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路上ライブとサイン会

姉「今度、立川恵先生のサイン会やるらしいぞ!」

 
私「なにぃ!?立川恵先生だとぉ!!」

 
 
姉から立川恵先生のサイン会の話を聞いた。
私が小学生の頃である。
立川恵先生と言えば、当時なかよしで大人気だった漫画家である。
「怪盗セイント・テール」が代表作であり
アニメ化もしていた。
私も姉も立川恵先生の漫画は全て読み、アニメももちろんチェックしていた。
そんな大ファンの漫画家のサイン会である。

 
会場はうちの近くだった。
あの大先生が地元に来てくれるなんて…!と私と姉は興奮が止まらない。
手紙を読んでくれるだろうか!?と張り切って、姉と私、それぞれ初めてファンレターを書いた。
姉はファンレターの他にプレゼントも用意したようだ。
 
 
会場は近くといっては、車ではないと行けない。
私と姉は母親を説得し、サイン会に連れて行ってもらった。
人生初サイン会だ。
ワンピースを着て、お洒落な髪型をし
どんなことを伝えよう…とにかく「応援しています!大好きです!」と伝えようと
ドキドキドキドキしていた。
会場のフロアは人でごった返していて、人混みをかき分けて前へ進むと
無情にも係の人から

 
人数制限に達した為、サイン会受付終了です

 
と告げられた。
なんということだろう。
サイン会の30分前に着いたというのに
私も姉も落胆は凄まじかった。
もちろん、手紙やプレゼントは渡せなかった。

 
なんせ初めてのサイン会だ。
勝手がまるで分からなかった。
人数制限があることを私達は知らなかった。
サイン会がここまで凄まじいものだと思わなかった。

会場で見られたのは「立川恵先生サイン会」の看板だけだ。
憧れの先生の目と鼻の先まで来て、一目会うことさえ叶わなかった。

 
それが私の、初めてのサイン会であった。
 
 
 
 
 


それから時は流れた。

サインをもらえなかったサイン会から、約20年後のことである。

 
私は大人になり、奥華子さん(以下、華ちゃん)というシンガーソングライターに出会い、ファンになった。

ファンになってからコンサートツアーには必ず行き、アルバムは欠かさず買っていた。
全曲ライブという、二日間四公演に分けた濃厚長時間ライブにも行き
ダークナイトという、失恋ソングや暗い曲オンリーライブにも行っていた。
「プロポーズ」という楽曲のPVでは、幸せをテーマとした写真をファンから集い、使用したのだが
私の写真は見事に選ばれた。
サインとメッセージ入りのPVが届き、自分の写真が起用されたことは本当に今でも嬉しい。

 
なお、写真募集の際に、華ちゃんの楽曲を歌うコンテストも開催され、私も応募したが
歌の方は落選した。

 
 
華ちゃんは路上ライブを地道に行い、プロとしてスカウトされた経緯があり
原点だからと
プロになってからも路上ライブを定期的に行っていた。

コンサートツアーや全曲ライブ、ダークナイトライブにまで行くガチファンでありながら
路上ライブはまだ行ったことがなかった。
ファン歴は8年と長かったが
原点の路上ライブは見ていない。
やはりファンとしては一度は見てみたい。
 
 
 
そんな中、ニューアルバム「KASUMISOU」発売&コンサートツアーが発表された。
それに伴い、埼玉県草加市で路上ライブ兼サイン会を行うということだった。
私はチャンスだと思った。
その日はたまたま用事が入っていなかった。

  
友達のバイト先だった草加。草加せんべいの草加。
さぁその草加に行ってみようじゃないの!

 
 
 
私は張り切って電車に乗って出掛けた。
華ちゃんTシャツを着て、バッグには華ちゃん×チロキーホルダーをつけた。

 
その路上ライブ&サイン会が行われたのは3月後半だったが
その日は冬に舞い戻ったような寒さで
私はダウンジャケットを着ていた。



13:30から路上ライブ開始なので、12:30前には草加駅に着いた。
路上ライブ会場は駅前である。
遙か昔のサイン会の失敗はしない。
写真を見ると、華ちゃん路上ライブはいつも凄まじい人だかりだし
一時間以上前には会場に到着するべきだと私は思ったのだ。


会場にはすでに軽く50人以上集まっていた。すごい。さすが奥華子無料ライブである。
ステージはイトーヨーカドー前で少し段差があるが
観客席側は段差がなく
最前列をとらないと華ちゃんが見えなさそうである。


しかし寒い…
予報以上に、明らかに気温は低かった。
風が強く、明らかに私は防寒が足りない。
あまりの風の強さに機材がぐらつき、チラシ類が飛ばされたり、飛ばされそうになっている。
早めに立って待つ分には構わないが、この寒さに耐えられるだろうか。
私は寒がりの冷え性だ。
ましてステージや観客席は完全に日蔭であった。
とりあえずライブ場所を確認できたので
イトーヨーカドーでトイレを済ませてから戻ると
華ちゃんが建物から出てきた。

奥華子が!
奥華子がぁぁぁ!!

