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練習試合で膝スラをする6歳の少年達の話。

木曜日の15:30。いつも通りに木村の車の補助席に乗りアカデミー本拠地に着いた。僕がコーチを務めるU19は17:45から練習が始まるので、空き時間があった。監督も選手も到着していない。大学の課題もちょうど終わった頃で、何かとすることもなかった。

そこで、16:30から始まる同アカデミーのU7の練習試合を少し覗いてみることにした。

試合形式はGK無しの4v4で、腰の高さにも達しないミニゴールが設置されている。フルピッチの1/4を更に1/3にした極小コートなので、少し相手を抜いてシュートを打てば確実にゴールを決められる。従って、1分間に一回は必ずゴールが記録される。地域のお父さん世代フットサルの最後の数分間のようだ。

30分間ぐらいだろうか、ずっと見ていた気がする。サッカー的には何も学ぶことがなかったが、何故か見ていて面白かった。というか楽しめた。何故だろうか。それは、おそらく

「ゴールを決めたらとにかく膝スラで喜ぶ選手達」

が、いたからだろう。スコアなど関係ない。決めたらとにかく喜ぶ。コーナーまでいって必ず何かする。膝スラ以外にもクリロナやハーランドのポーズをバチッと決める。彼らは同世代の日本人選手より確実にサッカー技術では劣っているが、セレブレーション能力は圧倒的に高かった。そして、そのセレブレーションに費やす時間も長かった。戦術などの細かいことには興味はない。しかし、喜びを表現することには相当長けていたのだ。

僕自陣の小学生・中学生・高校生時代とも照らし合わせてみる。

コーナーフラッグに近寄って喜ぶ事が"普通"だっただろうか。
練習試合・公式戦など"関係無し"にゴールを喜べていただろうか。
そもそも審判・コーチは"喜びを表現"することを許容していただろうか。

僕の記憶では、審判からは笛を何度も吹かれ「早く戻ってください」と、コーチからは「次だよ次、切り替えろ」と言われるのが嫌で、ゴールを決めたら自陣に戻りながらハイタッチで少しだけ喜んでいた気がする。振り返ってみると「よくそれでサッカーを楽しめていたな。」とも思う。当時のコーチや審判に敬意を込めて言いたい。

「うるさいんじゃ、ボケ!」と。

僕は、その6歳児が膝スラで喜んでいるのを見て自身のコーチング手法を修正した。ゴールを決める為のStep1は、「ゴールを見ること」でもなく「良いファーストタッチをすること」でもない。

「ゴールを決めた後の喜び方を覚えなさい」

これだけで、日本が長く悩まされているストライカー不足が解消されるのではないか、とも思っている。

体感でしかないが、育成年代における「ゴールから試合再開」までの時間はイギリスと日本では圧倒的にイギリスの方が長い気がする。研究してみても面白いかもしれない。

ほぼ全てのチームが勝利後のダンスをするように。その楽しいダンスが勝利への執念を向上させるように。ゴールを決めた後の事を少し考えてみるだけで、何かが変わる気がする。



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