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大学の統合再編は何故おきているのか?

<2021年5月23日更新>

現在、同時多発的に大学の『統合再編』が進んでいます。

ご存知の方もいると思いますが、2021年5月の国会において「国立大学法人法の一部を改正する法律」が成立し、国立大学による機構設立が複数認められました。

一足早く、旧帝国大学である名古屋大学と岐阜大学が統合に踏み切り、2020年4月には「東海国立大学機構」が誕生し、その初代機構長に名古屋大学の松尾学長が着任したこともニュースになりました。

旧帝大である名古屋大学でも国立同士による統合の動きを見せています。

さらに、2021年3月には、四国の国立大5校が「一般社団法人四国地域大学ネットワーク機構」を設立し、その初代代表理事に山下一夫鳴門教育大学長が就任しています。

当機構も、2023年度に文部科学省の「大学等連携推進法人」の認定制度を活用し、教職課程の一部をオンライン合同授業で受けられるようにするそうです。

このように、コロナウイルス感染症の影響によって、オンラインをテコとした大学連携も活気を帯びています。

今回は、
なぜこんなに統合再編が進んでいるのか?今後はどうなるのか?といったことについて現況を調べ、まとめていきたいと思います。

■大学の統合再編の状況

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2020年初めに話題になった『病院の統合再編』の波は、一足早く大学にも及んでいます。

何となく耳にしたり、目にしたことがあるかもしれませんが、実はこれだけの国公立大学が統合再編のほか、包括連携が進められているようです。

(以下、2021/5/23 つぶまんリサーチ調べ)

【国立・公立大学の再編統合の状況】
①名古屋大学 + 岐阜大学
東海国立大学機構(2020年4月)
②山梨大学 + 山梨県立大学
一般社団法人 大学アライアンスやまなし(2021年4月)
③小樽商科大学 + 帯広畜産大学 + 北見工業大学
北海道国立大学機構(2022年4月)
④大阪府立大学 + 大阪市立大学
大阪公立大学(仮称)(2022年4月予定)
⑤静岡大学 + 浜松医科大学
静岡国立大学機構(仮称)(2022年4月設置を延期)
⑥奈良女子大学 + 奈良教育大学
奈良国立大学機構(2022年4月)
⑦愛媛大学+香川大学+高知大学+徳島大学+鳴門教育大学
一般社団法人四国地域大学ネットワーク機構(2021年3月設立)
⑧弘前大学+岩手大学+東北大学+宮城教育大学+秋田大学+山形大学+福島大学+新潟大学
東北創成国立大学アライアンス(2021年3月設立)
【国立の学部統合】
①宇都宮大学 + 群馬大学
共同教育学部(2020年4月)
【オンラインをテコとした包括連携】
①弘前大学+宇都宮大学+長崎大学+東京外国語大学
多文化共生教育コンソーシアム(2021年3月)
②近畿大学+帝京大学+東海大学
私立総合3大学アライアンス(2021年4月)

とはいえ、このような動きは今に始まったことではなく以下の文部科学省専用ページにもあるように国立大学の統合再編は、いく度となくされてきました。

ちなみに、最近のニュースでは私立大学ですが同法人内にある兵庫医科大学と兵庫医療大学も2022年4月に統合することを発表していました。

■なぜ統合再編がされているのか?

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なぜこんなにも多くの大学、特に国立大学が統合再編に動き出しているのでしょうか?