 
どうやらリハーサルのようだ。
早く着いた私は本当に偉いと自画自賛だ。
人は先ほどより更に集まっていたが
私はサイン券入りの初回限定盤をゲットした後
なんと上手側最前列のスペースに入ることができた!非常にラッキーである。

ステージ見えやすい~♡♡

 
スタッフや警備の方、新星堂のスタッフ合わせて20名以上が
ステージや会場に散らばるように配置されていた。
「写真撮影禁止」と書かれたラミネートを掲げるスタッフも何名もいた。
人は後ろにどんどん集まる。

 
お昼はまだ食べていなかった。
寒い。 
食べ物や飲み物を買いに行きたい。座りたい。
だが、ここまで来た以上
もうどこにも行けない。
せっかく近くに華ちゃんがいるし!珍しいリハーサル風景見られるし!!

えぇい!ままよ!!

の気分だ。
リハーサルまで楽しめるならラッキーハッピーじゃないか!!
寒さに負けないよ、私!!!

 
 
  
華ちゃんはグレーのベレー帽に、紺色のジャケット、赤いダボッとしたズボンをはいていた。

あぁ、奥華子だ…
去年ライブ(コンサートツアー)なかったから、久しぶりだわ…!
変わらずに元気そうだ(>_<)

 
華ちゃんを見るだけで私はニヤニヤが止まらない。

彼女は「ガーネット」など5曲くらいAメロやサビを歌い
音量などを事細かに何度もスタッフに指示していた。
コンサートとこういうところは変わらない。

 
なんて美しい声だろう…


リハーサルとはいえ、まさかの13:00前から15分以上生弾き語りをしてくれるとは。
リハーサルで既に私は泣いてしまう。
「奥華子、リハーサル中です。13:30から路上ライブやります。」等と告知も聞けた。嬉しい。
草加市イベント用の歌を作ったことにも触れ
ちょうどその時にステージ上のモニターで
そのアニメが流れ

「そうそう、これ!たまに流れるから見てね。でもライブ中は(モニター下に奥華子がいるから)見られないんだよね(笑)」

と華ちゃん。
何人かのファンはモニターに気づいたようだったけど
私は気づけなかった。
その後もタイミング悪く、写真撮影は間に合わなかった。
せっかく草加まで来たのだし、モニターを写真撮影したかった。


リハーサル最後は「お部屋探しマスト」のCMソングでしめてくれた。
手拍子が自然と起きる。
華ちゃんは笑顔だった。私の好きな笑顔だと思った。

 
 

 
それから10分くらい待つと、司会者の方が今日のイベント内容や撮影不可なこと等注意事項を伝えた。
なお、子連れ家族さんや車椅子の方にもきちんと配慮されていて、好感度が高い。

 
路上ライブ前には、まさかの草加市市長からのお話があった。
どうやら今日はニューアルバム発売記念イベントだけでなく、草加市制60周年イベントも兼ねており
更に奥華子がその草加市制60周年を記念して作られたアニメーションの主題歌を作ったこともあり
今回のライブ開催になったようだ。

 
司会の方も市長の方もさすが話が上手で
市長さんが「奥華子さんにステキな歌を作っていただけでなく、ご多忙な中、今日草加市に来ていただき」と笑顔で言っていただけて
胸がいっぱいになった。
華ちゃんは後ろで「恐縮です。」というような顔でいえいえいえ、と軽く首を振っていた。


 

時間より3分早いが、あまりの寒さに司会の方がライブスタートを告げ

拍手の中、奥華子登場(パチパチ)

だが、「ライブは13:30からだから、もしかしたらピッタリ来る人もいるかもしれないし、時間までやりません(笑)」と華ちゃんは笑顔で伝える。
代わりに即興で草加への思いを歌っていいかみんなに聞き
みんなで拍手して「OK」の意思を伝える。
なお、司会者の方も華ちゃんも、路上ライブだけど許可もらってるから声も出していいと説明をしてくれた。

