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研修の日に感じたこと

一日オンライン研修の日。
その日は職員の休みが多かった。

 
私は利用者に朝の挨拶をする間もなく
研修準備に取りかかった。

「パソコンすぐに立ち上がらないから、もう準備に入っていいですよ。ここの仕事はやっておきますから。」

「部屋はブレーカー落ちない程度に暖房つけておきましたから。」

リーダーがそう言ってくれた。

 
私は気持ち早めにパソコンがある部屋へ向かった。

 
 
パソコンを立ち上げた。
立ち上げるまで
なかなかに時間がかかる。

Zoomのページを開き
私はIDとパスコードを入力しようとした。

ところが
エラーが起きた。

 
私は慌てて
もう一度入力した。

だが
やはりエラーだ。

何度押してもエラーだ。

 
どうしよう…どうしよう………

 
私は慌てて、リーダーを呼びに行った。

その時
職員は私とリーダーしか来ていなかった。

 
「申し訳ありません。Zoom見てもらっていいですか?」

リーダーは仕事を中断し
走ってそこに来てくれた。

もう時間がない。

 
今日の研修は終了証が出るもので
施設の誰かしらが受けなければいけないものだ。
焦りは強まる。

 
 
リーダーもIDとパスコードを入力する。

やはりエラーだ。 

何度やってもエラーだ。

 
リーダーから研修主催者に電話するように言われ
私は電話をした。

リーダーはその隣でずっと入力を続けている。

「他の方はエラーが起きていませんから…私達にはどうにもできません。」

電話をした相手から告げられた言葉は
悲しい言葉でしかなかった。

 
リーダーはスマホと別のパソコンから試みた。

そしたらブレーカーが落ちた。
電気の使いすぎだ。

 
リーダーが走る。
ブレーカーの元へ走る。

そして復旧させてから
再び私の元へ走ってきた。

 
「真咲さん、できましたよ。」

 
二人で悪戦苦闘すること30分
ようやくZoomのページが開いた。

やはりIDとパスコードは間違っていない。
二人で首を傾げる。

 
私が研修時間を間違って覚えていた為
研修にはギリギリ間に合った。

リーダーは汗をかき
息を切らせながら
自分の仕事を後回しにして
必死に助けてくれた。
文句も言わずに助けてくれた。

泣きそうになった。

 
「すみません、ありがとうございます。」

「よかったですね。間に合いましたね。」

 
リーダーは見届けてから
そこから立ち去った。

 
 
 
研修が始まると
利用者Aがやってきた。

Aさんは何も言わず
私の近くに座り
自由気ままに過ごしていた。

 
研修の時は部屋に一人だけだったし
朝から利用者と関わっていない為
Aさんがそばにいてくれて嬉しかった。

「Aさん、作業ですよ。」

職員が呼びに来る。
だが、Aさんは私のそばにいた。

 
そのうち、利用者Bさんもやってきた。

「まだ終わらないの?」

つまらなそうに私に伝える。

 
その研修は前職時代も受けたし
内容もあまり面白いものではなかった。
私は眠気との戦いだった。 

だから
Aさんがずっとそばにいてくれたり
Bさんが何度もやってきてくれて
正直嬉しかった。

一見研修の邪魔のように見えて
私は嬉しかったのだ。

 
AさんもBさんも、私が活動室や作業室にいないから会いに来てくれたのだろう。

 
 
昼食後
トイレに行ってから戻ると
同僚がいた。
元彼に似た同僚だ。

同僚はパソコンを調べてくれて
本来私がZoomをやる予定だったノーパソで
Zoomを開いてくれた。

 
午前中はノーパソで研修を行う予定だったが
結局できなかったので
デスクトップのパソコンで行っていたのだ。

午前と午後で
ZoomのIDもパスコードも異なる。

 
「これで午後はこちらのパソコンで研修受けられますよ。」

同僚はにこりと微笑んだ。

 
同僚も仕事を中断してパソコンを見てくれた。

私はいちいちジンワリして
涙が込み上げた。

 
 
 
午後の部が始まった。
相変わらず眠くなる。

施設長がチラッと見て
「眠くなりそうな内容ね。」と笑う。

おいおい…
私にこの研修を命じたのはあなただろうが…

と、心の中で呟いた。

 
 
研修の日は雪で
私はチラチラと窓を見た。

雪は降ったり止んだり
雨になったり
みぞれに変わったりしている。

 
 
私は本当は研修の日は一時間早退の予定だった。
ライブのチケットがとれたからだ。

だけど研修は一日通しのため
ライブがあるから困りますとも言えず
私は研修が終わり次第早退したいと伝えた。

「他の人が研修受けるようにもできますよ?」

「自宅でオンライン研修の方が用事にまにあいますか?」

と、配慮もしていただけたが
生憎職場からライブ会場の方が近い。

転職先を選んだ理由として
ライブ会場に仕事帰りに行きやすい場所を選んだのもある。

そして新人の私が
ライブを理由に研修辞退なんて
絶対にできない。

 
研修が終わったのは定時20分前で
予定通りに終わってよかった。

雪も心配だったが
雨で雪は溶け
特に心配はなさそうだった。

 
ライブには無事に間に合い
楽しむことができた。

 
 
研修の次の日
元彼に似た同僚が「用事には間に合いましたか?」と尋ね
「はい。」と答えた。

ライブ疲れも多少あったが
次の日は早速
研修報告書をパソコンで打った。

 
 






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