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教室と大人世代をつなぐ  Vol.15 「ちょっと逆転の発想」

「宝の山」を逆手に取る

このコラムのVol.13で、「社会課題が集まる自治体は宝の山」と書きました。社会課題の解決にこそ新事業のタネがあり、企業はそれを探しているのであれば、企業側は十分にメリットを享受できるはずです。それならば企業に費用や人手などを負担してもらうことができるのではないでしょうか。それができれば、前回、お話しした「平等」問題を解決する糸口にもなると考えています。

仕様は企業にまかせる

一般に自治体は自らの予算または国から追加的に予算をもらってさまざまな事業を民間企業や団体等に発注しています。道路や水道工事などインフラ整備から街のプロモーション、関連するコンサルティングなど発注する業務は多岐にわたっています。これらは自治体が仕様をつくり、その仕様に沿った業務を実行できる企業が応札します。たいていは応札した中で一番、低い金額を提示した企業が落札します。落札価格が決まっているものもあり、その場合は、評価項目をあらかじめ定め、応札者にも提示しつつ、自治体が委託した第三者である審査員が採点し、もっとも内容のよい提案をした企業が落札します。このやり方はとてもいいのですが、自治体が仕様を決めてしまうので、これまでの自治体の発想以上のものは出てきません。そのためどこも同じような仕様になってしまっています。
そこで自治体は仕様を決めず、解決したい社会課題だけを提示するのです。企業には、その社会課題をどのように解決できるか、そのために費用や人手、期間など、どれだけの経営資源を投入するのかを提案してもらいます。

とはいえ、乗り越える壁は山ほど

ここまでの私の書きぶりでは、『自治体は仕様も決めず、解決したい社会課題を提示するだけで、費用も人も企業側が負担してくれる』、と思われてしまいますが、実際は自治体側の意識改革が伴わないと、すぐに話が頓挫します。
実は自治体による地域が抱える社会課題をプレゼンするイベントはすでに数多く実施されています。そこでは、「うちにはこんなに山のように社会課題があるんです!」と課題があることを自慢するプレゼンが続きます。私は何度もそうしたイベントに参加しました。なかには後日、自治体と担当者と面談できるサービスが付いている場合もあり、これまで10以上の自治体の方とお話ししました。
そこでわかったことは、ほとんどがプレゼンを担当した部署が管轄する社会課題に対して、直接的な解決策を提示してくれる企業や団体にしか興味がないということです。もしそんな企業がいたら、とっくに全国の自治体に営業をかけているでしょうし、多くの課題がすでに解決されているはずです。
1つの課題を解決するために、2つ、3つの課題を重ね合わせていったりする必要があります。自治体側は複数の課が協力し合わなければ解決できませんし、企業側も1社では解決できない部分は他社を交えて策を考えていくなどは当たり前。「風が吹けば桶屋が儲かる」くらいの発想の連鎖がなければ解決できないのです。


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