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困ったときはお互いさま

こんにちは🌞ニシザワです👩
2023年2月20日、出入国在留管理庁がWebサイトで「現行入管法の課題」を公表しました。

表紙の次のページには「共生社会の実現 適正な出入国在留管理」の横に、「日本人と外国人が安全・安心に暮らせる社会を実現するため、外国人への差別・偏見を無くし、 人権を尊重することが必要。外国人にもルールを守り、許可された在留資格・在留期間の範囲内で活動してもらうことが必要。」と記載されています。

さらに読み進めると「帰国したくない」外国人を「送還忌避そうかんきひ者」と表現したり、「送還忌避によって生じている問題について」と題して、「仮放免者の逃亡事案が多発」「送還を中止せざるを得ないほどの送還妨害行為」などといった事例が数字で説明されています。


新宿区多文化共生防災事業

平時の社会的弱者は有事の災害弱者

CWS Japanは、これまでの災害支援経験を通して、「平時の社会的弱者は潜在的災害弱者でもある」と仮説を立て、2020年から首都直下型地震を想定し、都内で最も多国籍化が進む新宿区を対象に滞日外国人にフォーカスした調査事業を開始しました。

時を同じくして発生した新型コロナウイルス感染症の拡大は、公的支援にアクセスできない不安定な身分・立場に置かれている難民・移民の脆弱性ぜいじゃくせい露呈ろていさせました。2020-2021年にかけて実施した上記の調査事業やそのほかの活動による経験から、彼/彼女らは、日本語能力不足に加え、不安定な在留資格による就労制限や無保険状態、心身の健康問題、高齢化、地域社会からの孤立という問題を抱え、公的支援にアクセスできず、外からはその存在すらも見えにくいことが分かりました。

わたしたちは、コロナ禍を災害として捉え、より厳しい生活困窮こんきゅうと孤立状態に陥っている外国人にアウトリーチし、生活の立て直しのための支援を行うことにしました。

具体的には、新宿区において、公的支援にアクセスしにくい難民・移民に生活支援を行うことで、平時から外国人脆弱層や同国人コミュニティと信頼関係を構築することを目的としています。また、支援実施後の当事者の自助力向上のため、将来の有事の際に、当事者が生活圏内で助けを求めることができるような地域の社会資源(団体・個人・施設など)を平時から発掘し、それらの社会資源との関係性が構築できるよう両者をつなげる活動も今後実施したいと考えています。

外国人相談会

上記の事業の一環として、わたしたちは昨年から外国人相談会を新宿区内の教会で開催してきました。そして、先月の11日にも新大久保駅から徒歩5分の距離にある教会で、外国人を対象とした相談会を開催しました。

相談会では食料品、衣料、生理用品などの物資の受け取り以外にも、生活や法律に関する相談を受けることができます。食料品は地域内の外国人店主のお店の協力を得て調達しています。当日は、アジア、中東、アフリカ圏の方々が相談会を訪れました。

配布した食料品の一部 ©CWS Japan

このような相談会開催は、一時的な相談や物資提供の場になるだけでなく、外国人脆弱層との出会いの機会を創出する「エントリーポイント(入り口)」になります。

外国人相談会開催前に関係者に向けて説明をするCWS Japan職員 ©CWS Japan

フォローアップ支援

なぜ外国人相談会はエントリーポイントなのかというと、相談会で受ける多くの問題は、相談会内では解決できず、その後の個別フォローアップが必要だからです。

フォローアップ支援は、当事者を取り巻く複雑な現状把握を言葉や精神的なバリア、健康に関わる身体的なハードルなどを緩和もしくは乗り越えながら、一から行うため、時間と労力を要します。

フォローアップ支援の内容には、医療費や住宅家賃補助などの支援も含まれています。相談に来られる外国人は、心身の健康を害し、治療が必要であっても、在留資格の問題などによって無保険者であることもあり、医療サービスを受けることが困難な状況にあります。その際、病院に同行し、医療費の支給を行うことも想定しています。また、失業や在留資格の問題によって就業制限がある外国人生活困窮者で、住居を失うリスクの高い世帯に対して家賃補助を行うこともあります。

