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わたしの読書感想文―社会課題の自分事化

こんにちは🙌広報のニシザワです🤓
あっという間に9月に入り、お盆休みも夏休みも過ぎ去ってしまいましたね。
世間は秋めいてくるかと思いきや、相変わらずのむし暑さです💦9月も夏バテに注意!なんていうニュースを見ました。わたしが一番好きな季節は秋なので、年々秋が短くなっているのを悲しく思っています。

さて、夏休みといえば、読書感想文📖ですよね(突然!)。本を読むのが好きなわたしでも、宿題として強制的に課される読書感想文は好きではなかったのですが、何十年かぶりに隙間時間で読んだ(本ではないのですが)色んな記事に対しての感想文をここにしたためたいと思います。

皆さま、温かい目と広い心でお付き合いください。



社会課題との距離

社会課題と自分との間に、物理的な距離、時間的な距離、文化的な距離などさまざまな軸の距離があるように感じるときがあります。

NPO/NGOというイシュードリブンで課題解決が存在意義である組織に所属していても、本当に本当の自分事化ができているかと問いかけるタイミングが出てきます(個人差あり)。その課題に対して自分に何ができるのか。自分が対策を講じることに個人としてどのような意味があるのか。

「地球がやばいことになっている」

例えば、気候変動を例に考えてみたいと思います。気候変動が災害の頻度を上げ、また発生する災害を激甚化している要因であるように、一人の地球市民としてだけではなく、気候変動は災害対応や防災支援をする団体としても重要なテーマです。今年の夏は35℃を超える猛暑日を記録した日が続いています。9月から11月にかけても、エルニーニョ現象によって赤道付近で積乱雲の活動が非常に活発となり、大気の温度が高いうえ、地球温暖化の影響も加わって、日本付近は暖かい空気に覆われやすい見込みと気象庁が発表しています[1]。まだまだ2023年の夏は続くようです。

最近こんな記事を読みました。

温暖化ガスの削減費用に加え、生物多様性の損失なども貨幣換算した全世界の気候変動にかかる「総費用」は10~99年で46兆~230兆ドル(約6700兆~3京3000兆円)。最大だと22年の世界の国内総生産(GDP)の2年分以上に相当する。

日本経済新聞, 「気候の時限爆弾」実感した8月 コスト3京円の衝撃, 2023年8月28日.

と分析した記事でした[2]。記事では、パリ協定の達成はこのようなリスク回避に繋がると続きます。都市部で暮らし、団体職員として生活をしている一個人としてはなかなか危機感を得にくい壮大なスケールの数字です(わたしだけかもしれませんが)。

少しのポジティブな展望が共有される一方で、世界各地で山火事や熱波など異常気象が観測されるようになり、多くの人々が被害にあっているのも、やはり事実です。日本でもいたるところで熱中症患者が救急車で運ばれています。気候変動の影響がこんなに顕著になって、やっと「地球がやばいことになっている」と感じる人もでてきたのではないでしょうか。でも、これだと「地球」がやばい、であって、被害にあっていない人は「自分」がやばい、にはまだ落としきれていないですね。

矛盾に気づいていく消費者

気候変動対策を取り巻くプレイヤーは、パリ協定で合意した各国政府だけでなく、企業も入ります。企業が脱酸素化・カーボンニュートラル経営推進のための努力として、さまざまな取組をしています。ユニクロやジーユーを傘下に持つファーストリテイリングは、温室効果ガス排出量削減への努力をするという方針のもと、省エネルギーと創エネルギーの組み合わせた店舗における温室効果ガス排出量削減への取り組みを実施しています。例えば、今年4月にオープンした前橋南インター店は従来のユニクロのロードサイド店と比較して、さまざまな省エネルギー技術を採用することで、照明器具や空調設備など、店舗における消費電力を約40%削減することができると想定しています[3]。

気候変動を抑制する森林の保全のために、「適切に管理された森林」に由来し、厳選された審査のもとで認証されたエコな紙を使用することを心がけている出版社もあります[4,5]。2021年1月に発表されたWWFの報告書によると、2004年から2017年までの間、世界24カ所で4,300万ヘクタール以上の森林、つまり日本の1.2倍にも匹敵する大きさの森が消失したことが明らかにされています[6]。インドネシアのスマトラ島中部に広がる自然の熱帯林は国立公園にも指定されていて、トラやオランウータンなどの野生生物も生息する希少な場所です。しかしその周辺の森林は製紙原料となるアカシアやパーム油を生産するためのアブラヤシのプランテーション開発のために減少しています。

