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同イベントへの出店も3回目

私は障害者施設で働いている。

毎年この時期に行われるある販売イベントは年間でも1位、2位の売上に繋がるので力を入れていた。

 
ディスプレイを一新したり、新製品を何種類も作ったり。
他の福祉施設もたくさん出店するので負けられない。

 
私は販売担当だからか、たまたまか
毎年このイベントに出勤していた。

転職三年目だから、今年で三回目となる。

新しいイベントは勝手がよく分からないが
このイベントは安心して出店できる。

 
梅雨に入ったものの、その販売日は朝から陽射しがあり、予報では雨が降らないらしい。
一日曇りで最高気温25度予報のはずが、朝から思いがけず天気に恵まれ、慌ててクーラーボックスを用意する。
販売担当利用者のお弁当と共に私のお弁当を入れる。

 
いつものように車を停め、いつものように販売準備をしようと荷物を運んだ。

当日朝にディスプレイももう一度見直し、ざっくり図も書いてきた。これで用意万端だ。

 
そう意気込んで出店場所に行ったら
まさかの生ゴミが散乱していて絶句した。

他の施設は涼しい顔で出店準備をしたり、もう設営を終えていた。

 
困ったことになった。
テントを張りたいが、その生ゴミが邪魔だ。
ディスプレイもしたいが、やはりその生ゴミが邪魔だ。

 
係の人に話したいが、一向に姿を見せない。連絡は繋がらない。
共に出勤だった新施設長は車を遠くの駐車場に置きに行ってしまい、何も動くことができなかった。

このままでは時間になっても出店できない。

出鼻を挫かれるとはこのことだ。

 
とりあえず軽くできることをしておき、利用者と待つしかなかった間に
新施設長はホウキとちりとりを買ってきた。神だ。

こうして新施設長は朝から生ゴミを掃除するという仕事が派生した。申し訳ない。

 
生ゴミを処理した後は急ピッチで出店準備をした。
他施設に遅れをとった。
周りはもう人が溢れかえっている。早く出店準備をしなければ。

 
朝から冷や汗や忙しない汗をかき、なんとか出店準備を終え、私達の施設も販売開始となった。

販売開始直前に係の人がようやく来た。遅い、遅いよ早く来てほしかったよ。

 
前回の反省を活かしたディスプレイは功を奏し
今イチオシの製品は飛ぶように売れた。

 
毎回販売時に売れている製品も同様だ。

普段売れない製品も売れていたし、新製品も次々に売れていった。

 
保護者や利用者が遊びに来てくれたり、私の両親も来てくれたり
特別支援学校の先生や他施設の元施設長(とてもお世話になった)、市の元販売担当職員(こちらもとてもお世話に、)も来てくれたりした。

 
他施設の方が名刺を持って挨拶に来てくれて
新施設長がその時間帯不在だったので私が名刺を忘れて挨拶をしたりもした。

名刺を作ってから初めて名刺交換ができた。

 
他施設の出店者も挨拶に来たり、買いに来てくれて
普段できない交流ができたのもよかった。

偶然、スピッツファンの方がいて話が盛り上がり、お買い上げいただいたのも嬉しかった。

 
イベントは盛り上がり、人は全く途切れず
終始忙しいまま販売は修理した。

 
「お姉さん、セールス上手いわね。」と言ってくれた方や
近くでお店を開いている方が声をかけてくれたことなんかも
私には大きな励みになった。

 
売上は一昨年と同じくらい。
人は例年よりたくさん来ていたから期待していたが
今年はイベントの規模が大きく、一般のお店の出店もたくさんあったことから売上はどの施設も思ったほどではなかったようだ。

去年の方が売上は更に高かったので
金額としてはよかったが、私は悔しさがあった。

 
暑い中での販売。
立ちっぱなしでの販売。

毎回のことだが達成感と共に疲れが半端ない。

  
それでも利用者を無事自宅に送ったり、保護者が迎えに来た後は安堵感があった。

 
さて、あとは残りの時間で書類仕事をやろう。

そう思ってパソコンを開いた私に新施設長から話しかけた。

 
仕事のこと。
プライベートのこと。

新施設長とは普段は仕事の話くらいしかしない。
だけどこうして二人きりになると普段話せないような話を色々とするし、聞き合う。

他の人に聞かれていない方が安心して話せるタイプなのかもしれない。

 
普段は新施設長として立場上まとめる立場でも
こうして二人きりで話す時は役職は関係なく、対等な人として話しかけてくれる気がした。

 
トップは孤独だ。
みんなには話せないことも多々あるだろう。

いつもは聞き役が多い新施設長がよく話した。
色々と疲れているのかもしれない。

 
気がつけば話し出して一時間が経っていた。
新施設長はまだ話したりなさそうだったが
私はさり気なく職場を後にした。

 
その日は家族で外食の予定だった。約束の時間には間に合いそうもなかった。
慌てて家族に電話した。

 
私は思いのほか疲れていてろくに食べられなかったが
その日は母の日兼父の日兼快気祝いで私が奢る日だったので
両親が美味しく食べていたのでよかった。

 
販売の日はいつもドラマや出会いがある。

次の販売は夏になるだろう。
暑すぎなければいいな。

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