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レジリエンスとは、強靭?屈強?頑強?

こんにちは🌸広報のニシザワです💁‍♀️

少し前の話になりますが、CWS Japanは、2021年4月にインドネシア東ヌサ・トゥンガラ州に上陸したサイクロン・セロージャの被災者支援を2022年1月まで実施しました。

支援を終えて、時間がしばらくたったタイミングで、対象地域にてわたしたちが実施した活動がどのようなインパクトを生み出しているのか、または残しているのかを調査しに現地に行ってきましたので、そのご報告をさせてください📢


事業概要

被災者支援事業では、次の3つの活動を実施していました。

  1. 危険な構造物の下や屋外などの劣悪な環境下で避難⽣活を送っている被災世帯に対し、衛⽣⽤品、⽣活⽤品、そして⼀時的な避難場所として緊急シェルターキット(テント⽤品)を提供すること。これらの物資の配布と同時に、新型コロナウイルス感染症やそのほか感染症予防のための啓発を⽬的としたセッション(衛生促進セッション)を各世帯にて実施しました。

  2. 同災害により汚染した井戸を修復すること。1、2の活動を通して、被災後の劣悪な環境による感染症などの⼆次災害を予防することを目指しました。

  3. さいごに、どのように災害が発⽣したのか、また地域における災害のリスクはどこにあるかなどへの理解を深めるために、災害リスク評価を実施し、ハザードマップを作成したのち、防災アクションプランも策定することです。


物資支援の様子 ©CWS

活動結果

  1. 最終的に当初計画よりも327世帯多い1,011世帯に各物資を届けることができました。また、事業終了時の裨益者へのインタビューの結果から、衛生促進セッションを受講した被災家族684世帯の内80%(547世帯)が、よりよい衛生習慣に関する知識が増えたと回答しました。

  2. 事業終了時には、当初計画通り対象村6村にある合計60基の井戸が修復・清掃され、684世帯が清潔で安全な水を利用できるように改善されました。なお、井戸維持管理委員会メンバーとなった600人が、主に「井戸維持管理委員の責任とは」「井戸の適切な使用方法」「日常の保守管理方法」「井戸維持管理における良い/悪い事例」等を学ぶトレーニングに参加し、事前・事後テストを受けた人の80%が井戸の操作やメンテナンス方法について正しい知識を得て、理解を深めることができました。

  3. 対象村の行政職員、コミュニティ・リーダー、コミュニティ・メンバーからなる被災コミュニティの主要メンバー合計180人が、災害リスク評価、ハザードマップ作成、防災アクションプラン作成のプロセスに参加し、最終的に6村それぞれで防災アクションプランが作成されました。その結果、水災害に脆弱な地域や避難するための安全な地域が見える化され、被災コミュニティ内でこれらに対する理解が深まり、また防災アクションプランが策定されたことで、近い将来発生しうる災害に対し、同じような被災を回避できるように意識変容を促進しました。


対象コミュニティ内で災害リスクの危険な場所について話し合っている様子 ©CWS

事業後しばらくのインパクト

支援終了後からおよそ半年たったタイミングで実施した現地調査では、3番目の防災支援活動において、CWS IndonesiaとCWS Japanが連携した支援の効果を確認すること、そして活動を展開する際に、最も脆弱な人々の巻き込みができていたかを確かめることでした。6つの村で地理的などの条件が違う場所を選定し、3つの村を回り、インタビュー調査を行いました。

脆弱な人々の巻き込みや彼らの声を防災アクションプランに反映することは、3つの村において行われていました。計画の策定段階だけでなく、計画の実行においても彼らの巻き込みができるようにしており、事業終了後も継続して、彼らの参画が確保できるように、彼らに対しても村の防災に貢献できるような役割が割り当てられていました。

脆弱な人々の視点に配慮して決められたことの例としては、避難経路の特定、一時避難場所・場所の特定、トイレの設置などが挙がります。
継続的な村の防災活動における彼らの役割には、植林や灌漑の補修、高床式住居の建設に必要な資材の収集などの人手が必要な作業への貢献、障がい者・高齢者・妊産婦・子どもに関するデータを提供・収集し、村の行政に提供することなどです。

モデスタという支援対象村の女性の裨益者は、CWSの事業で学んだ最も重要なことは何ですか?という質問に対して、以下のように答えてくれました。

”CWSの活動に参加して、家畜の避難経路の計画や、避難時の行動が重要であることを学びました。特に、自力での移動が困難な障がい者が遠方に避難するための安全な家(高床式住居)の提供について話し合いました。また、私の家は比較的安全なので、近くに住んでいる人の緊急避難についても話し合いました。”

