入院91日目:父の日次の日
今日はお母さんの三回目面談の日。
半休とっているため、普段より朝はゆっくりだ。
お母さん面談の前に腰痛の電気治療や牽引に行けそうだったので、朝一で病院に並ぶ。
電気治療は気持ちいいが、やはり牽引をした後ベッドから起き上がるのがなかなか痛い。
治療が終わり次第、お母さんの病院へ向かう。
時間的にはギリギリだった。病院にて父と合流。
面談室には、前回と同じように医師O先生・理学療法士Yさん・社会福祉士Kさん・看護師Yさんがいた。
私、父、母に各担当者から話がある。
【医師O先生】
・今がピーク。これ以上良くなることはない。以前は頑張った分どんどん良くなったが、今は厳しくなっており、その焦りは本人が一番感じている。
リハビリに前向きな反面、家族以上に本人は現状をまだ受け入れ切れていない。
・先日胸が痛くなったが、検査結果は問題なし。最近血圧が140~160で、血圧の薬を二回服薬に変更。
胸の痛みや高血圧はストレスから来ている。
・階段の上り下りはできない。今後もできないだろう。
・お母さんは両足に感覚麻痺がある。杖歩行は片足に感覚がある人に有効。そのため、補装具は必須である。
ご本人様は車輪付き歩行器でのリハビリ希望をしているし、今頑張っているが、ピークということを踏まえると、ピックアップのリハビリ中心に切り替える時期である。
退院後、一人で車輪付き歩行器では危うさがあるが、補装具をつけてピックアップなら一人で移動が可能だと思われる。
・できることを増やすのではなく、今の状態をいかにキープするかが今後の課題になる。
・予定では8月頭に退院だったが、リハビリに熱心であるため、退院をのばし、8月後半にする。
日にちは家族と本人が次回面談までに決めていい。
・身障手帳を申請しても、両足が動かないわけではないため、せいぜい3級だろう。
・次回面談時は管理栄養士が同席し、退院後の食事についてアドバイスを聞ける(任意)。
是非お願いします、と伝える。
・血圧を何回もはかることがストレスのようなので、今後は回数を減らす。
【理学療法士Yさん】
まず、リハビリ動画を見せてくれる。
車輪付き歩行器(ハッピーミニというらしい。初めて聞いた)では歩いているうちに足角度が内側になってしまう。手に力も入りすぎている。
後ろに支えがあってできている感じであり、後ろに支えがあっても足の運びの安定感がいまいち。
たくさん歩くごとに足の角度がどんどん悪くなる。
お母さんはハッピーミニを退院後に使いたいと希望をしているが(かわいいし、荷物が入ってよい、と)、医師・Yさん・私で「いやこの足の動きじゃ無理だよ。危ない。骨折しかねない。退院後のことを考えるとピックアップに慣れた方がいい。」と一致。
お父さんは「本人の気が済むように少しでもやらせてください。」と言い、お母さんも「少しだけでいいから。」と懇願。
病院側が了承する。
「おぼつかない足で車輪付き歩行器は骨折の危険性が増す。」と再度私から伝える。
仕事柄、麻痺足の方が骨折し、著しく下肢機能低下の事例は見てきたし、お母さんも例外ではない。
一方、ピックアップに関しては一ヵ月前よりも足の運びがスムーズであり、安定感が増していた。
今は人が付き添っているが、人がいなくても支障はなさそうなくらい回復していた。驚いた。
ひろみちおにいさんはじめ、脊髄梗塞の人はテレビなどで見た人はみんな両足が動かず、車椅子だ。
お母さんの入院当初の様子を見ていた時、もう二度と歩けないと思っていた。
ピックアップを使い、一人で歩けていてビックリした。
・現在、長居補装具を自力でつけたり、外したりすることが可能である(前はできなかったので驚いた)。
・そろそろ補装具を作りたい。補装具は今の本人の様子を見ていると、見積もりで大体15~20万。長いタイプ。日本義肢という会社。
メンテナンスは自宅にも来てくれる。
装具屋さんが週二回来るため、その時にオーダーする。オーダーして2~3週間でできあがるので、できあがったら、それでリハビリをする。
・今の状態を見ると、自宅で短い距離ならば補装具をつけないでピックアップで移動が可能であり、洗濯物を干したり、こんだり、料理ができるだろう。
長距離移動に関しては、補装具をつけてピックアップもしくは補装具をつけないで車椅子となる。
・来月、Yさんと作業療法士Kさん(以前挨拶をした。理学療法士だと思ったら作業療法士だった!)で家屋調査をしに我が家に来る。
お母さんは階段は上れないため、庭や一階のみチェックする。手すりの有無など。
家族がお母さんを迎えに来て、お母さん同席の元行う。
私、お父さんが立ち会う。
【看護師Yさん】
