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【短編小説】 うんこをたべろ!

「僕を食べても美味しくないよ」
そう主張するかのように僕を見つめている。
ついさっきトイレで大きい方をしたばかりだ。
僕の体から出てきたそれは僕に向かって訴えかけている。
「でも・・・高志くんが食べろって言ってきたから」
僕はいじめられている。自分でも【このままじゃダメだ】と思うけど逆らうと痛い目を見る。
「小学生の君には難しいかもしれないけど、それは食糞って言ってしてはいけないことなんだよ。」
「でも高志くんが・・・」
僕は怖くて震えている。考えただけでどうなるのかが目に浮かぶ。
僕は涙で目の前が見えなくなっていた。
「時には仕返しも必要だよ?君は今まで我慢をし過ぎたんだよ。こんなに我慢したんだから一回くらい仕返しをしてもバチは当たらないよ」
僕は思った。
なぜ僕はこいつに慰められているのだろう。
そう思うとおかしくなってきて、いつのまにか涙も止まっていた。
「良い顔してるね。行ってやっつけちゃえ!」
僕は決心して一度だけの仕返しをするために高志くんの元へ向かった。
「おい良太、うんこしてきたんだろ?早く食えよ。」
そう言いながら取り巻きたちと笑っている高志くん目掛けて僕は初めて拳を振り下ろした。
初めてのケンカ。高志くんは僕よりも体が大きく、腕っぷしも強い。だけど僕は一度だけの仕返しだから頑張った。
どれだけ倒れても向かっていき、どれだけ痛い思いをしても立ち向かった。
そこに担任の先生がやってきた。
先生はカンカンに怒っているが僕は清々しい気持ちでいっぱいだった。
2人で職員室に呼び出されこっぴどく叱られた。
お説教も終わり2人で教室に戻る時、高志くんが言った。
「今までごめんな。お前なかなかやるじゃん」
そう言い、手を伸ばしてきた高志くんと握手を交わした。
初めて友達ができた瞬間だった。
「あっ」
僕は大切なことを忘れていた。
それを思い出し、急いでトイレへと駆け出した。
そこにはまだ流されていないあいつがいた。
「どうやら友達を見つけたようだね」
「うん、ありがとう。君のおかげで僕は自分に自信が持てたんだ。」
僕は流されていないそれに感謝の言葉を送った。
「いいかい?泣くことは簡単なんだ。でも笑うことって意外と難しいことなんだよ。君がさっきしたように難しいことをして達成できた時に笑えるんだ。君は勇気を振り絞ったから笑えたんだ。もし、これからも悩んだり立ち止まったりした時は難しい方を選択してみて。それを達成した時に笑えるから。」
そう聞き僕はまた泣いた。
君のおかげで友達ができた。でも君とはお別れをしなくてはいけない。
「ありがとう。」
そう言いながらレバーを大の方へと回した。

後日

あいつが最後に言った言葉を僕は忘れない。
なぜこいつに励まされているんだ?そう思った時の感情を思い出して僕はクスッと笑った。


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