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日本で外国人材は防災の担い手になれるのか?|多文化共生×防災事業

読者の皆さまこんにちは☀牧です👩🏽
私は都内に住んでいるのですが、最近地震が続きました。先日は、2日続けて寝ている間に地震を感じ、確認したところ、千葉・神奈川・福島沖で発生していることが分かりました。年始には能登半島で大規模地震が発生していますし、関東地方でも身体に感じる地震が続くと、30年以内に発生が予測されている首都直下型地震を意識してしまいます。


対面がダメなら動画を作ろう!|コロナ禍で始まった多文化共生×防災事業

CWS Japanでは過去の災害支援の経験から、災害弱者に陥りやすい人々にフォーカスし、中でも在日外国人の脆弱層にターゲットを絞り込んできました。

まずは、私たちの事務所を置く新宿区を対象地域として決めました。運よくトヨタ財団からの助成決定がきっかけになり、多文化共生×防災事業の取り組みが始まったころ、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(2020年〜)が重なりました。プロジェクトはその影響を大きく受け、調査活動は対面が許されず、すべてオンラインでインタビューを行いました。

その時に行った調査から、日本国内で最も多国籍な新宿区において、日本人住民との不十分な交流による外国人住民と地域コミュニティとのつながりの欠如や防災意識の低さに気づかされました。

私たちは、そのような緊急事態下で「大久保多文化共生×防災バーチャルツアー」という動画を、早稲田大学をはじめとする都内の日本人学生や留学生とのコラボにより(まさにメンバー自体が多文化共生!)制作しました。

当初の計画では、多国籍な大久保地区をフィールドに"多文化共生防災まち歩きツアー"を開催するはずでしたが、学生からの提案により、対面での実施からバーチャルツアーに変更しました。

ネパール人のJiwanさんと、地域の防災訓練に参加して気付いたこと

その動画に出演してくれた一人に、ネパール人のレストラン(ソルティカージャガル)店主Jiwanさんがいます。

彼との出会いは2020年に行った調査でインタビューに協力してくれたネパール人女性から紹介されたのがきっかけでした。彼は元留学生で日本在住歴も長く、大久保住民で日本語が上手で一目置いていました。これまでにも私たちの活動にさまざまな面で協力してもらいましたが、彼からも何かと頼まれごとが多く、今では、彼の店先で日本語教師による出張レッスンを週に1回行っています。

その店先レッスンにJCOMが訪問し、彼にインタビューしたのが「首都直下地震 その時、新宿は」という番組です。

昨年12月、私は彼と大久保地区の防災訓練と避難所運営訓練に参加してみました。同地区では、防災訓練に先立って夜間に防災まち歩きが行われました。それは、消防署や消防団の方々と一緒に地域内を歩き、消火器の設置場所を確認するという地域行事でした。

その時、参加者の平均年齢がかなり高く、外国人住民に対する不満の声が聞こえてくるのが気になりました。もちろん、その活動に外国人住民は一人も参加していませんでした。「これは早く何とかせねば」と思い立ち、その地域に居住するJiwanさんを防災訓練に誘い、一緒に参加することにしました。

消火器訓練に参加する様子©CWS Japan
AED訓練に参加する様子©CWS Japan

週末の朝、まだ寝ていた彼を電話で起こし、集合場所の公園に行ってみると、幼児を連れた家族連れあり、町会の女性たちによる炊き出しありと大変賑やかで和やかな地域行事となっていました。消防署員の説明から始まり、防災倉庫の見学、可搬ポンプの使い方、放水訓練、AED、消火器訓練などがありました。意外にも彼が積極的にそれらの訓練に熱心に参加し、機材について質問をしていたのに感心させられました。

また、その次の週末に地域の小学校で開催された避難所運営訓練に一緒に参加し、仮設トイレの重い機材を率先して運ぶ様子を見て、思ったとおり、貴重な地域の力として彼のような存在の必要性を痛感しました。この時の訓練でも、彼以外に外国人参加者は見かけませんでした。

新宿区の住民基本台帳によれば、新宿区の人口の約13%が外国人であり、その内89.9%が生産年齢人口で、それは日本人の同年代の割合を超えています。それに対して、日本人住民の21.3%が65歳以上の高齢者であることを考えると、数字から見ても若い外国人口は貴重な地域の担い手と言えるのではないでしょうか。

外国籍だと地域の消防団に入れない?

参加した防災訓練も避難所運営訓練でも配布資料や掲示のすべてが日本語ですし、運営メンバーも全員日本人という状況の中で、多国籍タウン大久保が首都直下地震に襲われた時のことを考えると、運営側に外国人のリーダーを配置する必要性を感じました。

そんな時、新聞の折り込みに東京消防庁の広報紙が入っていたのを見つけると「消防団員募集!」の見出しがありました。入団条件には

・18歳以上の健康な方
・消防団の区域に居住、勤務又は通学している方

とあり、どちらもクリアしていたので、東京消防庁と地元の消防署に問い合わせてみると、「外国人は日本国籍であれば入団できます」という回答でした。どうやら消防士👨🏽‍🚒や公務員も同様で、日本国籍が必要なようです。納得いかないのが、入団要件には国籍条項は明文化されていないことです。「これって他国でもそうなんだろうか?」と疑問に思いました。

ただ、「でも、災害時支援ボランティアだったら普通救命講習を受講すれば外国籍でもできますので4月に説明に伺います。」と電話口で言われ、少し希望が見えました。

災害は人種を選ばずに襲いかかり、被災者は国籍を問いません。しかし、救援者側の国籍は問われる現実に、これからの災害大国日本の危うさを感じずにはいられません。今、目の前に起こっていないことへの備えである「防災」に関心を持つことは日本人にとっても課題です。CWS Japanとしてできることは、彼のような有能な外国人材とつながり、平時からの協働を通して、信頼関係を築いていくこと。そして外国人材が地域の担い手として、高い潜在能力を持っていることを地域社会に示していくお手伝いから始めています。

(文:ディレクター 牧由希子)

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