見出し画像

プレスマホ世代、絵本と児童書の可能性

絵本や児童書など、低年齢向けの書籍の可能性について、走り書き。

トーハンの調べによる、こんなデータがあります。
https://www.tohan.jp/news/upload_pdf/20190515asadokuyomaretahon.pdf

リリースによると、次のとおり。

朝の読書推進協議会が全国の小学校・中学校・高等学校に向けて定期的に実施している「朝の読書実態調査」に寄せられた「学校図書館貸し出しベスト5」の回答をまとめたもの

ここで注目したいのは小学校低学年のリスト。他の年齢層のリストに比べて明らかに異なるのは、「私も読んでいた!」と思う作品がちらほらあること。

プレスマホ世代の情報との接点はハードメディア

スマホデビューする前の年齢の情報との接点は、私たちの子どものころと多少は違えど、基本的にはハードメディア。

もちろん、スマホ普及以前と比べると、外出先で動画視聴する機会は増えました。教育コンテンツ系のアプリも増えました。

でも、ハードメディアの需要は一定以下にはならない。絵本や児童書は、電子書籍や教育アプリでは代替しづらいものがあるから。親のデバイスを占有しなければならないし、モバイルデバイスは大きな版型の絵本などと違って、テキストやビジュアルのサイズと情報量のバランスが悪い。

無料や安価な教育アプリ、YouTubeなどの無料メディアに比べれば、絵本は高額に感じられますが、需要そのものはなかなか減りづらい。また、動画は再生時間と情報量が比例しているので、大人の都合による子どものひまつぶしになりがちかも。

可読量とスピードと読み返し

まず子どもは単純に可読量が少ないこと。目的合理性のある読書をあまりしないので、スキッピングやスキャニングをしないこと。読み捨て型よりも、所有している本に関しては、それ自体が所有感を生み、独立したメディアであり、読み返しができること。

こういった理由から、プレスマホ世代にとって、紙の本の優位性はとても高い。

嗜好がパーソナライズされていない

プレスマホとスマホデビュー後の大きな差は、嗜好がパーソナライズされるかどうか。スマホの情報収集は能動的なので(パッシブなリコメンデーションも、そのアルゴリズムは結局はユーザーの能動的なアクションがデータソースになるわけで)、好みが生れ、接触する情報を取捨選択し、偏りを生み出す。

プレスマホ世代は、もちろん子どもそれぞれの強い好みやこだわりがあるとはいえ、定番ものや評価が安定しているコンテンツ、自分も読んだ記憶があるクラシックな作品を親が選ぶ機会は少なくない。さきのリストに世界の名作シリーズがランクインしている。時代性を強く反映し、一過性のトレンドに左右されるスマホデビュー後の世代よりも、ある程度、ジェネラルなセレクトを受容する傾向があるはず。

動画よりも親子のコミュニケーションを生みやすい

絵本の強みは、親子で読書体験を共有しやすいこと。そして、読み聞かせができて、コミュニケーションが生まれること。児童書もジャンルや対象年齢によるものの、低学年向けのものなら、同様。

動画は視聴機能を集中させるので、情報との接点が個とメディアになってしまう。本でなくても、教育アプリでも親子のコミュニケーションは生まれるものがあるよという声もあるかもしれないけれど、どうだろう。

一定のフォーマットではなく、読み方、声、寄り添い方、情報の補足など、子どもの反応にあわせて、あるいは親の個性によって、同じ絵本でも伝え方を自由に編集できる。そして、親も大量の情報を子どもの様子から得ることができる。コミュニケーションツールとして、シンプルな絵本に勝てるアプリなんて果たして作れるかしら。優れたツールこそ、用途に余白があるものではないだろうか。

大人の文芸よりも、よほどに可能性のある市場かも

(純文学に巣食う人間としてあえて自虐的に言うとするなら)ジリ貧の文芸よりも、絵本や児童書には、一定のマーケットが存在しているし、それはスマホの普及率にあまり影響を受けない。言うまでもなく、今の出版において、需要が安定した市場というのがどれほどに大切か。

そもそも低学年向けのスマホやモバイルデバイスが普及したとしても、その年齢の接触メディアはどうしても限定的だから、低学年向けメディアというカテゴリの構造が抜本的に変わることは考えにくい。

だから、絵本や児童書には明るい未来がある。需要が存在するかぎり、クラシックや定番だけでなく、トレンドを生み出すことだってできる。そして、そのトレンドを次の世代に引き継ぐことができるかもしれない。

読み捨て型のテキストコンテンツが多いなかで、希望があるカテゴリ。

そして、市場云々の話よりもなによりも、その年齢の間に、「読み返すこと」「好きな作品を繰り返し読むこと」を覚えてほしい。

最後に:こんな記事も

そんなことを書いていたら、絵本は売り上げが上がっている、手堅い売り上げを維持している、といったデータが。

紙離れ、少子化…なのに売れる絵本 グッチ注目の作家も(朝日新聞デジタル)

日本の出版統計(全国出版協会)


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

ありがとうございます! また読みにきてくださーい!
10
本と暮らす。株式会社デザインスタジオパステル。編集、企画、デザイン。https://studio-pastel.jp
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。