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クリスの物語(改)Ⅲ 第二十七話 ドラゴン族と地球人類

 わたしたち一族は、元々この地球上で何万年も前に人間と共存して生活していたわ。他のユニコーンやペガサスなど、空想の生物といわれる存在と同様にね。

 その頃、地上はまだ闇の勢力に侵されることなく、人類は神聖とつながり、もっと自由で純粋な存在だった。お互いに慈しみ合い、愛と喜びだけがこの地球を支配していたの。

 わたしたちの種族ともお互いに尊重し合い、奉仕し合っていたわ。種族の別なく、愛し合うカップルもいた。
 ところが、あるとき宇宙に浮かぶ資源豊かな星、青い宝石とも呼ばれていたこの地球が闇の勢力に目をつけられてしまったの。

 それまで地球は、宇宙連盟のルールによって、他の星の生命体が所有することは許されていなかった。だから宇宙のどの星からやってくる生命体も、まるでバカンスでリゾート地を訪れるように地球を訪れ、その美を愛でては自分の星へと帰っていった。
 ひと時の憩いの場として、地球を利用していたの。

 でも闇の勢力は、それで満たされることはなかった。何としても、地球を自分たちのものにすることを渇望した。
 そこで闇の勢力は考えた。地球外部の生命体が所有できないのであれば、地球内部から侵略してしまえばいいのだとね。
 地球人を自分たちの支配下において、自分たちの意のままに動くようにすればいい。そうすれば、この地球を所有はできなくても自分たちの好き勝手にできる。つまり、実質地球は自分たちのものになる、と。

 そのために闇の勢力は、まず地球と地球人自体の波動を下げることを考えた。そうすることで、地球に転生してくる存在自体が洗脳しやすくなる。そう考えたの。

 その目論見の下、闇の勢力は他の地球外生命体と同様に、表面上友好的に地球を頻繁に訪れるようになったわ。
 地球人はあまりに純粋だったために、そのように訪問する人々を疑ったり不信に思ったりするようなことはまったくなかった。
 他の地球外生命体と同様、地球人は闇の勢力の人々を客人として歓迎した。この星が自分たちの家であるように振る舞ってください、と言ってもてなした。

 そして、闇の勢力は何の疑いも持たずに自分たちを信用する地球人に、ある果実とその種子を渡したの。歓待してくれたお礼に、と言ってね。
 自分たちの星で食される果実で、めったに手に入らない貴重なものだけれど、水源豊かな地球であれば栽培もできるだろう。友好の証に是非、と言って勧めたのよ。

 地球人は、何も疑わずにその実を口にしたわ。その実が自分たちを3次元の世界に留めおき、神聖と切り離してしまう悪魔の果実だとも知らずにね。

 そしてそれ以来、恐怖が地球を支配するようになった。
 神聖と切り離され、自分たちが大いなる存在の一部であることを忘れ、次元間の移動を瞬間的に行える魔法が使えることも忘れてしまった人類は、3次元という低波動域に拘束され、肉眼で見えるものしか信じなくなってしまったの。

 それにより宇宙から無限に供給されていた資源や生命を有限のものと捉えるようになり、略奪への恐怖、死への恐怖が人類を支配した。
 そして、地球上には争いが絶えなくなった。慈しみ合い、愛し合っていた人類は、いつしか互いに奪い合い、憎しみ合うようになってしまったわ。

 その矛先は、当然わたしたちへも向けられた。
 神聖とつながるわたしたちのような存在は、闇の勢力からすれば邪魔な存在だったのよ。
 だから、闇の勢力の策略により、わたしたちは人類から魔物と恐れられるようになり、討伐の対象となったわ。そしてわたしたちは地球にはいられなくなり、多くの仲間がこの星を去ることになった。

 それでも地球の人類と愛し合っていたことが忘れられずに、信じて待ち続けた者たちもいる。でも、残った者のほとんどが迫害され、殺されてしまった。それでも地球を離れずに信じて待ち続け、今でも地球のはずれに人知れずひっそりと暮らすドラゴンはいるのよ。

 とにかく、わたしたちのような存在も失い、闇の勢力の思惑通り地球の波動はどんどん下がっていったわ。そして、闇の勢力が地球を牛耳るようになった。
 宇宙連盟のルール通り地球を所有することはできないにしても、実質、地球は闇の勢力の支配下に置かれた。

