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「何かしないと...」/『D.P. 脱走兵追跡官』から考える韓国の哀しき革命の歴史

はい!
今回は映画じゃないです!
ドラマです!ドラマ!

Netflixの韓国ドラマ『D.P. 脱走兵追跡官』を見たので喋ります!

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とは言っても言いたいことはだいたいYouTubeで喋りましたので(動画も見てくれたら幸いですが)、この投稿では今作に登場するセリフ「何かしないと…」の一言に込められた韓国の悲しくも激動の歴史について喋ります!

Youtubeの動画はこちら~(*´ω`*)

【前編】『D.P. 脱走兵追跡官』から韓国の社会問題を考える

【後編】『D.P. 脱走兵追跡官』イジメの受け流し方と、ウソの正しい使い方

2度目のコロナワクチン接種を終えた後なのか、若干テンションが低いですね…汗

まずは概要をば…

このドラマ『D.P』は韓国軍の憲兵隊の中にある脱走兵を無事に基地へ連れ戻すという専門部隊を描いた作品です。

軍隊内で年長兵から年少兵へ行われる指導や躾を建前にした“イジメ”の様子がこれでもかと描かれ、実際に徴兵で軍に赴いた韓国の方からも「辛い記憶が蘇る」ぐらいリアルだというコメントをYouTubeで頂いたほどです。

イジメ


こうした軍隊内の人権問題を描いた作品といえば、凄く暗い作品に思えますが、意外や意外!なかなかコメディタッチに描かれています。

辛い現実をまざまざと見せながら、思わず笑い出してしまうような日常もちゃんと描く。

DPコンビ


それは光が強く輝けば、その分だけ影は色濃く地表を染めるように、その対比のバランスが絶妙です。

「逃げたくなるような地獄も、ずっと感じていたい幸せも、そのどちらも同じ世界に同居していますよ!」という構造を映し出します。

さてさて本題です。

この記事のタイトルにもある「何かしないと…」というセリフについてです。

このセリフは、既に除隊した先輩兵を探し出し、イジメの復讐をしようと誓って脱走した兵士が口にするものです。

復讐者

「何かしないと…」

この言葉には、ただイジメを受けた個人的な悔しさ、苦しさからくるものだけではありません。

軍隊という組織内の不正を正す為に、死を持って世間に現状を知らしめるという、社会的な意義が込められた発言です。

言い換えれば、軍隊の階級制度という権力を持ってして、弱者を抑圧する者へ対する反抗の意思だと見て取れます。

イジメをした者を殺し、現状を変えるキッカケにしたい、その為なら自分の命を懸けて戦う。

ここで少し、韓国の民主化運動の歴史をお話させてもらいます(カッコ内の作品名は、その事件を主題に扱った韓国映画のタイトルです)。

韓国は1953年の朝鮮戦争休戦以来、北は北朝鮮、南の海へ出れば中国や日本、と言った具合に周囲を軍事的にも経済的にも敵に囲まれた国です。

そんな状況で突入した東西冷戦を生き残るには、軍事独裁制による強権で国内外の圧力を鎮めるしかなかったわけです。

しかし、70年代も後半に差し掛かると民主化運動は国内中に広がり、それは79年の朴正煕暗殺事件(『KCIA 南山の部長たち』『ユゴ』)を皮切りに一気に激化し、翌80年には光州事件(『光州5・18』『タクシー運転手』)に発展、武力による民間人と軍人の大規模な衝突が起こります。

また87年1月には、大学生運動家パク・ジョンチョルが警察の拷問により致死した事件を機に6月民主抗争(『1987、ある闘いの真実』)が起こり、韓国政府はこの年の6月29日ついに公式に民主化を宣言します。

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とまぁザザッと韓国の民主化がいかに大変だったかっていう話をしましたが、ここから本題のセリフに戻ります。

「何かしないと…」

この言葉の裏にある強い意思は、そのままそっくり、上で書いた韓国民主化運動に賛同していた、名もなき活動家、革命家たちの思いと同じだと言えないでしょうか?

彼ら一人一人の心の中にも、民主化による自由を願い、「何かしないと…」と自分を喚起させ、その為に命を懸けると心に決めて、民主化運動に身を捧げて来たはずです。

こう考えてみると、このイジメられた兵士が同じ思い、意思でこの「何かしないと…」という言葉を発しながら復讐に及ぶ、その姿から歴史的背景が浮かび上がり、あまりにも悲しく、同時に強い皮肉や批判のこもった想いが立ち上がります。

正直、もの凄い演出力に驚嘆しました。

軍のイジメ問題を取り上げながら、日常世界の穏やかさも描き、更にそれがどのような歴史を経てもたらされたのかを密かに忍ばせるストーリー構成の絶妙なバランス。

今、一押しのネトフリドラマです!
更なる詳細はYouTubeにて!


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