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47才のキャンパスライフ 〜慶應一年生ミュージシャンの日々〜 25「そのTシャツ、いいね!」

 大学内では色んな種類のバンドTシャツを目にする。
 とりわけ多いのがNIRVANAのTシャツで、1日に4,5回は見かける(もっとかもしれない)。NIRVANAは僕にとってかなり特別なバンドなので、見かけるたびに嬉しくなってしまう。例え彼らがカート・コバーンのファンではなく、ましてクリス・ノヴォセリックなんて一体だれ?という感じであっても。

 何せカートが他界してもう30年も経ってしまった。ファッションアイコンになるには十分な時間だし、誰しもが了解しているようにバンドTシャツはイコールそのバンドのファンであるという宣言ではないのだ。

 と、そう理解はしていても、自分の好きなバンドだとやっぱりどうしても反応してしまいますね…。思わず

「良いTシャツだね!」

 なんて言っちゃうんだけど、着用者は多くの場合そのバンドの熱烈なファンというわけではないので、ただいたずらに困惑させてしまう事になる。申し訳ない。軽音サークルの人とかだとまた話は違ってくるんだろうけど。

 僕の場合ファッションとしてでなく「これが好きなんです!」宣言としてTシャツを買ってしまう事が時々ある。アメリカのエミー賞総ナメ名作ドラマシリーズ「Braking Bad」にハマった時は、劇中に出てくる主人公ハイゼンベルクの似顔絵Tシャツや、フライドチキンチェーン「Los Pollos Hermanos」のTシャツを着て、劇中の登場人物になった様な気持ちで悦に入っていた。去年「Game Of Thrones」にハマった時は、シリーズ中もっとも愛されキャラと言って過言ではないティリオン・ラニスターの名台詞 " I DRINK, AND I KNOW THINGS "を着て、「冬来たる!」なんて言って喜んでいた。単純です。

 先日電車でNetflix "STRANGER THINGS" の主人公ウィルの探し人ポスター風Tシャツを着てる人を見かけて、テンションが上がってしまった。あの時はもう少しで話しかけてしまうところだったんだけど、なんとかグッと堪えた。(あのデザインかなり良かったんだけど、今ネットで画像検索しても同じものが見つからない)

 しかし直接的なやりとりがなかったとしても、不意に同好の士に出くわした気持ちで、僕にとってはそのTシャツの存在が日常の中でのささやかな潤いとなった。Tシャツとは着用者も気付かぬうちに、刺さる人には刺さっちゃってるという、なんとも変わったコミュニケーションツールである。


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