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税理士の先生が知っておきたい雇用をめぐる最近の法律問題 #9 育児休業(2)

「働き方改革」といった言葉で表された一連の労働法規制の改正が行われてから数年、雇用関係をめぐっては続々と変化が現れてきています。この連載では税理士の先生方にもぜひ知っておいていただきたい、最近の雇用をめぐる法律問題をご紹介していきたいと思います。
今回は前回に引き続き育児休業をめぐる最近の動きについて解説していきます。

1 育児介護休業法の改正

育児介護休業法は2021年に改正され、令和4年4月から、段階的に施行されています。企業活動の上でも影響の大きい改正になりますので、内容をしっかり押さえておくことが重要です。

2 主な改正内容

(1)出生時育児休業(産後パパ育休)の創設

新たな制度として、育休とは別に、出生時育児休業という制度が設けられました。
これは、取得ニーズが高い、出産直後の時期にこれまでよりも柔軟で取得しやすい休業として位置づけられています。産後8週間以内に、4週間(28日)を限度として取得することが認められ、2回に分けて取得することも認められます。
この制度は一般に、産後パパ育休と呼ばれています。

(2) 育児休業の分割取得が可能に

育児休業について、改正前は原則として1回しか取得できませんでしたが、2回まで分割して取得することが認められるようになりました。これは、夫婦が育休を交代して取得するといった形で活用が想定されています。

(3)個別の周知と意向確認の義務化

本人又は配偶者の妊娠や出産の申出をした労働者に対して、個別に制度を周知し、休業所得の意向確認を行うことが企業に義務づけられました。
具体的には、育児休業、出生時育児休業に関する制度の内容や、その期間内の育児休業給付に関することなどを個別に説明し、その取得の意向を確認することとされています。
この実施にあたっては、取得を控えさせるような形で行うことは禁止されています。

(4) 環境整備

従業員による育児休業を支援するために、育児休業等に関する研修の実施や会社としての方針の周知、相談窓口の設置などのいずれかの措置を講じることが義務づけられました。

3 まとめ

2021年の改正内容について概要をお伝えしましたが、基本的な考え方としては、育児休業の取得の促進、特に、男性の取得を促進することが目指されているところです。
実際、男性からの育休取得の申出があったケースで相談を受けることも増えており、今後ますます増加が予想されます。
企業としても適切な対応が求められるところです。

次回は、育休にも関連する、マタハラについてご説明します。

【執筆者プロフィール】
弁護士 高井 重憲(たかい しげのり)
ホライズンパートナーズ法律事務所
平成16年 弁護士登録。
『税理士のための会社法務マニュアル』『裁判員制度と企業対応』『知らなかったでは済まされない!税理士事務所の集客・営業活動をめぐる法的トラブルQ&A』(すべて第一法規) 等、数々の執筆・講演を行い精力的に活躍中。

第一法規「税理士のためのメールマガジン」2023年9月号より

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