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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜をまとめました!
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2023年6月の記事一覧

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(終)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(終)

 大きく開いた天窓から丸い月が柔らかく、優しく浴場の中を照らす。
 アケは、優しいお湯の中に身体を浸し、安息の息を吐く。
 半年ぶりのお風呂。
 しかも自分と友達と一緒に作ったお風呂。
 そう思うだけで気持ち良さが倍増する。
 アズキも楽しそうに湯船の中を泳いでいる。
 火猪だからか、熱いお湯が好きみたいで飛び込んで入った。
 本当は、ウグイスとも一緒に入りたかったのだけど鳥の唐揚げを1羽分平らげ

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(8)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(8)

 小川と畑の間に置かれたペパーミントバードの卵は前衛的な彫刻のように庭の中で一際の存在感を放っていた。
 まるでそこだけが庭から切り取られたように浮いている。
 鶏小屋から放し飼いされた鶏達が物珍しそうに嘴で突く。
「完璧に景観を損なってますね」
 カワセミが眉を顰めて腕を組む。
「畑と鶏の歩く実用的な庭だからね。奥には水車も見えるし何とも場違いな光景だね」
 流石のウグイスもゲンナリとしている。

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜幻想DIY(6)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜幻想DIY(6)

 水に濡れた黄緑色の身体を震わせ、丸い目に怒りの炎を浮かべてアケ達を見下ろしている。その後ろに避達が描かれながらもアケ達を睨みつけていた。
「やっば・・・」
 ウグイスは、口元に手を当てる。
「怒ってる・・・よね?」
 アケも頬を引き攣らせる。
 その言葉を肯定するようにアズキが小さく鳴く。
「仕方ない。こうなったら」
 ウグイスは、戦う決意をし、右の手の平を広げ、水色の魔法陣を展開する。
「ダメ

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜幻想DIY(5)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜幻想DIY(5)

 その鳥はとても可愛らしい形態をしていた。
 ストローのような長い嘴、小さな丸い頭と大きな丸い身体が重なり合った姿は串の刺さったお団子のように見える。翼は大きな身体と比較して小さく、恐らく浮くことは出来ても飛ぶことは出来ないだろう。その変わりに足は発達しており、とても太く、筋肉が隆々と盛り上がっていることが分かり、その下の黄色く足首も鋼のように固く見える。羽毛の色は名前の通り、ペパーミント、目が痛

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(4)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(4)

「で、何でそれに僕が必要なのかな?」
 屋敷の裏庭、まだ整備されてない雑草生い茂る一角にオモチは立っていた。表情こそ変わらないものの困ったように右頬を掻く。
 オモチの前にはアケとウグイス、カワセミ、アズキが立っている。
 アケとウグイスは、何の期待分からないが目を輝かせ、アズキは嬉しそうに鳴き、カワセミは申し訳なさそうに身を縮めている。
「申し訳ありません。オモチ様」
 カワセミが心の底からすま

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(3)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(3)

 カワセミは、小窓に水色の羽毛に覆われた肘を付いて空を眺める。
 よく澄んだ良い空だ。
 ハーピー にとって空とは見上げるものではなく、常に同じ高さにあるもので、見上げるのなんて休む時か、食事をする時くらいなものだ。
 だから双子の妹から大地に家を作りましょうと言われた時に驚きを隠せなかった。
 そんな発想を持った事なんて一度もなかったから。
 それから奥方様とオモチ様に手伝ってもらい、家を作った

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(2)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(2)

 手土産と言うからどこか遠くに行くものとばかりに思っていたがアケがツキとオモチに連れてこられたのは屋敷の最上階、とんがり屋根へと続く梯子階段であった。
「ここに家精がいるの?」
 手土産として風呂敷に包んだ手作りのお煎餅やクッキーを大事に抱えてアケは言う。
 オモチとアズキは、アケが抱える風呂敷をじっと見下ろし、見上げていた。手土産として準備している時に2人が「本当にそれあげちゃうんですか?」と言

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明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(1)

明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜第5話 幻想DIY(1)

 オモチは、自分の仕える主がこうも表情豊かであった事を今の今まで知らなかった。
 自分の知る主は、寡黙で孤高。悠然と大地を踏みしめ、輝く強靭な肢体の美しさで心を奪い、民を守り、敵を駆逐し、黄金の双眸で一瞥すれば誰もが畏れ、敬わずにはいられない気品と威厳と優しさを携えている。
 まさに王の中の王。
 かつては自分を始め多くの者達が彼を慕い、彼に従い、彼と祖国の為ならばと勇猛果敢に戦った。
 そして敵

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