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もものかんづめ/さくらももこ

もう10回くらい読んでいるかもしれない。

 
さくらももこさんの本は全て読んでおり、全て所有している。
以前は毎年のようにさくらももこを読みまくりたい病に犯され、犯されるたびに出版順に片っ端から読んでいた。

 
「ちびまる子ちゃん」「コジコジ」でもそうだが
元々さくらももこさんはエッセイをコミックスに収録していた(「100円貸してくれない?」おばさんの話はオススメ)。
それがまたセンスがよく、面白いのである。

 
そんな中で「もものかんづめ」は待望のエッセイ書籍化であり、私はみるみるうちにさくらももこさんにハマったのである。

 
「もものかんづめ」ではさくらももこさんの日常で体験したくだらなさをテンポよく文章化している。
たまたまさくらももこさんにばかりくだらないことが起きているわけではなく、着眼点が素晴らしく、また卓越した文章力により際立つ面白さに変化している。
この作品を読むと、さくらももこさんが決してほのぼの系メルヘン漫画家だけではないと分かる。

妙に冷めている。
そして独特の感性がある。
爆笑もあれば、ブラックユーモアもあり、ベストセラーではあるが賛否両論な笑いや表現も含まれている。

 
この作品は短編集だが、特に「メルヘン翁」と巻末の対談の賛否が分かれている。
身内の死の捉え方。
離婚のすすめ。
確かに、手放しで良作とは言えない。
ただ、「メルヘン翁」の章を読み、“家族とは仲良くしなきゃいけないわけじゃないんだ、そういうケースもあるんだ。”そんな風に読んでホッとしている人もいると思う。

 
そして、さくらももこさんが先生や母親に散々注意されても自分ルールの元、反省はしなかったことも
こんな価値観もありなんだと教えてくれる(絶賛できるものではないが)。
父ヒロシの、結婚式や離婚時の娘への接し方には思わず涙ぐんでしまう。

 
世の中は正しいもの、きれいなもの、優しいものが全てではない。

残酷さと厳しさもたくさんあって
だけど見方を変えればそれらはネタであり、笑いでもあり、愛しさが隠れている。

 
生きることはそんなに悪いことばかりじゃないんだよ。

そう教えてくれるような一冊でもある。

 
「物干し場の男」のくだり
作者の別れ話を止めた救世主の会話のくだり。
この二箇所は何度読んでも笑いが止まらず、電車で読むことに非常に苦労する。

 
水虫のお茶っ葉療法や合宿の話、スズムシ算の話、乙女のバカ心も大好きである。


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