは早く
Bさんは遅く
Aさんは時々後ろを見ては
Bさんを待っていた。
しばらく歩いた後
Aさんは言った。
「真咲さん!Bさん!犬の〇んこです!危険ですので近づかないように!」
思わず笑ってしまった。
雨の中の買い物は面倒くさいけど
雨の中、買い物に行かなかったら
こんなあたたかな気持ちもなかったな。
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