このような情報が普及され明るみにでることで、従来、出版するコンテンツの中身やデザインを中心にしていた企業が、コンテンツの届け方の細部にまで消費者の目を意識するようになっています。「みんなで気候変動対策に取り組もう!」という紙の記事が、どこかわからない土地でバッサバッサ切られている木材でできているとわかれば、オーディエンスは明らかに矛盾を感じ得ずにはいられなくなるでしょう。それが不当に安価に雇用された労働者によって、と加わればエシカル消費にアンテナの高いオーディエンスはもう購入しなくなるでしょう。ファッション産業が、石油産業に次ぐ世界で2番目に環境を汚染する産業という情報が耳に入れば、企業がなぜそのような努力をするのか、生産する衣料や取り扱うブランドにどのようなメッセージや付加価値をつけようとしているのかが見えてきます。

ガソリン車よりはるかに環境にやさしいと謳われている電気自動車(EV)も素晴らしい大胆案として評価されている一方で、実はEVはテールパイプから排気ガスを排出しない代わりに、タイヤ汚染という別の問題を生んでいるということが分かりはじめています[7]。すべての自動車がそうであるように、タイヤは常に舗装道路と擦れあい微粒子をだしていますが、EVのモデルはより重く、より早くなっているため、この微粒子を多く発生しているといいます。 この微粒子が空気中に浮遊し、水路に流れ込み、人の健康や野生動物たち危害を与えます。舗装されていない道路を運転するときの方が、大きなタイヤの粒子を発生させる傾向があります。ここにも、環境問題に関心の強い消費者が抱えそうな矛盾点が浮かび上がってきます(そもそも環境問題に関心に強い人は自動車を保有していないかもしれませんが)。

気候変動とジェンダー不平等

こうやって、日々自分が手にするものをベースに考えると気候変動対策も少しずつ自分事化されていくかもしれません。でも、わたしの場合、これでもなんだか「自分」がやばい感が薄い(どれだけ当事者意識低いんだ!)。そんなわたしが、気候変動という課題がグッと身近に感じるようになったのは、気候変動対策を間違えれば、ジェンダー不平等を拡大する危険性あるということを知った時でした。

「気候変動対策がジェンダー不平等を拡大する危険性」という論文に以下のことが書かれていました。

「気候変動、環境および災害リスク削減」をテーマに掲げた、第66回国連(UN)女性の地位委員会が、2022年3月25日に閉会した。委員会では、未成年者から成人まで幅広い年齢層の女性たちが気候変動による不利益をより被りやすい状況にあること、持続可能な開発を実現するうえで女性たちが果たすことになる中心的役割が確認された。

委員会の主張は事実であり、重要な意味を持つ。しかし、国際NGOオックスファムが発表した新しい報告書は、この課題に立ち向かうためにはケア労働に焦点を当てなければならないと主張する。そうでなければ、気候変動とジェンダーの関係をめぐる問題への取り組みは、ジェンダー不平等を解消するどころか、固定化することになりかねないからだ

ジェームズ・モリッシー他, 気候変動対策がジェンダー不平等を拡大する危険性, 2023年8月2日

 ここで述べるケア労働とは、生命・共同体・環境の回復と維持のための労働や育児、介護のことで、有給や無給を問わず、入浴・食事の世話、精神面における健康への配慮などとそれに付随する間接的活動である調理、掃除、買い物などを含んでいます。論文は以下のように続きます。

気候変動によって必要とされるケア労働の量が増える。たとえば、異常気象が頻発すると、怪我や疾患、栄養失調、精神的苦痛に見舞われる人が増加し、ケア労働の必要性が増す。

第二に、気候変動によってケア労働の提供がより困難になる。たとえば、ケア労働者が飢餓や病気、身体の痛みや精神的なストレスに苦しんでいれば、ケア労働に従事することができなくなる。さらに、異常気象の影響で、学校や医療機関、水道や衛生の設備といったケア労働を支えるインフラが混乱しかねず、その結果、ケア労働の提供が難しくなる。

第三に、気候変動によって、既に存在するケア労働の格差が拡大する恐れがある。(中略)男性が不在の地域に家父長制が根強く残り、女性が共同体の所有する資源を十分に利用・管理できないとなれば、女性世帯主の世帯は生産活動の継続がいっそう困難になる。

ジェームズ・モリッシー他, 気候変動対策がジェンダー不平等を拡大する危険性, 2023年8月2日

やっと「じぶんごと」

わたしが実体験として得てきた教育や経済的機会、何気ない会話のなかで敏感に感じてしまうジェンダー格差や正式にジェンダー格差の著しいと認定された日本(2023年6月21日発表された世界経済フォーラムの各国の男女格差の状況をまとめた2023年版「ジェンダーギャップ報告書」によると、日本は男女平等の達成度合いで、146カ国のうち日本は125位。韓国は105位。中国は107位。最下位はアフガニスタン。)のことなど[8]、これ以外にも関心を寄せているジェンダー問題や日本特有の課題が頭をよぎり、これは日本に住んでいるわたしにとってもただごとではないと思いました。

