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入院47日目:朝から泣く。夜も泣く。

GW二日目。
朝からいい天気だ。

父は朝早くから県外にウォーキングに出掛けた。

  
家事をやりながら、中島みゆきさんの「時代」を繰り返し聴いていた。 

いつか私も、リーダー退職と母の足の件が重なった今を笑って話せる日が来るだろうか。

 
家事が終わり、ベッドに横になりながらくつろぐこと10分、宅配便が来る。
私宛だった。

元職場の保護者からで、私の好きな緑色を主とした花のギフト(めちゃくちゃかわいい)と、紫陽花型立体カードだった。

 
手紙には私と母を気遣う内容が書かれていた。
その中で、“サザエさんのように元気で明るいお母様と聞いていたので、心がとても痛みます。”という一文に私は号泣した。

 
そうなのだ。
サザエさんのような母だった。
そんなお母さんが、もう50日近く入院していて、不自由で制限がかかる日々を送っている。

 
今の職場は、販売の仕事中何度か母が来て利用者や同僚に挨拶してくれていて直接知っている方もいる。だけど母をサザエさんのようだと知っている人は果たしているだろうか。

逆に前の職場の人は母に会ったことがある人は少ないけど、私はよく母の話をしていたから、印象に残っている人はむしろ今の職場の人より多いかもしれない。

優しくて、苦労が絶えない保護者だ。

きっとその優しさや言葉は、誰かに言われて嬉しかったか、誰かに言われたかった言葉なのではないかと思った。

 
退職してからも手紙や贈り物をマメにくれたり、会いに来てくれて、その気遣いや想いが嬉しい。
自分に自信は持てないことも多いけど、私の何かがその保護者に届いていてよくしてくれているのなら、私はもう少し自分を愛し、自信を持ってもいいのかもしれない。

 
 
午前中は公園に行ってきた。花まつりをやっていたからだ。
去年の夏にお母さんと行った公園だ。ペアルックで燈籠祭りを見に行った。

あの頃はお母さんがこんな風になるとは思わなかった。

おいしいものを食べても、きれいな花を見ても、100パーセント楽しい気持ちには浸れない。
浮かぶのは病院にいるお母さんだ。

退院したら、お母さんとまた来られるのだろうか。

 
公園に1時間ほどいた後は病院に向かった。

GWだが、病院には私のように差し入れや洗濯物を抱えた家族が何組も来ていてホッとした。
エレベーターに乗り、病室に向かう人と面識はないけれど、同志だと思った。

身内が入院している仲間だと思った。

 
お母さんはベッドに座っていた。

「ちょうどよかった。セロハンテープ拾って。落ちちゃった。」

そうだよなぁ…
お母さんはもう落ちたものをササッとは拾えないんだよな。

内心そう思った。
切なかった。

 
洗濯物や差し入れを棚にしまう。
お父さんは透明な袋にむき出しで着替えを入れるし、古いタオルを持たせるから嫌だと愚痴られる。

私も気づいた時には直しているが
お父さんは元々気が利くタイプではないから引き続き直した方が良さそうだ。

 
 
先日お母さんのスマホの熱がこもってしまった為、スマホの使い方をレクチャーする。
もう以前のように気軽にササッとは教えられない。面会の30分は貴重だ。

 
 
ベッドには相変わらずぬいぐるみが2体いた。
私が差し入れしたばぶちゃんはかわいがられているようなのでよかった。

 
リハビリで編みかご二つ目を作ったらしい。薬入れにしていた。

今度私の分も作ってくれるらしい。

お母さんに調子を尋ねると、昨日は左右の足の力がほぼ同じだったが、今日は右足は1/3の力しかなく、ショックだったらしい。日によって調子は違うようだ。

それでもだいぶ足はしっかりしてきたので、自転車のようなものでリハビリをしているらしい。

 
入院当初は胸の痛みを訴えていたが今はなく、ただ、リハビリがハードなのでやり過ぎると息が上がり、胸が苦しくなるそうだ。

 
 
「そろそろ面会終わりだね。トイレ行きがてら送っていくよ。」

1時間後にまたお母さんはリハビリの予定だ。

 
 
私は前々から気になっていることを聞いた。
尿意だ。

「お母さん、面会の時にトイレの訴えあること多いけど、トイレの回数はどう?」

 
お母さんの話だと、今までは一日5~6回トイレだったが、今は10回くらいトイレに行っているらしい。
夜中も2回行くそうだ(入院前は1回)。

 
「リハビリや入浴があるから、その前に行っているから回数増えているのはある。」とは言っていたが
それにしても多い。

今までは何時間もトイレに行かずに畑作業をしていたのに。

 
下半身麻痺の人は尿意が乏しかったり、急に尿意に襲われたりするが
今後リハビリを重ねてどうだろうか。

一人でトイレに行けるし、トイレの失敗はないのだから高望みしてはいけないが
それでも頻尿となると、外出や遠出はネックになるかもしれない。

 
私からしたら、右足の力がない日があることよりも、頻尿の方がショックだった。

 
 
益子の陶器市や公園に行ったことを伝えると、「案外出歩いているんだね。」とお母さんは言ったけど
その分睡眠時間や読書時間は減っている。
ライブにも行けていない。

そういうことはあえては言っていないから
私やお父さんも案外出歩いているように見えるだろう。

 
 
病院が終わった後はお母さんから頼まれたアンメルツヨコヨコを買いに行き、お風呂掃除用にサンポールを買った。

お風呂の扉の水垢がクエン酸等何を使っても落ちないが、サンポールがきくと書いてあった。

 
帰宅後早速サンポールを試すと、確かに今までの中で一番効果があった。
サンポール様々だ。すごい。

……と思いきや、乾くとやっぱり大して効果ないなぁ。うーむ。

 
 
夜、お母さんからLINEが届く。

「今日は来てくれてありがとう。面会30分はあっという間で、用件ばかり話しがちで、ともかの話を十分に聞いてあげられなくて残念。その分LINEしようね。」

要約するとそんな内容だった。

 
読んでいてウルッとした。

本当、お母さんとの面会はいつもあっという間だ。
あっという間に30分経ってしまう。早い。

毎日毎日あったことを1から10話していたことを思うと、お母さんには今あまり話せていないし
LINEのやりとりもそんなにはできないから
私が今どんな状況かは一緒に暮らすお父さんの方が詳しい。

 
利用者が不穏で怪我をしそうになったとか
人手不足で大変だとか
上からの理不尽な言い方にムカついたとか
そんなことをお母さんは知らない。
 
 
だけど面会は30分だから、一週間に一回くらいだからまだいいのかもしれない。
一緒にいる時間や話す時間が増えると、愚痴や弱音が増えてしまいそうだから。

お母さんだってリハビリでしんどかったり、色々大変なのに
私の悩みばかり話せない。
かといって、楽しかったことや嬉しかったことをたくさん話すのも引け目を感じてしまう。

お母さんは今、出歩けないし、制限がかかった生活なのだから。




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