 そしてそれ以降、地球人は闇の勢力によって洗脳され、コントロールされ続けてきた。
 その洗脳は深く、死んでからも洗脳が解けないままでいる未成熟な魂も中には存在するわ。つまり、この3次元地球における肉体の人生がすべてで、死んでしまえば自分の存在自体消滅してしまうと信じ込み、実際にそういう世界を自分で創り出してしまっているの。

 でも、実際それは自分たちが思い込んでいるだけで、魂が消失することはもちろんないわ。だからそういった魂は肉体を離れた後、自分たちが創り出した暗いトンネルの中、眠り続けてしまっているの。

 守護存在が起こそうとしても、もう死んだのだから聞こえないと、頑なにその声を無視し続けているのよ。
 残念ながらそういった魂は、洗脳から解け自分たちは死んでいない、肉体を失っても存在し続けるということを自分自身で思い出すまでは、その状態がいつまでもずっと続いてしまうの。

 でも、それは一部の未成熟な魂の話であって、ほとんどの魂は肉体が滅び、純粋な魂に戻ったときには洗脳から解放されるわ。
 自分たちは本来無限の存在でありながら、制限された無力な存在だと思い込まされていただけだったと肉体が死んだときに気づくのよ。

 そして、そのように闇の勢力のコントロールから解放された魂であれば、わたしたちのような存在と分け隔てなく接することができる。だから、わたしたちはそういった魂が地球へ転生する前に、先に契約を交わすことにしたの。
 かつて愛の惑星であった地球を取り戻すために。地球人とわたしたちが再び愛し合うことができるように。

 でも、また地上で肉体に転生するときには、生まれる前の記憶はすべて忘れ去られてしまうわ。
 なぜなら闇の勢力が地球人類を洗脳しやすくするために、DNAさえも操作してしまっているからよ。
 DNAの操作によって、転生した魂は産道を通ったときには、転生する前のすべての記憶が忘れ去られるようになっているの。

 それでも、わたしたちは待ち続けた。いつか気づいて思い出してくれることを信じて。契約を交わしているとはいえ本人が信じて求めてくれない限りは、わたしたちにも何もできない。

 たとえ闇の勢力から侵略されたとしても、その問題を解決するためには宇宙連盟ですら直接手出しはできないの。その星で起こった問題は、すべてその星の存在が自分たちで解決しなければいけない、というのがこの宇宙のルールなのよ。

 だから、わたしたちは見守ることしかできなかった。でも、助けを求められればいつだってそばにいて、サインを送り続けた。
 もちろん、そのサインにも気づかれないことがほとんどよ。それでも、いつか気づいてくれると信じて、わたしたちは待ち続けた。

 そうして、ようやくわたしたちの存在に気づく人類が現れはじめた。クリスたちのように。
 そして徐々に地球は目覚めた人々が増え始め、地球の意識が上がり、今ようやく闇の勢力の支配を逃れてアセンドする段階へと差し掛かってきた。

 ここで地球がアセンドして再び不老不死を手にし、かつてのように永遠不滅の存在だということを思い出せば、地球人はもはやそれを当たり前のこととは思わずに、感謝するようになるでしょう。
 そして、闇の勢力に侵された他の惑星の生命体へも、指導できるようになるでしょう。

 そこまで話して、エランドラはまた優しく微笑んだ。
『だから結果的にみれば、地球にとって、地球の進化において、闇の勢力の侵攻は必要なことでもあったのよ』
 エランドラはそう言うと、グラスを手に取った。

 優しい笑顔で見つめるエランドラと傍らで静かに話を聞いていたラマルを見て、クリスはなんだかとても申し訳ない気持ちになった。

 いくら闇の勢力に洗脳されたとはいえ、かつて同じ地球上の存在として家族のように愛し合ってきたのに裏切られ、仲間が殺されたにも関わらず地球人を見放さずに信じてサポートし続けてきてくれたドラゴン族。

 彼らのためにも、何としても闇の勢力を地球上から追い出そうとクリスは心に誓った。


第二十八話 優里の特性

お読みいただき、ありがとうございます! 拙い文章ですが、お楽しみいただけたら幸いです。 これからもどうぞよろしくお願いします!