その大きな背景には、中央教育審議会『2040年向けた高等教育のグランドデザイン(答申)』で触れています。

(多様性を受け止めるガバナンス)
○ 複数の大学等の人的・物的リソースを効果的に共有できるよう、一法人一大学となっている国立大学の在り方の見直し、私立大学における学部単位等での事業譲渡の円滑化、国公私立の枠組みを越えて大学等の連携や機能分担を促進する制度の創設など、定員割れや赤字経営の大学の救済とならないよう配意しつつ、大学等の連携・統合を円滑に進めることができる仕組みや、これらの取組を推進するための支援体制の構築など実効性を高める方策について検討することが必要である。

その後、2019年5月の改正国立大学法人法が成立し、国立大学においても『1法人複数大学(アンブレラ方式)』が可能になりました。

ちなみに、公立大学においては先例があり「愛知県立大学、石川県立大学、高知県立大学」は1法人複数大学の中に存在する大学です。

また、山梨大学と山梨県立大学の例は、2021年2月に創設された『大学等連携推進法人』制度の利用を見越しての法人化でした。

これらの制度を背景に、国立や公立といった大学の統合再編が進められていると考えられます。

国公私立大学の連携・統合に関して、以下の書籍でも述べられていましたので、ご紹介させていただきます。

■統合再編している大学の特徴


国は、国立大学の『第3期中期目標期間(2016年度~2021年度)』での運営費交付金(補助金)に対し「3つの重点支援の枠組み」を創設しました。

(なお、大学運営において運営費交付金が占める割合については以下の記事にて記しています)

そして、以下「3つの重点支援の枠組み」の選択肢のうち大学自らが1つを選択しています。

【選択肢】(カッコ内は選択した大学数)
①地域に貢献する大学:

地域のニーズに応える人材育成・研究を推進(55大学)
②専門分野に特化した大学:
分野ごとの優れた教育研究拠点やネットワークの形成を推進(15大学)
③世界に卓越した教育研究を行う大学:
世界トップ大学と伍して卓越した教育研究を推進(16大学)

そして、今回の統合再編を進めている大学の特徴として、そのほとんどが『①地域に貢献する大学』を選択している傾向にあることが分かりました。

以下の雑誌には、『①地域に貢献する大学』を選択した大学の一覧が記載され当時の相関図も記載されております。

そのため相対的にですが、②③の「教育や研究に特化し、世界と張り合う」といった選択をした大学以外は統合再編を今後、検討するかもしれないとも受けて取れます。

しかし、③を選択している名古屋大学のようなケースもあることから一概には言えませんが、国立大学も統合再編することで『組織の新陳代謝』を図り『生き残りをかけている』ということかもしれません。

特に北海道地区の3大学は単科大学であり、統合することで複数の学部をもつことになり、特色が増えることに加え学生募集上でも有効な取組みといえます。


■今後はどうなるのか


以上、国公立大学の統合再編の状況をみてきました。

北海道地区では、単科大学同士が統合することで「文理融合の副専攻型プログラム」が完成しました。また、大阪地区の統合は「公立大学として最大級となる新大学」が発足することになります。

それによる外部への影響は計り知れないでしょう。

『大学等連携推進法人』制度の活用によって、山梨・四国・東北の例だけでなく、今後は私立大学も傘下に加える再編といった動きも出てくるでしょう。

ただ、当制度は「定員割れや赤字経営の大学の安易な救済につながらないような仕組みとする必要がある」と文部科学省が示唆していたことから、

「単体で生き残るのが難しいから他の大学と連携したい…」と考えていたとしても(地域の実情等にもよりますが)なにかしらの認定基準が設けらている可能性もあります。

そして、その連携を先導するのは概ね国立大学であるとも考えられ、もしかすると『①地域に貢献する大学』を選択している国立大学はそれも視野にいれているかもしれません。

国立大学は2022年度から『第4期中期目標期間』となります。すでに「国立大学改革方針」も示されています。

2021年10月には、世界最高水準の教育研究活動の展開が見込まれる「第4期中期目標期間における指定国立大学法人」において、筑波大学と東京医科歯科大学の2校が選ばれました。

こういったように、国立大学の改革スピードはより加速していることから、身近にある国立大学の取組みについてHP等で見られても面白いと思います。

今後も国立大学の活動から目が離せませんね。

最後までお読みいいただき、ありがとうございました。
Twitterもやっています。@tsubuman8

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