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新宿路上TV the Chronicle



【企画意図】

ビデオジャーナリスト遠藤大輔が、青年期に実際に行った活動「新宿路上TV」(下線クリックで映像再生)の経緯を再現し、メディアの社会的意義を問う青春ドラマ。なお、「新宿路上TV」は第20回東京ビデオフェスティバルでビデオ活動賞を授与されたほか、素材の一部はNHK,一部民放局でも使用された。

【企画概要】

時に1993年。テレビ報道に疑問を持つ映像作家・遠藤大輔(26)がいた。ブライダル撮影の収入で、自主制作を試行錯誤する日々。だが、ある日突然、会社都合で職を失ってしまう。絶望に突き落とされた彼はある日、友人から1枚のチラシをもらう。それは渋谷で行われる野宿者支援の越年行動のチラシだった。年末、遠藤は恐る恐る渋谷へ向い、ボランティア活動に参加。ドラム缶のストーブで暖をとりながら、初めて野宿者(ホームレス)と談笑し、「能力があっても報われないこともある」ことを知った。今に至るまでの貧困問題の取材軸のきっかけになった一夜だった。

その年明け、野宿者支援を行う友人からの電話で飛び起きることになる。「すぐに新宿に来てくれ」―詳しい事情もわからないまま、遠藤は小さなビデオカメラを携えて現場に向う。そこでは、「追い出し反対」のチラシを壁に貼ろうとする支援者・当事者と大勢の警察官がもみ合いになっていた。深夜、人通りも減った新宿西口の通路。「闘い」がすでに始まっていたことを遠藤は知った。そして、彼らの動きを追って取材する決心を固めた。通路にはすでに200人近い数のダンボールハウスが立っていた。

自身もほぼ失業者であった遠藤は、日々新宿西口に通い詰め、野宿者との談笑を楽しむようになった。野宿者の語る「解雇」「ピンハネ」などのエピソードに、どこか自分と共通するものを感じていたからだ。警察とのトラブル、炊き出しなどの支援活動、都区への交渉など、あらゆる場面を撮影し、同年7月に25分の短編「俺たちは人間だ-新宿ホームレスの闘い-」を、支援者・当事者の前で披露することになる。

どんな反応があるのか、不安を募らせながらの上映。待っていたのは大喝采の拍手だった。ところが、一人の野宿者が遠藤に文句を言う「なんで俺は映ってないんだよ、撮ってくれよ」と。目からウロコだった。それまで遠慮しながら撮っていた遠藤には、思いもよらぬ言葉。ならば、皆が映るファミリービデオのシリーズを作ってみてはどうか―。後にも先にも例がない、野宿者向けの路上コミュニティ放送、「新宿路上TV」のアイデアが閃く。

その後、男女2人のボランティアにビデオを教える準備期間を経て、翌年3月初めての路上放送を果たす。「新宿路上TV」―前代未聞のプロジェクトのスタートだ。その一方で、東京都による追い出し計画が着々と進む。果たして遠藤と仲間たちは、どう闘うのか。それは一つのクロニクルの始まりでもあったのだ。

【シリーズ構成】

第1話 挫折の中の希望 ~前年、遠藤と野宿者の出会い
第2話 新宿連絡会結成 ~混沌の中に生まれたコミュニティ
第3話 「新宿路上TV]いざ発信 ~初めての路上上映
第4話 悲しみを越えて ~支援者の事故死
第5話 志 ~野宿者とのコミュニケーション問題
第6話 愛ある世界 ~遠藤の恋愛・フランス人の参入
第7話 罠 ~NHK取材をめぐるトラブル
第8話 裏切り ~怨恨と瓦解
第9話 復活!新宿路上TV ~活動の再開
第10話 迫り来る厳冬 ~支援者逮捕
第11話 決戦!ダンボール村(前篇) ~強制撤去の前夜
第12話 決戦!ダンボール村(後篇) ~早朝の強制排除
第13話   明日へ向って ~MXTVでの活動開始

【脚本】

実話を基にした作品ですが、あくまでもフィクションです。漫画原作のボリュームの見当がつかなかったので、脚本の字数がやや不足かもしれません。ただし当時のビデオがすべて残っているので、視覚的資料はもちろん、ネームの伸びしろもかなりあります。

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