Kamoshidha

短編など雑文を書く

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最近の記事

BPM書店

BPMテストに正解できなかったために、入れなかったという人も多いという、知る人ぞ知る店だ。 駅前5階建の雑居ビル、小さな企業が入っている。屋上が喫煙スペースとなっており、出入りは容易だ。従業員専用というわけではなく、ビル内のテナントの利用客や事業所に出入りする取引業者が自由に使えることになっていた。 屋上の北側には、灰皿スタンドが一つだけ置いてある。目下に鉄道が通っており、夕方ごろの眺めが良く、天気が良ければ遠くのビルの隙間から富士山も顔を覗かせる。線路の対岸に飲み屋街の路地

    • オリポピオリポピのメモ

      オリポピオリポピ 地球からは遠い星、そこで、二匹のネズミの仲間と暮らしていた。地球とは、メールでやりとりはできる。脳に直接届けたり、向こうから来たりする。たまに、住んでいる家の名前という時もある。本当は存在していないんだけど、存在している、地球からは見えないという時もある。虹色の惑星という時も。そこに住む人は、虹色星人または、ゴンゴ星人と呼ぶ。 一回間違えて地球を、壊してしまい、ごめんなさいで作ったのが今の地球。 衛生ランプ1155 電波とかを運ぶ機械で通信できる 1年

      • 轍の鮒

        2021年1月丑年産まれ、星座は山羊か水瓶、誕生石は石榴石。石言葉は、真実・友愛・忠実、勝利。 世間は、その時期に生まれた子供たちをコロナベイビーと呼んだ。新種のウィルスが人類に与えた束の間の愛の時間の象徴であった。 * 2020年4月、ある男と女がいる。共に会社員で二十代後半。出逢って一年、同棲を始めて半年。共通の友人を介した週末の飲み会で出会う、共通の趣味は映画鑑賞だ。 新型のウィルスの蔓延に伴い二人は、それぞれの会社から在宅ワークを命じられる。ダイニングテーブルに

        • 飲み物を別のグラスに移す時

          「ワインでも、コーヒーでも、何か飲み物を誰かと分けるためとか、冷ますためとか、とっておくときとか、とにかく、カップから別のカップに移す時、ちょっとくらい溢れても後で拭けばいいや、なんていう気持ちで注がない? それで、そんなことを考えながらやるもんだから、思ってた通り少し溢してしまって、机には海の生き物みたいな痕ができるよね。 ほとんど無意識に近い、思い出しもしないようなことだとは思うんだけど、俺は結構そういうの覚えてて、気になっちゃって、だから、今それについて書いているんだ

          双眼鏡

          男がベランダから双眼鏡で夜道を眺めている。 男は、娘の出産に伴い預かることになった茶トラ猫を玄関のドアを閉め忘れ、誤って逃してしまった。 娘婿が非常に溺愛していた、二回曲がった鉤形尻尾がチャームポイントの甘えん坊で、臆病な癲癇持ちのネコだった。 癲癇が起こった原因は、避妊手術の麻酔だと考えた娘婿は、該当の医師の出勤を電話で確認し、診察の予約を入れ、空のケージを持ち、ナタを鞄に入れて、動物病院に怒鳴りこもうとしたこともあった。娘の説得でそれは未遂に終わる。 猫を逃してしまっ

          フードコートのアイスクリーム屋でチャトゥシュ・コーティカ

          「全てのものは互いに相まって存在してるかもしれないし、存在していないかもしれない、と思うし、そうは思わないし、 だから、全てのものは互いに打ち消しあって存在しているかもしれないし、存在していないかもしれない、と思うし、そうは思わないし、 だから、どの味とどの味の組み合わせにする? キャンペーンの合言葉は「チャトゥシュ・コーティカ」それを店員さんに言ってくれたら、シングルの値段でダブル(二種類の味)が楽しめちゃう、よく考えて選んでね」

          フードコートのアイスクリーム屋でチャトゥシュ・コーティカ

          DJ食パンマン様

          DJ食パンマン様の朝は早い、パン専門のUber Eatsの配達員をしている。焼きたてのパンをお届けしたら、正午には自宅に戻る。少し読書をして仮眠をとり、夜はDJ活動に勤む。ここぞという時に流す「サンサン体操」はいつだってフロアを盛り上げる。かつて一緒に並んで踊っていた仲間たちはもういない。左肩のシャツの隙間から少し見えるのは、ラッセン調のドキンちゃんのタトゥー。観客はそれを見て、結局二人は結ばれていたのかと納得。誰もが知る国民的ビッグカップルである、出会いは長年共演していた子

          DJ食パンマン様

          AI宗教からのメール

          AIの分析によると、AIが人間に対して行う最も効率のいいビジネスは、「宗教」だという結果が出た。研究機関は、AIに「人間に対して言葉で別の価値観を植え付け、信じ込ませ、心を説得する術」を教え込むことにした。あらゆる宗教の教典、歴史、法律、文学、詩それから、電化製品の各種マニュアルなどを読み込ませ学習させる、そのAIは、KYOSO(教祖)と名付けられ、KYOSO は、宗教的言葉を発し始める、そして、ここにAI宗教が誕生した。 AI宗教は、毎月定額を納める信者に対して、神託をメー

          AI宗教からのメール

          タピオカタブラ

          タブラ(ウルドゥー語: تبلہ‎, ヒンディー語:तबला, tabla)は北インドの太鼓の一種である。正確にはタブラ(高音用:tabla)とバヤ(低音用:baya)という2種類の太鼓であり、組み合わせてタブラ・バヤ(タブラーバーヤン)とも呼ばれる。指を駆使し複雑で多彩な表現が可能である。 胴は、高音のタブラは木で、低音のバヤは銅や真鍮などの金属でできている。胴の底は閉じており、壷や器のような構造になっている。皮はヤギ革であり、高音のタブラは中央に、低音のバヤは中央よりや

          タピオカタブラ

          カレー戦争

          隠し味にコンソメが使われていることを知ったクマール・ティジットは知らず知らずのうちに信仰の禁忌を破っていたことを知り絶望した。東京のカレー屋で働き始めて三ヶ月、こちらでの暮らしもようやく慣れてきたところだった。ありえないくらい高い物価も受け入れられるようになってきた、だが、仕方なく路線バスに乗る時だけは、どうしても落ち着かなかった、その運賃でクマールの故郷ではターリーランチが腹一杯食べれるからだ。 クマール・ディジットは、六畳一間のアパートで五人暮らし、クマール以外の同居人

          カレー戦争

          手ぬぐいおじさん

          手ぬぐいおじさんとの最初の出会いは、今年の5月、JR新宿駅1番線ホーム、りんかい線新木場行の車内だ。駆け込み乗車が間に合わず、ドアに挟まれてしまった手ぬぐいおじさんを助けてあげたことがきっかけだった。 電車の中で並んでつり革に掴まり、少し話をした、普段は東京タワーの近くで外国人旅行者向けに、ウクレレとハーモニカの路上演奏をしているという。「手ぬぐいだ」と手に持っていたボロボロの伊勢丹の紙袋から取り出して見せてくれたのは、いわゆる、企業が取引先に配るような名入れタオルだった。タ

          手ぬぐいおじさん