・今週金曜日に循環器の先生が様子を見てくれる予定。
・様子を見る限りでは、血圧は脊髄梗塞以前は120くらいだったと思われる。
【社会福祉士Kさん】
・要介護1では、介護ベッドや車椅子をレンタルできず、実費となる。
車椅子は実費で月1500円程度。
ただ、ベッドの手すりは介護保険でつけられる。
・ケアマネをそろそろ決めていきたい。
ケアマネは担当者人数が決まっているため、目当ての方がいるなら早くアポをとった方がいい。
(祖父母のケアマネ担当者がいる社会福祉法人に連絡)
質疑応答の時間に私はいくつか質問をしたが、「血圧悪化はストレスが原因なら薬増やせば落ち着くんじゃあ?本当にストレスが原因なら、血圧の薬を増やすのではなく、安定剤を処方なのでは?」という疑問のみ口をつぐんだ。
体に異常がなければメンタルを疑われるのはよくあることだし、お母さんは私がデパスを飲むのは反対派だった。精神薬はお母さんから断った可能性もある。
原因がなんであれ、血圧が下がればそれでいいのだ。
前回の面談といい、今回の面談も父の態度はひどかった。
理解力は乏しく、とんちんかんな質問や感想をしたり、なけなしの知識をひけらかしたり、自身の体験談を語るくらいならまだよかったが
社会福祉士のKさんに対して悪態をつきまくっていて嗜めるばかりだった。
娘として情けない。
きっと初回面談でお父さんはキーパーソンとして弱いから二回目面談から私を呼び出したに違いない。
お母さんにしても、前向きに頑張れば色々できると夢を見すぎている。
冷静な娘が面談には必要と病院側が判断したにちがいない。
私は面談後、Kさんにこっそりとひたすらに謝り
帰宅後はお父さんに「あの態度はひどい。」と激怒した。
私はひたすらに説明し、お父さんの理解力不足のせいで誤解なだけで、病院側はよくやっていると伝えた。
父「ちゃんと言わないと分からないよ。なんであの場で病院側は説明しなかった!?」
私「説明してたけど、お父さんが全然話聞かなかったじゃん!感情的になって話も聞かず、ろくに説明もしないで怒りをぶつけたり、いやみばっかり言って!お母さんが退院するまでお世話になるんだからやめてよ。みっともない。」
しばらく私の話を聞き、自分の非を理解したが、引くに引けないのだろう。
父「ともかは福祉職だから分かるだろうけど、お父さんは説明なきゃ分からない。」
私「だからずっと病院側が説明してたでしょうな。」
父「医者もピークだのなんだの言って冷たい。優しさがない。」
私「お父さんもお母さんも現実が見えてないから立場上言ってくれてるだけでしょ?お母さんにも骨折リスク説明したって動きまくっちゃうし、危ないことするじゃん。
麻痺足のお母さんが骨折したら本当、全てが台無しなんだよ!」
ハァ、とため息を吐く。
昨日父の日でお父さんに感謝したって
今日はこんな調子だ。
面談後、私は15分でお昼を食べ、仕事に向かった。
色々込み上げて、一人泣いた。
涙を拭って笑顔で職場に行くが
相変わらず利用者が朝から不穏で大惨事だった。
午後の私の業務にも支障があり、それに対する上の言動にムカついた。
早く帰りたいのに、(サービス)残業が終わらない。
帰宅後は慌てて夕飯を作り
お父さんは相変わらず先に寝てしまった。
「お母さんが退院したら、退院祝いをしなきゃな。」と姉からLINEがあった。
お母さんの退院前にやること、退院後にやること、お父さんの理解力不足、お母さんの今後についてで頭がパンクしそうだ。
お母さんが退院したら、退院日は美味しい料理を作りたいとは日々思うけど
退院祝いという単語が私からは浮かばなかった。
お母さんが今血圧が不安定だからというのもあるかもしれない。
お母さんは今日ポソッと「(救急車で運ばれた日に)あのまま逝けたら楽だったのに。」と漏らした。
リハビリに前向きで明るく振る舞っていても
ピンコロが目標だったお母さんにとって今は不服だろう。
お母さん逝くなら一緒に逝こう。
心の中で呟く。
リーダーがいなくなった日に私もいなくなればよかったし
お母さんが生きたくないなら、私ももう悔いはないよ。ただ、苦しまずに逝きたい。
………とは、口にできず
職場でもリーダー役割を頑張らなきゃいけないし
家庭では父や母を支えなきゃいけない。
頑張らなきゃいけない。
でも帰り道も一人泣けてきた。
なんで泣けるか分からない。意味も分からず泣いた。
強そうに見えるか。
しっかりしているように見えるか。
私は弱いよ。弱い。
いつまでもつか分からない。苦しい。
もう疲れたのは、私も同じなんだ。
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