「頑張りすぎないで」と言われた日
話をするとき、悩み相談になることがある。そういうとき、比較的聞き役になることが多い。
仕事でも悩んでいる人と向かい合う。代筆の仕事もそうだし、カウンセリングも、コーチングも、占いもそうだ。みんな何かしら抱えて生きている。
僕は人と話をすることが好きだ。みんな主観で、自分の世界を見ている。自分の世界を生きている。僕が見れない景色を見て、どんなことを考えているのか。それを聞くのが好きだった。
悩みも人それぞれだから、悩んでいることは本当に尊いことに感じる。ある意味で、”美しい”とすら思う。そういうとき、自分だけの理由で悩めているんだという気がした。そういう姿が、生きているんだって感じがする。
きっと僕には今ほとんど悩みがなくて、悩んだとしても”今の自分”に戻ってくることができるようになっている。
真ん中に。ゆっくりとだけど、確実に。自分の心地いい状態に必ず戻ってこれるようになったから、悩んでも悩みは次第になくなっていったんだと思う。
少し昔までは全然そんなことなかった。
ほんの1年前までは、僕もずっと悩んでいた。親とのこと。周りにいる仕事関係の人とのこと。妻とのこと。あれやこれやに手を出して、なかなか結果の出せない自分に対して。
本当にずっと悩んでいた。だれにも相談することなんてできなくて、ずっと部屋にこもっていた。
きつかった。一人でいても答えなんて出るはずもなくて。でも何もしないでただじっとしていることはできなかったから、とにかく手当り次第に挑戦した。
文章を書いても、思ったように書けなくてすぐに消した。ブログやSNS、プログラミングやWebライターなどいろんな副業をやってみたが、なにも続かなくてどんどん自分が嫌になっていった。
そんな自分をずっと変えたかった。
だから僕はずっと書き続けた。
真っ白なA4用紙に。妻に誕生日にもらったボールペンで。
思ったこと、感じたこと。自分のこと、ほかのだれかとのつながりのこと。生きたい人生、やりたいこと、夢や目標を。
ただひたすらに紙に書き続けたんだ。
正解かどうかはわからなかった。
それでも書くということが、僕を"真ん中"に連れて行ってくれるような気がした。すこしずつだけど僕の中にあるたくさんのもやが出ていって、息がしやすくなっていく感覚があった。
自分ができないことと向かい合うことができたから、僕は自分の弱点や苦手から目をそらさなくなっていった。直そうとすることもなく、ただ受け入れて、どう対処していくかを考えて、実践する。すこしくらいうまくいかなくたって構わない。今までただ悩んで苦しみ続けてきたんだから、それに比べたらちょっとだけ前進している。そう感じられた。
人生はけっして正解を見つけるためのゲームじゃない。ただ自分にとっての生きる意味を探す旅なんだと思う。
そんなふうに思えた僕は、ようやく思い悩むだけの自分から開放された。
今だって悩むことはある。立ち止まることだって、ときどき戻ってしまって、うつむくこともきっとある。
でも悩む自分も、立ち止まる自分も、ときどき戻ってしまう自分も、うつむく自分も、全部自分だから。調子のいいときの自分だけが自分じゃないから。気がつけば自分の人生を生きている、って胸を張ることができるようになった。
だから僕は同じように悩む人と話をしたい。
ただ話を聞いて、こんな考え方もあるんじゃないか。こう考える人もいる。違う視点や場所から見たら生きやすいだろうなを伝えたりしている。
先日、ある女性と話した。
その女性は普段は聞き役になることが多いらしく、悩みを話すことがなかったそうだ。でも話してくれた。
「病気のこと。今の自分の状態。こんな悩み、誰にも話したことなかった。でも話すことができてなんだかすっきりしています。ありがとうございます。」
「だから頑張りすぎないでくださいね。」
何かが落ちてきた気がした。
それは別になんてことなくて、ただ僕がいつも口にしていることだった。
人生を頑張ろうとする。それはものすごくすてきなことだ。よりよい人生を生きたいという思いが人生に色をつけてくれる。
でも別に頑張んなくたっていいんだ。頑張んなくても生きていける。頑張んなきゃ生きていけないなんて誰が決めたんだろうか。
頑張ってみんな生きているからこそ、もうちょっとゆっくりでもいいんじゃないかなって思う。たくさん休んだっていいんだと思う。
僕はそこまで頑張っていなかった。頑張るって人それぞれで、定義も度合いも違うから意味合いが変わってくるのかもしれないけれど、僕がしていたのは頑張らなくても僕の中ではできることだった。頑張ろうと思わなくて自然と頑張れてしまうことを、ただしていただけだった。
ああ、そうか。きっと救われたんだ。
頑張っている自分を認められた。頑張っていたんだと思えた。
頑張んなくたっていい。ときどき休んだっていい。
だからこそ僕は、自分が頑張りたいときに頑張れるように、頑張りすぎていないかを確認しよう。ちょっと立ち止まって、今日は海にでも行ってみようかな。
頑張りたいと思う人と一緒に頑張っていきたい。
そのために頑張りすぎない。
頑張る自分を大切に。
頑張るあなたへ
頑張る人と頑張りたい物書きより
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