編集/企画畑のおっさんのキャリア "コンテンツのエコシステム構築"という仕事の可能性
SmartNewsという会社で働いている、山口 亮といいます。SQLを書いて分析することもあれば、社外の方とあれこれパートナーシップを検討することもあれば、いわゆるプロダクト企画みたいなこともします。
今回はコンテンツに根ざすプラットフォーマー、ないしニュースアグリゲーターなサラリーマンのキャリアについてちょっと書きます。メディア業界といってもちょっと狭いと思いますが。
もともとはYahoo! JAPANという大企業でアナリスト兼編集者(?)をしていたんですね。検索ログを解析をしたり、BuzzFeed Japanという会社を立ち上げたり、コンテンツ制作する人たちをデータという視点でサポートしたりしていました。
ざっくり振り返ると、こんなことをしてきました。
- 検索ログの分析とプロダクト改善 w/ PdM, Engineer
- ニュースサイトの編成と分析 / 改善
- BuzzFeed Japanの立ち上げと編集・企画・SMO Growth担当
- ポータルアプリの部分的なPMO / Planner(偉い人の丁稚)
- コンテンツとプロダクトの橋渡しでPlanner / BizDev / Researchあれこれ(今ココ)
転職して1年ちょっと。PdMの企画に対してコンテンツ面からフィードバックしたり、企画をサポートしたり、必要に応じて社外の方とパートナーシップを検討したりしています。また、企画に際して定性・定量調査を設計したりもします。
もう33歳とぼちぼちな年齢になってきたのですが、自分みたいな経験・スキルセットのある人間は果たしてどういうキャリアをたどるんだろうかと。弊社VPの佐々木大輔さんとの1on1で話題になったんですね。
メディア畑で企画・分析系の人間ではあります。とはいえいわゆるProduct Managerというには技術的なバックグラウンドに欠けるし、Data Scientistを名乗るにはRもPythonも経験不足でさほどでもない。専門性に欠ける。
1on1で「近そうなポジションをLinkedinあたりから探してみよう」と見てみたのですが、これがあんまりないんですよね。
GAFAみたいなところだとStrategic PartnershipみたいなポジションでBizDevになるだろうし、Netflixのようなコンテンツ制作であれば"Content Strategist"的なポジションはあるが、制作側になってくる。分析して、市場を見て、ウケるコンテンツをどのようにして制作するか考える(みたいな)。
プラットフォーム / アグリゲーターの人間で、コンテンツやメディアに根ざしていて、企画職ではあるけれど技術的なバックグラウンドはEngineerに全然負けるという場合はどのようなものがフィットするのか。
前述した1 on 1でテキトーに名前があがったのが、「Content Landscape Designer」。
市場と事業とユーザーを見ながら、自社サービスに適切なコンテンツが生み出されていくエコシステムそのものをデザインして構築していく仕事。ここでいうContentには記事・動画も含まれますし、Google Mapでのレビューのような狭義的なUGCも含まれるでしょう。なにそれかっこいい。
名前は出てきたけど内容はさっぱりわからん。というわけで、ちょっと整理してみようと思います。
"Content Landscape Designer"の役割と定義
「このポジションが作り上げる状況とは、どのようなものなのか? そしてその状況下で果たしている役割とはどのようなものか?」
これに答えられたらだいたい定義できるかなと思います。どこまでスコープがあるか、ですね。ちょっと広く状況を整理してみます。
- 自社に必要なコンテンツ群が安定的に調達されていること
- 運営のためのポリシー/ガイドラインが適切に整備・運用されており、リスクマネジメントがされていること
- そのコンテンツ群で主要KPIに相応のインパクトがもたらされていること
- 利害関係者とロードマップについて合意できており、競合優位性をどう担保していくのか多少なりとも見通しが立っていること
状況としてはこのようなものになってくると思いますが、もちろんこの中でも役割は分解されていくでしょう。
自社プロダクトにおいて「何を作るか」を決める責任者は、Product Manager(PdM)です。PdMはコンテンツにからむ事柄においては、Content Ops / Strategic Partnershipと協調しながら企画を進めていきます。
そんな中で、Content Landscape Designerはどのような役割を担うのか。
そもそもContent Ops / Strategic Partnershipはそれぞれ、以下のような役割を担います。
Content Opsの役割:
- 運用面において人力・機械を問わず、安定的に / 適切にコンテンツがユーザーのもとに届けられる状態を作り、維持し、ともに改善していく。
やること:
- コンテンツのピックアップ、編成
- Quality Assuarance、いわゆるポリシー / ガイドラインに則った監視