近年では、このような社会課題の当事者意識化や問題提起は、カーボンゼロネーティブ世代と呼ばれるような若い世代の間ではごく自然にできています。

モデルの小野リリアンさんは環境問題に関心を持ったのは7,8歳の頃で、ある少女が1992年の国連地球サミットで、地球の環境破壊をやめるように訴えたのを知ったのがきっかけだったそうです[9]。この少女のようになりたいと思ったと。その後、彼女が環境活動家として情報発信をライフワークにし始めたのは2019年に開始した「低炭素な」世界一周旅。あるとき自分のCO2排出量を計算したところやばい結果が出たのを機に、飛行機を使わずに世界の研究者や環境活動家に会いに行くことにしたのだそうです。

社会課題に知ってる顔と名前がついてきた

わたしは自分がカーボンゼロネーティブ世代に入るのかわかりませんが、彼女のエピソードに共通点があるように感じました。

まず一つは、社会課題解決のために積極的に活動している立場にあっても、それまで知らなかった衝撃的な事実に直面することがあるということです。それも不都合な真実に。わたしの場合は、気候変動がもたらすのは地球温暖化の危機だけにとどまらず、生物多様性を損なわせるだけでなく、対策を間違えれば、マイクロプラスチックを蓄積させ、ジェンダー格差を悪化させるという事実でした。関係ないと思っていたことが巡り巡って、突如、目の前に現れた感覚です。「やっほー!ずっとここにいたけどね」と。

もう一つの共通点は、自分のロールモデルとなるような存在、また自分のちょっと先の未来を投影したような人物や人物像を見た時に主語が「自分」になるという現象です。わたしは、将来または現在、気候変動の影響を受ける統計的な数値で表される「n人」の女性のなかに、日々CWS Japanの事業のなかで一緒に働いている現地パートナーの仲間や、裨益者の女性たちを見た気がしました。また、大学生の従姉妹や小学生の姪っ子、そして将来のいるかもしれない自分の子どもや家族の姿を見たような気になりました。その「n人」の女性像に一人一人の名前をつけることができるような感覚です。そのなかには、もちろんニシザワシノも入っています。

何気ない会話がきっかけで

どの社会課題でも自分事化できるチカラが必要ですが、それを身につけるのは少し時間がかかる場合もあります。なので、一番のおすすめは自分の興味関心や素朴な疑問を気軽に共有しあえる人やコミュニティを見つけることかなと思いました。

実は前述したEVへの矛盾点は、親しい友人との会話がきっかけで知りました。自動車を保有しないわたしはその友人がいなければ、そのような矛盾点の存在に気付くのは、おそらくもう少し後になることだったでしょう。

もちろん、そんなことを話せる知人をいちから作るというのも人によっては、とてつもないエネルギーを要することかもしれないので、その場合は、まずは推しの活動家を探すとか、NPOのインスタをフォローして情報が集まるようにするというのでも大きな一歩。わたしは何ごとも無知の知から始まると思っています。




貴重な時間を使って、ここまで読んでいただいた皆さま、気づきましたでしょうか?

もはや、感想文ではなくなってしまっていたことを🙂

駄文にお付き合いいただきありがとうございました。

(文:プログラム・マネージャー/広報 西澤紫乃)

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<参考文献>
[1] NHK, 気象庁3か月予報 9月以降も厳しい残暑 “夏バテ”に注意, 2023年8月22日.
[2] 日本経済新聞, 「気候の時限爆弾」実感した8月 コスト3京円の衝撃, 2023年8月28日.
[3] 株式会社ファーストリテイリングウェブサイト, 気候変動への対応, 2023年4月28日.
[4] 株式会社ハースト婦人画報社ウェブサイト, Sustainability, アクセス日2023年8月27日.
[5] 合同会社コンデナスト・ジャパンウェブサイト, コンデナスト・ジャパンが、国内で発行する雑誌を FSC(Forest Stewardship Council®)認証紙へ移行。『VOGUE JAPAN』『GQ JAPAN』『WIRED』日本版、 『VOGUE Wedding』が、この秋からもっとサステナブルに。 コンデナスト・グローバル・サステナビリティ戦略とも連動,2020年10月2日.
[6] WWFジャパン, 【動画あり】「森林破壊の最前線」最新報告書を発表, 2021年1月28日.
[7] クーリエ・ジャポン, 地球にやさしいはずの電気自動車が「別の公害」を悪化させている, 2023年8月27日.
[8] 朝日新聞デジタル, 男女平等、日本は世界125位で過去最低 ジェンダーギャップ報告書, 2023年6月21日.
[9] 日本経済新聞, 主戦場はインスタ モデルが届ける低炭素な生活, 2021年11月28日.

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