見出し画像

二回目のブルーベリー狩り

仕事でブルーベリー狩りに行った。
利用者と行くのは二回目だ。

 
去年転職し
去年行き
今年も行くことになったからだ。

 
私が転職する前は毎年いちご狩りをしていたが
私が転職した年にブルーベリーに切り替わったようだ。

 
我が家のブルーベリーや施設のブルーベリーはまだ紫色になっていなかったため
ブルーベリー狩りはできるのか半信半疑だった。

 
 
その日は最高気温37度で晴天だった。
朝から暑い。

みんなで暑さ対策をして出掛けた。

 
その日私は運転担当で
私の車はトップバッターだった。
私の車の後ろに他の車が続く。

一緒に乗っていた利用者や同僚と雑談をしながら運転していた。

 
ブルーベリー狩りは前の職場がある道を通って行く。

「…私、あそこで前に働いていたんですよ。」

私は遠い目をしながら
なんでもないことのように笑いながら話す。

 
あの頃毎日仕事していた場所を
12年も関わりがあった場所を
転職先で出会った人達と通り過ぎる。

 
心配だったブルーベリーだったが
おいしそうな食べ頃だった。

 
ブルーベリー狩りは楽しかった。

暑さの為
ブルーベリーはぬくかった。
日差しが痛く
汗がタラタラ垂れる。

甘酸っぱいブルーベリーも中にはあった。

片っ端から利用者と一緒にブルーベリーを取り、食べ
写真を撮った。

 
滞在時間は30分。

ブルーベリーをたくさん食べた。
去年よりも食べた。

暑かったけど
みんなと笑った。

 
楽しい時間だった。

 
お土産量にたくさんもらえたのもいい。
事務長が大粒のブルーベリーを山盛りにして次々にとっていて
みんなで笑ってしまった。

 
 
帰り道にも前の職場を通った。

もう戻れない。
どんなに求めても
私はもう別の場所に転職してしまったのだ。

近くても遠くて
想っても想っても届かない。

 
私は気にしない振りをして
前の職場を通り過ぎた。

帰ったらお昼の準備だ。
午後は作業をやらなきゃ。書類作りもやらなきゃ。
そんな風に自然と思う。

 
転職先では明日を、未来を夢見られる。

 
前の職場を思い出すと
いつも切なく、胸が痛い。

全力をかけても守れなかった、大好きな利用者。
適職だと思っていた仕事。

自分の力のなさを感じたり
自分が間違っているように感じたり
現実の冷たさを感じてしまう。

それが辛くて苦しくて
私は今の仕事や職場に目を向ける。

心の穴を埋めるように。

 
「おかえりなさい!楽しかった?」

ブルーベリー狩りに行かなかった利用者達が玄関で出迎える。 
残っていた同僚が暑い中ブルーベリー狩りをしたことを労ってくれた。

「ただいま。」

ここが今の私の居場所だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?