 
 
華ちゃんはササっとキーボードを弾き
去年の夏に草加に訪れてあちこち歩いて曲を作ったという旨の歌を歌った。 
即興の割に1~2番まである長い歌で
サビが「草加~草加~」「そうか~そうなんだ~」なのでちょっと笑いが起きる。音で聞くと、「草加」か「そうか」か紛らわしいのである。 
それでもしっかり曲はまとまっており、最後は大きな拍手だ。 
ライブ時にみんなから意見を聴いて即興で作る力がずば抜けている華ちゃん。
音源化されない、その日その場だけの即興ソングは、奥華子ライブのおすすめの一つだ。




ちょうど草加の歌を歌ったら13:30ピッタリで(エクセレント!)
改めてライブ開始である!


1曲目はアルバムタイトルにもなっている【カスミソウ】
なんでアルバムタイトルが「KASUMISOU」かというと
「今回はタイアップ曲やセルフカバー曲が多く、誰かのためだったり、お題を出されたからこそ作れた曲が多いから。奥華子だけだと作れない曲がたくさん入っているから。」と華ちゃん。
「私が(自分の好きなように)作るとみんな同じ曲っぽいでしょ?違う曲なんだよ(笑)」と自虐も入り、あははとみんなで笑ってしまう。
華ちゃんは相変わらずよく笑い、よくしゃべる。


私はネット注文していた上に(届くのが遅い)
用事や仕事やなんやかんやでまだニューアルバムを聴いておらず
【カスミソウ】は初めて聴いた。
なるほど、華ちゃんっぽい曲で早くも泣けてくる。しっとりとしたいい曲だ。

 
ちなみに私はかすみ草が好きだ。名脇役なところ、きれいでどんな花とも相性抜群なのに主役になれないところが。
だいたい私は報われない設定に弱いし、共感するのだ。
「おしゃべりな時間割」という漫画でかすみ草だけの花束を好きな人からもらうシーンが出てくるが
私もいつかもらいたいという夢(笑)

 
 
2曲目は絶対歌うと確信していた【ガーネット】
「3月20日販売のアルバム収録曲から歌うね、ってさっき言っていながら、2曲目はアルバム収録されていない曲で(笑)、奥華子の(曲の)中では有名な曲です。」と前ふり(笑)

「奥華子って誰?」と聞かれたら「映画“時をかける少女”の主題歌歌ってる人」もしくは「お部屋探しマストのCMの声の人」と答える私です。

ちなみに友人からリクエストされたことありますが
私は歌えません(笑)
私がよく歌う奥華子は「初恋」「夕立ち」なんです。



【お部屋探しマストの曲】
「次は小さい子でも知っている曲歌うね。」と華ちゃん。それだけでマストだと分かった(笑)
サービスじゃなくて、リハーサルラストは本当にリハーサルだったのか(爆)
やっぱり生マスト弾き語りは何回聴いてもいいよね♪
「どうも、マスト華子でしたー!」………マスト華子(笑)



【心が帰る場所】
笑わせて和やかな雰囲気になったところで、草加市記念イベントソングを披露。
草加には来たことがあるが
曲を依頼されて、去年の夏の暑い日に来たらしい。
あちこち歩きながらメモして
松並木を歩いて、これは歌詞に入れたいと思ったらしい。
「草加市の人-?」と尋ねると
手を挙げた人は私から見える範囲で10~20人くらい?(私は最前にいたのでハッキリとは分からないが、軽く300人以上はいたんじゃないかな、路上ライブ見ている人)

「少なっ!」と華ちゃん(笑)
多分みんなも私も同じように思ったであろう。
まぁ私も他県から来ていたし
私の後ろにいた人は新潟や山形から来たみたいだしなぁ…(会話聞こえた)。


作詞作曲だけでなく、ドラム等の打ち込みやアレンジも華ちゃんが行ったらしく、お気に入りの曲だとMCで話すが
みんなからリアクション少なく
「あれっ?」と華ちゃん。
慌ててみんなで拍手(笑)


草加市民の人がみんなアルバム買ったら売り上げすごいとか(※初回限定盤にしか収録されていません) 
いつか草加市の学校でみんなで歌われたらいいなと
思いを馳せる華ちゃん。

