ソ連MSX物語⑫ゆけ!我が友よ、黄金の翼に乗って
1990年11月、父はKGB・ソ連国家保安委員の尋問を受けていました。場所はバクーの警察署の一室。
「貴様があのユダヤ人と昵懇の仲なのは解ってるんだ。庇い立てすると為にならんぞ。」
「私は何も知らんよ。」
父の20年来の親友ゲンナデはついにイスラエルへの亡命を決意、周囲で噂になっていたのです。父の担当する工場の副工場長はモスクワから派遣された「イタチ」とあだ名されるロシア人で、KGBの内通者であることは公然の秘密でした。この「イタチ」の密告によって父は窮地に立たされたのです。