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「追い越し」_その2 ~追い越しに係る規制

前回に続き追い越し、なかでも「追い越し」に係る道交法の規定についてひも解きます。


|追い越しと速度違反

追い越しをする際は、早期に追い越しを完了しようと、アクセルを踏み込んでしまうことも・・・・。しかしながら、追い越しの際に法定速度や規制速度を超えてしまうと速度違反になるのだ。

|追い越しが禁止されている場所

道路交通法第30条は「追い越しを禁止する場所」として以下のように規定している。

(追越しを禁止する場所)
第三十条 車両は、道路標識等により追越しが禁止されている道路の部分及び次に掲げるその他の道路の部分においては、他の車両(特定小型原動機付自転車等を除く。)を追い越すため、進路を変更し、又は前車の側方を通過してはならない。
 道路の曲がり角付近、上り坂の頂上付近又は勾配の急な下り坂
 トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
 交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
(罰則 第百十九条第一項第五号、同条第三項)

つまり
●道路標識等により追い越しが禁止されている道路
●道路の曲がり角付近
●上り坂の頂上付近
●勾配の急な下り坂
●トンネル(車両通行帯の設けられた道路は除く)
●交差点、踏切、横断歩道、自転車横断帯およびこれらの手前から30m以内の場所

が追い越しは禁止されているのだ。

上記のうち道路標識等により禁止されている道路を除く、道路の曲がり角付近などの追い越し禁止場所は道路標識などが設置されていなくとも追い越し行為は禁止されているのだ(法定の追い越し禁止場所)
なお、道路標識を見落とした場合であっても違反が成立する。

|追い越し禁止場所(法定)の理由

追い越し禁止の理由については、交通上の危険を生じさせるおそれがあるからだ。
登り坂の頂上付近やトンネル内は対向車線から接近する車両が確認しにくいし、交差点などは様々な交通利用者が集中する場所であり、それに伴う様々な危険が潜んでいるからなのだ。

|追い越し禁止は2種類

道路標識標示令(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)に規定される道路標識 「418及び418の2」は同一の標識板を使用しており、異なるのは「補助版」の有無だけである。

つまり補助版の有無により意味が変わるのだ。
上記画像の左側のように、追い越し禁止の標識(418)の下に「追越し禁止」と書かれた補助標識がついている場合は、一切の追い越しが禁止されているのである。

〇 追越し禁止の標識だけの場合
追い越し禁止の標識のみ(補助標識がない)の場合は、道路の右側にはみ出して追い越しすることが禁止されている。

追い越しをする過程において中央線を越えて右側車線にはみ出してはいけないということであり、はみ出さなければ追い越しすることができるということだ。
一方で、前車の原付きなどを追い越す場合でも追い越す際に道路の右側にはみ出さないよう注意する必要がある。

|路面標示によって変わる追い越し

道路に標示されたセンターラインの種類によっても追い越しの仕方が変わってくるのだ。
一般的な中央線(破線)の場合には、他の交通に注意して追い越しをすることは可能である。

イメージ:白色破線:筆者撮影

しかし、以下のように中央線自体に意味を持っているものがあり基本的にはみ出して通行することを禁じているのだ。

〇 黄色の実線の中央線(センターライン)
中央線(センターライン)が黄色の実線の場合は、センターラインの右側(対向車線)にはみ出して通行することが禁止されている。
一切の追い越しが禁止されている場所(追い越しを禁止する場所)でなければ、はみ出さなければ追い越しをすることが可能だ。

イメージ:黄色実線:筆者撮影

〇 白い実線の中央線(センターライン)
白い実線のセンターラインは通常片側6m以上の幅がある道路に引かれている。
白い実線は中央線であり、その意味は、「右側部分(対向車線)にはみ出して通行することができない」とされており実質的に追い越しすることはできない。
なお、違反した場合に追い越し違反ではなく「通告分違反(右側通行)」になる

道路標識標示令、中央線(205)より抜粋
イメージ:白実線:筆者撮影

|追い越し車線を走り続ける行為

道路交通法は、第20条で車両通行帯(車線)について定めている。

(車両通行帯)
第二十条 車両は、車両通行帯の設けられた道路においては、道路の左側端から数えて一番目の車両通行帯を通行しなければならない。ただし、自動車(小型特殊自動車及び道路標識等によつて指定された自動車を除く。)は、当該道路の左側部分(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路)に三以上の車両通行帯が設けられているときは、政令で定めるところにより、その速度に応じ、その最も右側の車両通行帯以外の車両通行帯を通行することができる。

