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福祉の仕事と思い

「どうやったら福祉施設で働けるんですか?」

事務長と販売担当をしたある日
イベント出店していたら
見知らぬ人から尋ねられた。

 
「色々な福祉施設がハローワークに求人載せていますよ。」

と、私は伝えた。

 
「うちは今求人出していないんですけどね。直接施設に電話するのもありよ。求人出している場合もあるからね。」

と、事務長。

 
「施設情報は、Googleで地域名と“福祉施設”で条件検索にすれば出てきますよ。」

と、私は伝えた。

 
「資格は必要ですか?」と聞かれたので

「ヘルパー二級があればよりよいかもしれません。介護福祉士や社会福祉士があればより優遇されますよ。
無資格未経験でも、やる気があれば採用する施設もあります。」

そう言った私に
すかさず事務長は言った。

 
「でも無資格未経験者歓迎の施設は、わたし個人ではオススメできないわ。福祉業界は人手不足だから、資格や経験がなくても働けはするけど…。
面接前に一度は行ってみるといいわよ。」

 
「そうそう。見学させてもらったり、ボランティアさせてもらったりすると、施設の雰囲気も分かりますよ。見学やボランティアはした方がいいですね。」

私は付け足すように言った。

 
その人はお辞儀をして帰っていった。
ヘルパー二級も知らない方だったので
福祉業界はよく知らない方なのだろう。

 
事務長は言った。

「ほら、〇〇の施設も無資格未経験歓迎で、Aさん(利用者)に対してあんな扱いだったでしょ?
やっぱりね、資格や経験がある人をとるかとらないかは大きいわ。」

 
…私は思いを巡らせる。

前の職場は今の職場の何倍も大きいところだったけど
未経験者や無資格者ばかりだった。
万年人手不足で、そういった人に頼るしかなくて
職員によって仕事に対する意識や知識や経験に偏りがあった。

私は資格を持っていた方だったけど
優遇されなかった。

 
だけど今の職場は違う。

全員が福祉施設で10年以上働いているし
他の施設での現場経験がある。
全員が介護福祉士を持っているし
サビ管や社会福祉士、看護師、ケアマネジャーを持っている方もいて
手話もみんな上手だ。

 
私が採用されたのは
福祉経験が長く、資格を持っていたのもあるだろう。

なんせ事務長も面接官だった。

 
「大きい施設は段々行事が減るわ。活動も制限がかかる。施設が大きくなるということは、制限がかかるということでもあるわ。」
 
とも事務長は言った。

 
…前の職場は大きくなりすぎた。手広くやすぎた。
その結果、制限ばかり増えてしまった。

 
人事異動が嫌だった。
事業拡大が嫌だった。
作業や活動ができなくなっていったのが嫌だった。
外出やレクレーションができなくなっていたのが嫌だった。

 
だから私は今の場所に転職した。

 
人事異動や事業拡大がない、小さな施設に。
作業や活動に意欲的で
職員がベテランばかりで
小回りがきいて、みんなで協力し合えるような
そんな施設で私は働きたかった。

 
自分が目指すよりよい施設の考え方が間違っていないと
どこかで証明したかったのかもしれない。

 
前の職場では上手くいかなかったことを
新しくやり直したいのかもしれない。

 
私の職場はまだ設立してから何十年も経っていない。
苦労だらけだった、と周りには聞いている。

だけど私が入職する頃は
軌道にのっているように見えた。

 
「昔はよく、“福祉施設じゃなくて雑貨屋さんだね。”ってイヤミを言われたわ。」

と、事務長が言う。

 
当時はイベントで販売していても売り上げはいまいちだったらしい。
だけど。

 
その日のイベント場所での販売。
私の施設は何回も参加していたらしいが(私は初参加だったが)
今回の売り上げは過去一だったらしい。
例年の4倍以上だという。

 
障害福祉課の方からも「今、地域内で一番勢いがある施設。」だと何回も褒められる。

 
確かに聞く話によると
様々なイベントで販売した際
出店した福祉施設の中で
私の施設は売り上げが1位か2位らしい。

それは喜ばしいことだ。

 
私は転職先で頑張らないといけない。
幸せな人生を歩みたい。

そうしないと
前の職場の人に会わせる顔がない。

 
自分で選んで退職したのに
いつまでも引きずってばかりではいられない。

前の職場を、前の職場の人達を忘れないまま
大切に想いながらも
私は新しい世界でも上手くやっていくしかない。

 
頑張るよ。
頑張るから
この道の先でまた
どこかでみんなと再会できたらいいな。

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