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欧州のコーチエデュケーション【UEFA Aライセンス レジデンシャルブロック】 

木村です。私と蹴球カムリメンバーの桑原は現在UEFA Aライセンスを受講中で6月の頭にUEFA Aライセンスの『レジデンシャルブロック』と呼ばれるコーチング合宿に行ってきました。

UEFA Aライセンスのコースは1年間に渡る長期コースで、その1年の間に様々な指導実践や課題、レクチャーがあり、レジデンシャルブロックも3回開催される。今回の記事では第一回目のレジデンシャルブロックの様子をまとめていく。

Day 1

まずは10:00に宿泊先のホテルに集合。多くの指導者がウェールズから来ているが、ヨーロッパの他の国や世界各国から指導者が集まってくる。

そして10:30からホテルのメインホールでレジデンシャルブロックの日程の説明とコーチングの種類について学ぶ。

それぞれのコーチングの長所や短所をグループ内でディスカッションをして、どういった場面でどのコーチングを使うのが有効かを学ぶ。

そして12:00からランチ。ランチはホテル内のレストランでビュッフェ形式。

そして午後から近くにあるウェールズサッカー協会デベロップメントセンター『ドラゴンパーク』でUEFA Aライセンスのチューターによる練習を見学して、その練習をもとにディスカッション。

この日は『Principle Based Practice』(原則を落とし込む練習)と『Individualised Practice』(個人フォーカス練習)、そして『Position Specific Practice』(ポジションフォーカス練習)の3つの練習を見学してディスカッションを進めた。

チューターが練習を実演している間はワイヤレスヘッドホンをつけてチューターが「何を伝えて」「どのような言葉や言い回しでコーチングを行っているか」を聞くことができる。

17:30にホテルに戻り、自分の部屋にチェックイン。

そして18:00から夕食。

夕食を済ませると19:00から小グループタスクを行った。この日の小グループタスクは「グループ毎に与えられたトピックをもとにセッションプランを作成する」というもの。

そして、ここで作成したセッションプランを次の日の朝に他のグループへプレゼンをして、ディスカッションを行う。

この日は21:30までタスクを行い、1日目を終えた。

Day 2

2日目は9:00からのプレゼンまでに朝食を済ませる。

そして9:00から昨晩に作成したセッションプランをプレゼンして、練習の改善点や良い部分をディスカッション。

グループディスカッションを終えるとバスに乗ってドラゴンパークへと移動。

この日は『Team Training』について学ぶ。1日目と同様にチューターの練習を見て、その後指導者のコーチングのディテールや練習のオーガナイズなどを中心にディスカッション。

2つのTeam Trainingを見学して午前中のプログラムを終えた。

お昼を食べ終わると14:00からグループタスク。1日目のグループタスクと同様にグループ内でTeam Trainingを作成して他のグループにプレゼンするというもの。

私のグループのトピックは「3-5-2の相手のビルドアップに対して4-2-3-1のフォーメーションを使って高い位置でディフェンスをする」だった。そして、このTeam Trainingの練習では最大で20人(GK含めて)までしか使えないということが難しいポイントである。

6人1グループだが、このタスクで最も難しいことが全員のアイデアをまとめること。特に戦術に関わる部分は各々が好きなプレーがあるためなかなか意見をまとめることが難しい。「これはどう?」「それも良いけどこれもありえる」「もしこうなったら?」「こうした方がいいと思う」など戦術に関しては無限のやり方があるためなかなかグループタスクが進まなかったが、何とか1時間の準備タイム内に意見をまとめて他のグループへと発表した。

17:00にグループプレゼンテーションを終えると18:00まで束の間の休息。しかし、私は17:30から自分が働いているチームのオンラインミーティングがあったので、宿泊先のホテルから参加。

そしてミーティングを終えると夕食。

夕食後は19:00から『Reflective Practice』(振り返りの実践法)についての講義を受けた。

21:00に講義を終えると2日目のプログラムは終了。

Day 3

3日目は朝食を9:00に済ませてバスに乗り込みドラゴンパークへと移動。

ドラゴンパークでの実技講義はこの日が最後。3日目は『Match Preparation』(試合準備)について学んだ。

1日目、2日目と同様にチューターの実演を見て練習のオーガナイズやコーチングディテールをディスカッション。

この日も2つのMatch Preparationの練習を見学した。

13:00にホテルに着くとランチタイム。

そして14:00から2日目のグループタスクと同じようにグループに分かれてMatch Preparationの練習を作成。そして、他のグループへプレゼンするという流れ。

約1時間半の練習作成時間が与えられて、他のグループにプレゼンする準備をする。今回の私のグループは「マッチデイ-4(次の試合の4日前)に行うMatch Preparation。相手の4-4-2のハイプレスに対する4-3-3のビルドアップ」というトピックが与えられて練習を作成

そして、このグループタスクも意見をまとめるのが大変で、誰かが意見をまとめたり、他の人の意見を受け入れて1つのプレゼンテーションにまとめることが1番難しい。

17:00にグループプレゼンテーションを終えると18:00の夕食まで一休み。

夕食を終えて19:00から『Team Meeting』についての講義を受けた。

この講義ではチームミーティングのメソッドやそれぞれのチームミーティングのメソッドのメリット・デメリットについて学んだ。

20:00に講義が終了して3日目のプログラムは終了。

Day 4

レジデンシャルブロック最終日となる4日目は9:00までに朝食とホテルのチェックアウトを済ませて、9:00から『Nodiant』と呼ばれるウェールズサッカー協会がコーチエデュケーションに使っているテクノロジーについての講義があった。