村行政にも勤めているモデスタさん ©CWS

ヘンドリックという裨益者は、同じ質問に以下のように回答しました。

”災害発生時に、河川の上流と下流の住民の間で洪水リスクのコミュニケーションをとることの重要性を理解し、強化することです。”

農業を営んでいるヘンドリックさん ©CWS

この活動を共同で実施した現地パートナー団体からは、緊急支援フェーズにおいて防災活動を支援の枠組みに入れることに関して、次のような意見を共有してくれました。

”防災支援に関しては、従来、緊急支援を必要とするフェーズではなく、平時の方が資金調達が容易です。食料や医療品などの命をつなぐ活動の方が喫緊のニーズと捉えられるため、緊急時には、防災に資金を割いてくれるドナーは少なく、本格的な防災を災害の記憶が鮮明なときに実施することが困難です。実際に被災した人々は、災害の記憶が薄れ、日常生活に戻った平時には、あまり防災活動にに関心を示さない傾向があります。ですが、今回CWSと実施した防災支援では、災害直後に近いということもあり、裨益者は非常に熱心で真剣でした。”

事業期間で作成していた防災アクションプランの進捗度合いは、村ごとに若干ですがことなることがわかりました。計画の実行が最も活発だった村は、洪水リスクからコミュニティを守るためにチークの木を植えたり、毎年この地域を襲う台風の被害を減らすために収穫のタイミングを調整したりと、以前から自発的に防災活動に取り組んでいる村でした。

他方で、計画の進捗が鈍い村は、これまで州の現地政府のイニシアチブによって防災活動が進められ来ておりました。村のメンバーは、防災アクションプランの実行に際し、報酬や対価がないことに不満を感じ、自主的な防災活動が重荷になっているようでした。

レジリエンス?

なぜ、村ごとでこのように防災活動へのモチベーションがかわってしまうのか?また、CWSは防災活動を通して、災害にレジリエント(強靭きょうじん)な地域をつくることを、現地パートナー団体と連携して進めてきましたが、対象地域の人々にとっての「レジリエンス」とは何なのか?が、CWS IndonesiaとCWS Japanのチーム内で疑問として挙がってきました。

このような問いの答えを模索すべく、事業終了後、約1年後のタイミングでもう一度、現地を訪問し、さらに詳細なインタビューを実施することになりました。

現在、調査結果は分析・取り纏め中なのですが、インタビューをしながら、印象的だったことを紹介します。

まず、「レジリエンス」という言葉そのものが、インドネシアでは比較的最近に入ってきた言葉のため、そのまま使うのではなく、「レジリエンス」を違う言葉に置き換えたり、比喩を使ったり、どのような文脈で使われるのかを説明するところから始めました。日本ではよく「強靭な」と言い表したり、「しなやかな強さ」と表現されたりする場面が多いように感じます。現地インタビューのなかでは、固い石のよう?ゴムのよう?強い?穴が開かない?割れないということ?など色んな解釈が飛び交い、この説明だけで、1時間くらいかかったインタビューもありました。

インタビューの結果、主な傾向として、以下のような違いが浮かび上がりました。
州の政府に対して、レジリエンスとは?と聞くと、大体がコミュニティに主語が置かれていて、コミュニティのエンパワーメントを重視していました。コミュニティの人々が災害リスクへの理解をしていて、防災の重要性について意識啓発がされている、防災に関する教育の機会がある。そのような状態が災害にレジリエンスであるという意見が挙がりました。

その一方で、コミュニティの人々に聞くと、レジリエンスとは防波堤をつくったりなどハード面での強化を強調する回答が多い印象を受けました。ただし、興味深かったのは、より災害にレジリエントになるために取り組むべきことついて聞くと、高齢者や障がい者への配慮やエンパワーメント、食料安全保障の改善、貧困といった社会経済的脆弱性が挙げられたことです。

この記事を読んでいるみなさんにとって、災害にレジリエントな地域とはどんな地域でしょうか?

個別インタビューの様子。現地調査はCWS IndonesiaとCWS Japanのチームで実施しました。 ©CWS

現在、調査の結果は分析を進めているところですので、今回の報告はここまでになりますが、今後の調査の正式な結果の報告を楽しみにお待ちしていただけると嬉しいです。

(文:プログラム・マネージャー/広報 西澤紫乃)

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