「草加市のみなさーん!奥華子でーす!!アルバム売ってまーす!!!」と曲の合間合間に言う華ちゃん。
ポニーキャニオンか新星堂さんからの指示で、毎曲終わるごとにアピールするように、とのこと。
「曲やるごとに言うから何回も繰り返しちゃうけど、駅から出てきて初めて聞く人もいるから…ごめんね(笑)」と華ちゃん。
ちなみに上から指示が出る前に新星堂さんは初回限定盤と通常版を手に持ち
一所懸命掲げてました。

「せっかく草加に来たんだし、松並木や歌詞に出てくるところに行ってみてね!」「でもここにいる全員でぞろぞろ行くとおかしいよね(笑)」と華ちゃん。
ちょうどその話をしている時にイトーヨーカドーモニターに松並木が映し出されました。ほう、これはなかなか。
今日がこんなに寒くなければ行ったかもしれないが、いかんせん、寒い…
Twitter見ると行ったファンの方々もいたみたいですね。


ちなみにこちらの曲は「草加~草加~」と繰り返しはありません(笑)
生での披露は初めてだったというこの曲。
草加駅前で草加市の歌を初披露ってすごく胸が震える。
草加市民の方々に是非聞いてもらいたかった。

これからも聞いてもらいたい。



【素顔】
アルバム収録曲で1番最後に出来上がった曲で、しかも珍しく歌詞からできた曲らしい(いつもは同時進行)。
個人的に1番今日のセトリでグッときて泣けました。
これぞ奥華子よ!
「私はネガティブな人間だから」華ちゃんは今日もそんなことを言っていたが
華ちゃんはだからこそ弱い心にそっと寄り添ってくれるような歌を歌える人なんだと思う。
MCでもそうだけど、人を傷つけるような表現は決してしないもの。



最後はアルバム1曲目収録の【鞄の中のやきもち】
こうしてライブで聴いていると早くアルバムを聴きたくてたまらなくなりますなぁ!!


とても寒い中だったけど
華ちゃんは最後まで笑顔で弾き語りを続けた。
14:10に惜しみない拍手の中
華ちゃんはお辞儀をして手を振って去って行った。

【セットリスト】
・カスミソウ
・ガーネット
・お部屋探しマストの曲
・心が帰る場所
・素顔
・鞄の中のやきもち

 

 
 

さて、ここからが戦いである。

CD購入列とサイン会列、帰る人がぐじゃぐじゃになり
係の方の整列が間に合わず

私は早めに移動したものの(私がライブ見ていたすぐ横がサイン会待機列だとのちに判明)
真ん中くらいに並ぶことになった。

私の位置でサインまで(スタッフの方の話だと)1時間かかるとのことで
一旦抜けても構わないという話だが
ほとんどの人が並びっぱなしの道を選んだ。
サイン券にはナンバーが振っていないこと、サイン会列場所告知をしていなかったこと、CD販売場所とサイン会列を隣同士にしたことが敗因だと思われる。



サイン会では一人45秒話せるし、宛名も書いてくれるという。
私はガタガタ震えながら
CDケースから歌詞カードとサイン会参加券を取り出したり
スマホをいじったり
宛名の用紙に宛名を書いたり
メッセージカードに華ちゃんへの熱い思いを書いて時間を潰した。 
なお、メッセージカードはボードにスタッフさんがどんどん貼り付けていたが
なんせ撮影禁止なので
作業途中で撮っちゃあかんよなぁ…と撮影断念。
のちにTwitterで、完成形を見た。
風でとにかくぴゅうぴゅう飛ばされる。
柱にはスタッフさんがポスターを貼っていた。


私は半分くらい並んだところで左手と下半身がやられ
痺れて上手く動かなくなってしまった。
私はグーパーを繰り返したり、ポケットに手を入れ
ライブ前後に流れていた(る)華ちゃんニューアルバムの曲に意識を集中させる。

ライブ中、華ちゃんが「薄着じゃない?寒くない?」と最前列の女性に話しかけ
「春だと思ったから(薄着)」と答えていたように
私だけでなく
というか私より薄着の女性はたくさんいた。
日蔭で風が強い場所でライブ&サイン会列に並ぶ…きっとみんな、試練だった。
ちなみに華ちゃんは「ここは冬です!でも春は来るよ!」と回答(笑)
華ちゃんが言うなら春は来るのだろう。




いよいよ、私の番になった。
私はダウンのチャックを外し、全曲ライブTシャツやキーホルダーを見せ(私の周りは缶バッチ率高かったかな。)
プロポーズPVにかつて採用されたことを伝えたり
那須野が原のコンサートチケットがとれたので楽しみにしていますと伝え
路上ライブよかったと伝え
とにかく言葉や思いが溢れて止まらない。