Nodiantは様々な機能があり、講義で使った資料などの共有するオンラインプラットフォームや映像分析ソフトウェアの機能がある。どうやらウェールズサッカー協会とイギリスのソフトウェア開発企業が協力して現在改良に努めているとのこと。ウェールズ代表でも練習用の分析ソフトウェアとしてNodiantが使われているらしい。

1時間ほどでNodiantの講義が終わり、10:00から試合分析の講義。小グループに分かれてトッテナムvsマンチェスターシティのプレミアリーグの試合を分析。

グループタスクとして「グループでゲームモデルを作り、試合を観て次の試合でマンチェスターシティと対戦する想定で対戦相手分析を行い、ゲームモデルに沿ったゲームプランをする」というもの。

そして試合を観終わると約1時間ほどグループでディスカッションする時間が与えられ、どうやって対策するかを話し合った。

ランチを挟んで、午後からはグループで対シティをまとめたものを他のグループへとプレゼンした。

各グループでそれぞれ独自のゲームモデルからゲームプランを練るため、それぞれが様々なシティ対策を考えていることが非常に興味深った。ハイプレスをかけるグループもいれば、ブロックを組むグループもいた。どうやってボールを保持するかなども様々なアイデアが紹介されて「そういう捉え方もできるか」と勉強になることも多々あった。

プレゼンが終わると他のグループから「もしこれがこうだったらどうするの?」や「これもいいんじゃない?」というようなディスカッションを行った。

そしてウェールズ世代別代表アナリストからのケーススタディを絡めた同じ試合の試合分析の紹介があり、分析の講義は終了。最後に今後の活動の流れが紹介されて今回のレジデンシャルブロックは終了となった。

レジデンシャルブロック1を終えて

今回のレジデンシャルブロックを終えて感じたことは様々な指導者やサッカー関係者と意見交換やディスカッションして話すことで自分の凝り固まった思考を拡げることができたような気がする。どうしても普段の自分の活動では同じ人と接する機会が多くなるため、他の指導者とサッカーについて深く語る機会がないのだが、UEFA Aライセンスは様々な地域、国、環境、バックグラウンドを持った人たちが集まってきているので、様々な意見や考えを聞くことができて非常に新鮮だった。

自分のサッカーに対する価値観と違う考えをする人や異なる意見を持つ人と話すことによって、自分の考えや方向性を客観的に捉えることができるというのは大きな発見だった。意見が違うことは当たり前で逆に同じ考えを持っていることの方が少ない。どうしても自分と似たような考えを持つ人に擦り寄って行ってしまいがちだが、自分と異なる考えを持つ人の話を聞いて「そういう風に捉えることもできるか」という感情が生まれてくるし、「そういう考えもあるけど、やっぱり自分はこう思う」と対比して考えることもできるので、今回のレジデンシャルブロックは自分の頭の中を整理する良い機会だった。

またライセンスのコースで良いなと思う部分として「全員が新たなことを学び、スキルを高めて、ライセンスを取ろう」とする一体感があることだ。タスクによっては向き不向きがあるのではそこはグループでカバーしながらタスクを進めたり、UEFA Aライセンスの講師やチューターを務めるウェールズサッカー協会の方々も非常に熱心になって学びのサポートをする姿勢が印象的だ。

私も以前はそうだったのだが、ライセンスのコースというと、ただライセンスを取るために指導者が集まってきてあまり実用的ではない講義を受けるような印象がある方もいるかもしれない。しかし、実際にライセンスのコースに入ってみると、講師やチューターの方々はライセンスのコースを通じて、指導者に少しでも学び、指導力の向上に繋げるためにオープンに話してくれるだけでなく、様々な角度から最新のものを提供してくれる。毎回の講義では「まだまだ自分の知らないことだらけだな」と実感させられる。

そんか講師の方々の姿勢を体感してか、私もここで得た学びや発見、知識をなるべく多くの人に共有しなければならないという想いが沸々と湧き上がっている。現在は日本に一時帰国中だが、その期間に出会った方々には色々なお話を共有できれば良いなと思っていると同時に、noteなどでも共有していくつもりだ。

約3分の1のUEFA Aライセンスのコースが終わったが、ここから更に深い学びが用意されていると思うと楽しみである。


【お知らせ】
この度、7/14(日)の17:00から新橋にて『UEFA Aライセンスの内容』と『プレミアリーグから学ぶ戦術トレンド』についてお話しさせていただけることになりました。

7/14(日) 17:00~20:00 @新橋駅直結ダヴィンチ大会議室

この記事だけでは伝えきれないUEFA Aライセンスでの学んだことやイギリスで指導者・分析官として働く上で得た知見なども共有できればと思うので、ぜひ下記のリンクより予約していただけると嬉しいです。


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・蹴球カムリ @CymruJp
・木村暁 (個人アカウント) @chacha2645

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