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行ったコンサート、行けなかったピアノ発表会

私の職場の利用者は
何人かが障害者の音楽教室に通っている。

楽器を演奏したりするらしい。

 
その音楽教室が創立周年記念で大々的にコンサートをすることになった。
コロナ禍により、ずっとできなかったらしい。

利用者からは練習に励んでいると話を聞いていた。

 
コンサートのお知らせをもらった時
その日は施設営業日だから希望者で見に行かないかという話になり
素敵な提案だと私は思った。

 
ほとんどの利用者が行きたいと希望し
それにより、その日出勤のほとんどの職員も行くことになった。

 
そのコンサートの場所は私が知っているが、まだ行ったことがない大学だった。
私はそこの附属の高校に通っていた(その大学には進学していない)。

まさか高校を卒業して約20年の時を経て
こんな形で大学に行くとは思っていなかった。

 
リーダーと何人かの利用者で車に乗り、そこに向かう。リーダーと一緒なのが私は嬉しい。
会話が弾む。

 
今日のコンサートは数百人入るホールで行う。
炎天下の中、交通整理をしていた方がいたのでそれに従う。よく見たら保護者だった。
なるほど、今日のコンサートは利用者の家族も協力しているのだろうと分かった。

受付の方もきっと関係者だろう。
司会進行の人も保護者だった。

 
ホール内は障害者やその家族、職員でごったがえしていた。
施設のみんなと近くに座る。

利用者に色々な方が話しかけてきた。
なんて世間は狭いのだろうか。同窓会のようだ。

 
その日仕事が休みだった同僚二人と前施設長もプライベートで来ていた。
休みの日でもこうして職場の外出イベントに来てしまうのは福祉職員あるあるかもしれない。

 
やがて時間になり、コンサートが始まった。

まず、障害者による音楽教室のメンバーが数曲演奏し
その後はゲストによるマジックショーだ。

 
最初に登場したマジックショーの方は声が加藤茶に似ていた。

マジックショーはいくつかネタが見えていて思わず笑ってしまったが 
二番手でマジックを披露した人は次々に鳩を出し、会場を沸かせた。
一羽鳩が客席に飛ぶハプニングはあったが
二番手の方はとても上手だった。

なお、私は手品に詳しくないのですごーいと連発していたが
リーダーは手品ができる人なのでタネが分かっていたようだった。

 
手品ショーの後はゲストの方によるジャズの演奏が披露された。
利用者はジャズが退屈じゃないか心配だったが
知っている曲をたくさんやってくれたお陰で思いのほか盛り上がった。

その日は席を立って歌い踊るのが自由なので利用者と踊ったりしていたら
後ろからリーダーに動画を撮られていてヒェッとなった(リーダーは某利用者と離れた席に座っていた)。

動画はコンサートが終わった後に送られてきたのだ。恥ずかしい。

 
最後に再び音楽教室のみんなで数曲演奏し
コンサートは終了した。

 
二時間を超える長時間だったが
利用者の離席はなく、大きな問題もなく、無事に終わってよかった。

帰り道にリーダーとあれこれ感想を話せたのも嬉しかった。

 
前の職場で担当利用者がピアノを習っていた。
毎年ピアノの発表会に誘われていたけど
個人としてそこに行くのは問題な気がしていつも行けなかった。

でも退職した今ならば行けるだろうか。

 
仕事をしているからこそ行ける、仕事関係者のコンサート。
仕事をしていたからこそ行けなかった、利用者のコンサート。

その日は今とかつてに思いを馳せた。

 
私はその音楽教室の演奏は初めて聞いた。
利用者が素敵な格好で施設外の人と団体で音を奏でる姿に感動をした。

音楽はいい。
一所懸命頑張る姿は尊い。

 
目を閉じて思い浮かべる。
私は元担当利用者の奏でるピアノの音をまだ一度も聞いたことがない。

一度でいいから聞いてみたい。

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