華ちゃんはコンサートツアーでライブ後に会場全員とハイタッチをすることが恒例なので
私は華ちゃんとハイタッチは何回もしたことがあった。
ハイタッチの際に、一言だけやり取りができるので、そういったやり取りは何回もしたことがあった。

 
だけど
憧れの華ちゃんから宛名付きでサインをもらえるとか
目の前でしっかり話せるとか

感無量で

1時間並んだかいがあったと思った。
なお、Twitter情報によると2時間経ってもまだサイン会は終了していなかったようだ。


寒かったけど…
でも念願の華ちゃん路上ライブに行けて
初めてまともに話せて
サインもらえて
今日行って本当に本当によかった(*´▽`*)♡



 

私は帰りに暖房きいた場所でショッピングしても電車に乗っても寒気が一向に止まらず

虐待で幼子を、いじめで誰かを水風呂入れるとか水シャワーとかアホじゃないか!アホアホ!!

と、虐待問題について考え出してムキー!となった。


華ちゃんは私たちファンを風邪ひかないか気遣っていたけど
誰よりも長く寒い場所にいたのは華ちゃんやスタッフさんで…
笑顔で明るく、素敵な歌を届けてくれた華ちゃんと
スタッフの皆さんに
感謝の気持ちでいっぱいになった。

 
 
 
路上ライブの三ヶ月後、私は那須野が原ミュージックホールで華ちゃんのライブに行った。
座席は前から二列目センターと、今まで行ったライブの中で一番最高の、特等席であった。  

 
初めて映画サントラを担当したりと
2019年は華ちゃんイヤーで
私は華ちゃんが応援できて幸せを噛みしめていた。

 
 
だが、華ちゃんはベストアルバムを発売し、2019年末に過去のライブグッズを福袋として売りさばき
長年担当したレギュラーラジオは終わりを告げた。
そして、2020年3月いっぱいでファンクラブを休止した。

 
事実上の、活動休止だった。

 
そういった動きがあった際、年末に路上ライブに行こうとしても仕事が重なり
もはや手遅れで
結局私は、春の路上ライブと6月のコンサートツアーのライブで
華ちゃんとお別れになってしまった。

 
コンサートツアーのライブの際、私は用事があった為、ハイタッチはしないで会場を後にした。 
だから言葉を交わしたのは、路上ライブ&サイン会が最後になった。

 
 
正式には発表されていないが、2020年3月末で華ちゃんが活動休止になりそうだとファンの間で噂され出したあの頃
まさか私は自分も同じタイミングで旅立つとは思わなかった。

 
華ちゃんは定期的にコンサートツアーを行っていたし
まさかこんな日が来るとは思っていなかった。
華ちゃんは何を見て、何を感じて、こうした道を選んだのだろう。


 
予期せぬ退職で未来が見えなくなって不安で仕方ない時
私を支えてくれたのは華ちゃんだった。
華ちゃんと一緒だと思うと
私は心強かった。

 
「笑って笑って」
「帰っておいで」

この2曲は特に特別だ。
仕事で辛い時、通勤中の私や帰り道の私に泣き場所を与えてくれた。
心に寄り添ってくれたのは、華ちゃんの音楽だった。
仕事中笑って、無理して
だけど車に乗って、華ちゃんの歌を聴き
何度ワァワァ泣いたか分からない。

 
 
 
2020年3月31日。

私は長年勤めた職場を退職した。
華ちゃんも、そしてまさかの、SMAPの中居正広君もだ。

一人じゃない。
そう背中を押された。

 
 
 
 
 
有給休暇を消化した後、テレビからは豆乳のCMが流れた。
聞き覚えのある優しいメロディと歌声は華ちゃんだった。

華ちゃんの歌だ……!

 
全然泣ける歌詞でもなんでもないのに、まさか春に華ちゃんの歌が聞けるとは思わなくて、私は思わず泣いてしまった。
華ちゃんは4月以降、時折Twitterで呟いた。
どんな内容であれ、そのたびに嬉しくなり、何故か泣きそうになった。

  
豆乳をグビッと飲みながら、私は転職活動をしている。
当時、仕事カバンにつけていた華ちゃんキーホルダーを、今度は別のバッグにつけかえ
私は今日も新しい一歩を踏み出す。

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