- どんなコンテンツがどのように届けられているかを監視し、機械が適切に機能していない状況から課題を抽出し、PdM / Engineerと解決する
- Content Calendar Programming(この日はこれがあるから、この日までにこういうのを用意しなきゃね〜みたいな出稿管理)
わかりやすくポータルサイトの編成担当を指す場合もあれば、SpotifyやApple MusicでPlaylistを組んだり、Apple Storeでおすすめアプリをピックアップしたりする担当者を指す場合もあるでしょう。
一方のStrategic Partnershipはちょっと違います。
Strategic Partnershipの役割:
- 事業 / プロダクトの成長機会を見出し、パートナーシップを推進することで自社の成長に貢献していく。
やること:
- 媒体コミュニケーション、新規開拓
- PdMの企画に対し適切なパートナーシップ候補を見つけ、交渉し、契約する
- 売上が小さい、またはビジネスモデルが適切に構築されていないなど「事業未満」の企画に対し、パートナーシップ締結の観点で事業化を推進する
超ざっくりですが、こんな感じです。広くいうと事業開発ですね。
Content Landscape Designerの役割を書いてみると、こうなるのではないでしょうか。
Content Landscape Designerの役割:
- どのようなコンテンツ獲得が事業 / プロダクトの成長機会につながるのか調査 / 定義し、その安定的な確保のためのエコシステムを構築する。
やること:
- 現状の市場でどのようなコンテンツ群が、どのようなユーザーになぜ支持されているのか、調査すること
- その市場において自社はどのようなポジションに機会を見出すべきか整理し、定義すること
- 成長につながるコンテンツ群をどのように獲得するのか、関係者と議論し中長期的なロードマップを計画すること
- 計画の実現を中心となって推進すること
逆に、やらないこととしては
- 編成など運用業務
- 個別パートナーとの短期的なコミュニケーション
- 技術的な仕様の決定
- 開発そのものの優先順位付け
となります。PdM / Content Ops / Strategic Partnershipと少しずつ役割を切り分けられそうですね。もしかしたら部分的にはCommunity Managerみたいな役割も担っているかもしれません。
Job Descriptionを書いてみる
ついでにSmartNewsのJDを参考に整理してみましょう。ざっと、こんな感じになるのではないでしょうか。
Description:
スマートニュースは2700以上のメディアと提携関係にあり、日々提携や協業に向けた多くの問い合わせを受けています。コンテンツの観点から自社の成長機会を見出し、メディアのエコシステムを構築する担当者を募集します。
スマートニュースのミッションは「良質な情報を必要な人に送り届ける」こと。これにより、豊かな思想や言論、創造性を触発し、世界の発展に貢献できると考えます。多くのメディアパートナーと共に、このミッションを実現したいと考える方の応募をお待ちしています。
仕事内容:
- コンテンツ観点からの市場・ユーザー調査
- 自社の成長機会の定義と、事業計画の策定
- PdMやEngineer、Content Opsなどほか職種との協業とプロジェクト推進
Requirements:
必須
- インターネット業界での事業開発経験、コンテンツビジネス経験
- 社内外と協力するために必要なコミュニケーション能力
- 日本語:ネイティブレベル(流暢)
歓迎
- アンケート、インタビューなど定性・定量調査の実施経験
- P/L責任を持った経験
- 編集⻑や新規メディア⽴ち上げに類する実績・経験
- 変化が激しい環境で、関係者を巻き込み成長機会を創出した経験
- 開発経験は大きなプラス
Benefits...
みたいな?
書いてみて思うのは、PdMとの役割切り分けはかなり重要ですね。PdMが上記のスキルを有していればそれで済むっつー話もあるかもしれませんが、ここまでコンテンツに根ざした人ってのも希少だろうしなあ。
組織的にこのような人材に対して具体的にどういったアウトプットを期待するのか、どういう業務を担っていただくのか、そしてそれは各部署とアラインできているのかという細かい「詰め」は欠かせないだろうなという所感です。
こんなことをしている人は、メディア業界の中でどこかにいるのかしら……。
まあ、1on1での会話から少し掘り下げてみましたが、なんとなく見えたものはありますね。可能性はあるかもしれない。
ちょっと長くなってしまいましたが、次回はこういう役割を担っている人は例えばYahoo! JAPANやGoogle、Facebookだとどういうことを考えているのか、どう働いていそうなのか経験をもとに想像してみようと思います。
こんなメディア業界これから話について、FacebookグループやTwitterでも発信しています。ご興味ある方はどうぞ。
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