見出し画像

内水面制度改革の各議論ポイント:遊漁料設定(案)

前回の記事で、制度改革の基本骨子として漁協+民間組織、をやりやすい形にする提案をしました。
これは「専業漁師でなく個々人の生計には関係ない(海や農業と異なる)」組合員で構成された、内水面の漁業協同「組合」では、リスクをとれない(①必死でやるインセンティブや切迫感がない ②複数人の合意制で地域対立起こしてまでやらない)という根本原因があると考えているためです。

ただ、これ以外にも既存制度で問題だと思うことが複数あるので、ここで記載していきます。

遊漁料の設定が制限大きすぎる

内水面漁協は、都道府県知事より公共物であるべき川魚等を権限付与対象地域で優先的に獲る漁業権を付与されていますが、公共物で漁協が私物化してはいけないので、漁協組合員以外も川魚等を獲れるように、運営費で必要な遊漁料払ったら決められた獲り方であれば組合員じゃない遊漁者(=釣り人)、も魚獲れますよ、となっています。

ただ、遊漁料はあくまで内水面漁協に義務付けられた「増殖義務」があるので、組合員の賦課金・行使料(毎年払う組合員会費みたいなもの)+組合員以外の遊漁者の遊漁料 で増殖費用分が賄えるぐらいの遊漁料に設定してね、それでトントンになるぐらいにしてね、という形なってます。
また、組合員以外は遊漁料100万円払え、と抜け穴的に遊漁者を排除することができないようにも決められています。

そこの根拠になっている法律が以下です。

■漁業法 第百七十条第五項
  都道府県知事は、遊漁規則の内容が次の各号のいずれにも該当するときは、認可をしなければならない。
  一 遊漁を不当に制限するものでないこと。
  二 遊漁料の額が当該漁業権に係る水産動植物の増殖及び漁場の管理に要する費用の額に比して妥当なものであること。

ただ、ここら辺からが曲者で、理想としてはそうですね、と。
でも組合員はサブスクみたいなものですが、遊漁者は日券利用者は来るかどうかわからないし、年券利用者も今の車社会ではより釣れる川にいくので市場原理が働いている=収入読みにくいわけです。

また、「不当に制限」の法が作られた時期が内水面漁業制度の背景で書いたように、車がなく外部から遊漁者来ない、地域の組合員と非組合員がほとんどの時期でした。より魚のいるところに車で行ってしまう=競争のある市場原理、が無いわけですね。

でも、行政(ここでは権限付与する都道府県行政)は、法律の不当制限や漁場管理の費用妥当性、ということを説明しないといけないプレッシャーにさらされるので、ルールを作ってしまうわけです。

具体的な事例としては、
1)ある都道府県では、「遊漁を不当に制限」しないように、遊漁料は、組合員賦課金・行使料の1.5倍以内にしないといけない(組合員賦課金が年5000円であれば、遊漁料は7500円以内)
2)ある都道府県では、遊漁料計算の計算式が過去3年間の増殖実績+増殖管理費用推定+組合員行使実績+遊漁券発券実績+漁場利用推定、という計算式で算出。ベースは過去実績ベースなので、理想的にいくら必要、なフォーマットではない。←3年毎理事交代の組合はよくわからずそのフォーマットに沿って今まで通りで対応。
等聞いてます。
さらに、遊漁料を上げようとしたときにも、事例として
3)近隣漁協と料金差が大きくなるので都道府県行政からNG出た
4)都道府県用意の計算式で計算したら現状料金で運営出来るということで認可されなかった
5)消費税上がった分上げたかったのに認可されなかった
等々。。堀り起こせばもっと色々出てくるかと。

ただ、ぶっちゃけ今の資源管理は、大部分は自然河川を利用した管理釣り場です。(成魚放流して無制限持ち帰りしていたら釣られきって自然増殖にほとんど残らない。当然そうでない取組しているところは人気出て収入は上がってる。)

管理釣り場より見回り環境広いのに、管理釣り場より値段低かったり資源管理方法変えなかったら、それはすぐ釣られきるし、お金も残らず赤字運営なりますよね、と。

また、「増殖」が曲者なのですが(また別の記事で詳細書きます)、禁漁区やC&R等は、監視とセットだからこそ意味があるんですが、その監視に係るコスト等は「積極的増殖」ではないのでカウントされなかったりします。

等々で、棚の商品の値段を自分で決めれない(そしてそこを変えるのに時間と手間が非常に変える)、という問題があるわけです。
仕事としてやっているなら若干これも仕事、と思いますが、ほとんどボランティアでこの業務を任されたときに、これを見ている人は頑張ってやります、と言えますか?

当然、一釣り人としては、安くて釣れる方がいいわけですが、持続可能な状態にはそれなりのコストがかかることも分かるわけで、釣れる魚がいなければ別のところ行くし、極端に値段が高くても他に行くわけなので、市場原理でいい感じのところに落ち着くと思うわけです。(組合員との釣れる量の兼ね合い調整は考える必要ありそうですが)

遊漁料制度に関する提言

 [提言]
 A)遊漁料設定の柔軟化
 B)遊漁料設定許可自体を都道府県管轄から無くす。
  ←漁業法制定当時と異なり、釣り人獲得競合性があり市場原理が一部働いている状態であり、漁協任せでも適正に設定される。

というのが我々の遊漁料制度に関する提言です。

少なくとも、遊漁料、もしくは釣りを起点にした収益事業により、職員やメインで仕事として携われるぐらいの収入を作らない限り、水産×経営(出来れば×環境土木)の能力を育てる原資が出来ないし、漁協経営はうまく実行出来ません。

また他の点でも改正案を提示していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?