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現代長歌

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「現代長歌」
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2021年11月の記事一覧

軽薄な男(息遣い)

「会えば・軽薄な男・だったわ」と・女は動機を・そう語る・
「SNSでは・優しくて・聡明で機知に富む・好青年――」・
「仕方ないでしょ。・許せない。・ねぇ刑事さん」・憫笑を・浮かべ・虚を仰ぐ・
「文面から・私への愛が・にじんでた。・愛してる、・そう素直に・言えばいいのに」・
「何を言ってるの?・そんな訳ない。・彼は私を・愛していた」・
「そうなの。でも・実際に会ったら・軽薄な・男だった。・許せないで

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新天地(息遣い)

新天地(息遣い)

     新天地
「希望じゃない。・これは義務だ」と・船上の・契約をする・
――神の国を・地上に建てる・「さぁ夜明けだ。・陸に上がろう」・
羊の毛を・縒りつつ過去を・振り向けば・背を押す影の・微笑みは・希望に満ちる・
「ねぇ、あの時、・私たちが冬を・越した時」・「皆が死んだ。・あの時ね」・
「春になるまで・讃美歌を・歌いましたね」・「えぇ私たち・燃えていたわね」・
信仰に・燃える我らの・爪先は・い

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軽薄な男

「会えば軽薄な男だったわ」と女は動機をそう語る
「SNSでは優しくて聡明で機知に富む好青年――」
「仕方ないでしょ。許せない。ねぇ刑事さん」憫笑を浮かべ虚を仰ぐ
「文面から私への愛がにじんでた。愛してる、そう素直に言えばいいのに」
「何を言ってるの?そんな訳ない。彼は私を愛していた」
「そうなの。でも実際に会ったら軽薄な男だった。許せないでしょ」
「ねぇ刑事さん。何を言ってるの?彼が私の元に来たの

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未来・今月の一人

未来・今月の一人

    新天地
「希望じゃない。これは義務だ」と船上の契約をする
――神の国を地上に建てる「さぁ夜明けだ。陸に上がろう」
羊の毛を縒りつつ過去を振り向けば背を押す影の微笑みは希望に満ちる
「ねぇ、あの時、私たちが冬を越した時」「皆が死んだ。あの時ね」
「春になるまで讃美歌を歌いましたね」「えぇ私たち燃えていたわね」
信仰に燃える我らの爪先はいつも冷たい。悴んだ手を合わせゆく――
――「神の国は、今

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