いわゆる「キープレフトの原則」である。
片側2車線の道路では左側の車線を走り、片側3車線以上の道路では最も右側以外の車線を走れという意味である。

|右側通行帯の通行(右側追い越し)
第20条第3項では、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならないことを定めている。

3 車両は、追越しをするとき、第二十五条第一項若しくは第二項、第三十四条第一項から第五項まで若しくは第三十五条の二の規定により道路の左側端、中央若しくは右側端に寄るとき、第三十五条第一項の規定に従い通行するとき、第二十六条の二第三項の規定によりその通行している車両通行帯をそのまま通行するとき、第四十条第二項の規定により一時進路を譲るとき、又は道路の状況その他の事情によりやむを得ないときは、前二項の規定によらないことができる。この場合において、追越しをするときは、その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない。

この規定は、追い越しをする際は「これまで走っていた車線の右側から追い越すこと」を意味している。

また、片側二車線の道路では右側の車線、片側三車線以上の道路はもっとも右側の車線は本来通行が認められていない(第1項)が、追い越しの際は右側から行うため通行することが可能になることを意味しており、このことが最右側車線が「追越車線」と呼ばれる根拠なのだ。

この条文(第20条)により、追越車線を走り続けると違反になる。
追い越しが終わったら元の車線に戻らなければならず、追越車線を走り続けると「車両通行帯違反」になる。

なお、この規定には高速道路に限定する記述がないので一般道にも当てはまることになる。

|左側追い越しの禁止

前記のように第3項で追い越しは「その通行している車両通行帯の直近の右側の車両通行帯を通行しなければならない」と定められていることが根拠となり「左側追い越し」が違反となる。
ただし、右折待ちで停車している車両を左側車線から追い越す場合などの例外もある。

|他の車両に追いつかれた車両の義務

後ろから自分の車を追い越そうと右側車線に出た場合に、急に加速して速度を上げる、進路を右側に寄せるなどして追い越そうとする後続車の邪魔をする行為は「他の車両に追いつかれた車両の義務」違反になる。

(他の車両に追いつかれた車両の義務)
第二十七条 車両(道路運送法第九条第一項に規定する一般乗合旅客自動車運送事業者による同法第五条第一項第三号に規定する路線定期運行又は同法第三条第二号に掲げる特定旅客自動車運送事業の用に供する自動車(以下「乗合自動車」という。)及びトロリーバスを除く。)は、第二十二条第一項の規定に基づく政令で定める最高速度(以下この条において「最高速度」という。)が高い車両に追いつかれたときは、その追いついた車両が当該車両の追越しを終わるまで速度を増してはならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

 車両(乗合自動車及びトロリーバスを除く。)は、車両通行帯の設けられた道路を通行する場合を除き、最高速度が高い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央(当該道路が一方通行となつているときは、当該道路の右側端。以下この項において同じ。)との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合においては、第十八条第一項の規定にかかわらず、できる限り道路の左側端に寄つてこれに進路を譲らなければならない。最高速度が同じであるか又は低い車両に追いつかれ、かつ、道路の中央との間にその追いついた車両が通行するのに十分な余地がない場合において、その追いついた車両の速度よりもおそい速度で引き続き進行しようとするときも、同様とする。

|二重追い越しの禁止

前を走る車に追いつき、追い越し車線に出ようとした際に、前の車がさらに前を走る車を追い越そうと右ウインカーを出した場合などは前の車の追い越しが終わるまで待たなければならない(二重追い越しの禁止)。

(追越しを禁止する場合)
第二十九条 後車は、前車が他の自動車又はトロリーバスを追い越そうとしているときは、追越しを始めてはならない。

|おわりに

追い越しについてさまざまなルールが定められているのは、追い越し行為には危険が潜んでいることからである。

また、追い抜きについてはルールが定められていないが、やはり危険な状況が想定される。

追い越しや追い抜きは、危険を伴う運転操作を伴う行為であり判断を誤ると円滑な流れを遮り事故に繋がる可能性があるので、余裕を持って安全に行うよことが大切である。


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