これらの活動は、その場しのぎの支援をして終わりではなく、外国人医療従事者・通訳を配置する地域内の医療機関と友好なパートナーシップを築くことを念頭に入れたり、地域内で外国人に住宅を提供している地主・オーナーに在留資格・日本の制度の問題などについて理解を求めるとともに、わたしたちのような支援者とオーナーの間で顔が見える関係を築くことも視野に入れることで、社会資源の醸成じょうせいを目指しています。

外国人相談会もそうですが、このフォローアップ支援も、CWS Japan単体で実施できるものではありません。そこには志を同じくする支援関係者、地域の人々・組織、外国人コミュニティなどの多くの方々の連携と助け合いが存在しています。

いつもCWS Japanに協力してくださる多くの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。

2023年2月11日の外国人相談会はCWS Japanとシャンティ国際ボランティア会(SVA)との共催 (中央:CWS Japan職員、右:SVA職員)©CWS Japan

共生社会は誰のため?

日本では、外国人人口が2015年から増加傾向にあります。その一方で日本人人口は減少傾向が続いています(総務省統計局調べ)。あなたのご近所さんが外国人ということも、珍しくなくなってきています。

少し前に名古屋入管に収容中だったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんが死亡した問題によって廃案になった入管法改正案ですが、現在、その骨格を維持した法案を、政府は国会での成立を目指しています。

日本人と外国人が安全・安心に暮らせる社会を共生社会と定義するのであれば、「仮放免者の逃亡事案が多発」「送還を中止せざるを得ないほどの送還妨害行為」といった、外国人が危険な存在であるかのように表現された内容は、政府が外国人にとっての安全・安心を真摯に考えている姿勢を読み手がくみ取ることが難しいものになっています。

今回の件に関して、CWS Japanも加盟している特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)が入管法改悪反対の署名を集めています。以下のリンク▼からご覧ください。

以下のリンクでは、Q&A形式で以下のような疑問について、非常に分かりやすく説明されています。

「収容されたりしている外国人が、さらに刑事罰を受けるようになるってほんと?」
「国外退去になるのは、「犯罪をおかした」からじゃないの?」
「国外退去(退去強制)が出されているのに、なぜ自分の国に帰らないのですか?」
「収容所って、要するに外国人向けの刑務所ですよね?」
「再提出される法案でも、難民のひとを強制送還するってほんと?」


災害時に支援の手が届かず取り残される人々のいない社会

CWS Japanは「災害時に支援の手が届かず取り残される人々のいない社会」の実現のために取り組む団体です。災害は日本人・外国人に関係なく、あくまで平等に被害をもたらします。ですが、その後の支援へのアクセスのしやすさは必ずしも平等ではないと思います。

例えば、支援へのアクセスが難しい人のなかには、足腰が弱く、自ら避難することができない高齢者がいます。避難場所で身の危険やリスクを感じやすい女性や性的マイノリティがいます。正しく情報を処理できずパニックに陥りやすかったり、自らを守る行動をとれない身体的・精神的障がいを抱える人がいます。妊産婦・乳幼児のいる家庭がいます。アレルギーのある人や宗教上の慣習から特別な配慮が必要な人がいます。引っ越してきたばかりで、周囲の土地も人も何も知らない人がいます。

これらは、ほんの一例ですが、日本人・外国人に関係なく当てはまる可能性がある特徴だと思います。みなさんの周囲に当てはまる人がいらっしゃいますか。もしくは、自分が該当するという人がいらっしゃるのではないでしょうか。

相手や自分が外国人であるか否かに関わらず、、、災害があった時に、誰かに手を差しのべ、自分も手を差しのべられる。そうやって「困ったときはお互いさま」と助け合う。そのようなコミュニティの文化が日本で醸成される。CWS Japanの取り組んでいることがそうした文化醸成の一助になればと思います。

(文:プログラム・マネージャー/広報 西澤紫乃)


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この活動の一部は、赤い羽根ポスト・コロナ(新型感染症)社会に向けた福祉活動応援キャンペーン 外国にルーツがある人々への支援助成案件として採択され、実施しています。


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