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【ライブレポ】ミュージックパーク ~Girls & Music Theater~ 20220110

1月10日(月祝)に、渋谷ストリームホールにて表題のライブが開催されました。

全20組のアイドルグループが出演した、1ステ制でのフェス形式のイベントです。

2018年にオープンした渋谷ストリームホールは、横に広いわりにフロアの奥行きが少なく、最後列にいてもなおステージとの距離は近く感じます。
ホールと名のつくだけあり音は良く、ライトは鮮明です。

単独ライブで何度も運んだ場所ですが、今回のような何組ものグループが出演するライブに行くのは初めてでした。
20組中8組しか観ていない(体力の限界です)のですが、そのどの組もホールを活かしたステージ映えでした。

デビューしたばかりとは思えない【イートイン】

11時ちょうど。
「ミュージックパーク」の始まりはイートインからでした。

井咲由衣 @YUI_EAT_IN / 小林瑞希 @MIZUKI_EAT_IN / 満月 @MARUNA_EAT_IN / 山村伶那 @REINA_EAT_IN / 鈴奈 @RINNA_EAT_IN によるダンスポップグループ

自己紹介文のどこにも「アイドル」の文字がありません。

デビューしたての今でこそアイドルっぽい歌詞の曲が多いのですが、その枠で収まるつもりはないという野心があるのかもしれません。
確かにパフォーマンスの良さで勝負するという感じは伝わってきて、伴奏の音の数や音量を上げることでごまかす風でもありません。
そのため、サビではメンバーの歌声が結構聴こえてくるのですが、振り付けや動きに持っていかれることもありませんでした。

曲を取り上げてみると、一曲目「SILENT VOICE」は両手を掲げ、歓喜しているかのような振り付けが多いです。
DANCE」は歌詞の多くが英語で、メロディーにはどこか聴きなじみがあります。

マイクを手にしていないとき、山村伶那さんの表情は豊かに動きます。
口を微妙にあけて歌詞や伴奏のメロディーをなぞったり、時に無造作に口を開けてみたりとその変化には引き寄せられました。

この日、1月10日は成人の日でした。
MCではメンバー5人中3人が今年成人を迎えた(満月さん、井咲由衣さん、小林瑞希さん)ことや、昨年が成人式の予定だった山村さんは成人式が対面で出来なく、コロナのためオンラインに変わってしまったためほとんど参加しなかったことなどを話していたのですが、センターに立って成人式トークを引き出していた鈴奈さんはまだ19歳と、まさかのグループ最年少でした。
最終的には、鈴奈さんが20歳になり、晴れて全員が成人となる来年に改めて5人そろった成人式が出来たらいいね!という話で綺麗に落ちが付きました。

MC明けの2曲「Cranberry Shine」「Summer song」は、配信を何度も見てクラップを覚えてしまいました。
曲そのものもなじみやすくて良いです。

気が付いたら、ワンマンライブに居合わせているような気がしてきました。
デビューしたのは昨2021年の12月19日。
ついこの間です。
ステージデビューから1カ月も経っていないのですが、知らず知らずのうちに、イートインのペースに引きずり込まれていました。

全5曲披露してライブは終わりました。

満月さんがかつていたグループ、いわゆる前世が、僕がよく見ているFragrant Driveというグループの辻梨央さんの前世と同じだったことから、一回くらいはと思ってイートインの出演に間に合わせてきました。
予習をしていたわけでもなく全くのノーマークだったのですが、終わる頃には「もう終わり?」と名残惜しさすらありました。

最後の対バンライブ【転校少女*】

1月16日をもって惜しまれつつ解散してしまいました。

パフォーマンスなど詳細は上のレポでじっくりと触れたので、ここは違った視点を向けて書いてみようかと思います。

解散から遡ること6日前、1月10日のこのミュージックパークは、転校少女*にとって最後の対バンライブでした。

転校ラスト紹介

最後を見届けようという思いが集まったのか、11時過ぎで出演2番目という早めの時間帯にも関わらず、4色のサイリウムがフロア中央付近に大挙しました。

メンバーが出てくる直前の舞台裏を、松井さやかさんが残してくれています。

開始時間が迫り、場内BGMのボリュームが上がります。
ここでフロアは、メンバーの準備が出来たのだろうと悟ります。
やがてOvertureが流れるころに確信に変わり、メンバーの登場を待ち構えます。
松井さんが載せたこの動画には、転校少女*メンバーがステージに立つ準備を整えたてから一曲目が鳴り出すまでのメンバー間のやり取りのリアルが残されています。
普段我々が観られない裏側の様子です。

メンバーが身に着けている白のロングブーツに、白に銀色のようなキラキラした装飾がほどこされた衣装は、1ヶ月ほど前から解禁となった「解散」仕様の衣装です。

円陣を組み、掛け声を上げました。
ほどなくしてOvertureが流れ始めました。
騒がしくなった狭い袖で待機しながら、メンバーは笑っていたりするのですが、慣らすために声出しをしたり、この対バンの名称を再確認したりする姿もあり、少しの緊張感も見え隠れしています。
もう片手ほどしか残されていないライブの、失われつつある日常の風景です。
もう一週間もしたら当たり前ではなくなってしまいます。

この日は25分のライブでした。
5曲が相場です。
しかしこの日の転校少女*が披露したのは4曲でした。
WONDER WAVE!」「ときめけ☆アフタースクール!」「NEVER ENDING STORY」と対バンライブで披露した回数がトップクラスに多いであろう定番曲が続いた後、MCコーナーへと移りました。
ここでは、余らせた約1曲分の尺を使い、メンバー一人一人が最後の対バンライブに際しての思いと最後の挨拶を口にしていました。
限られた時間の中、曲を聴かせながらコメントも届けてくれました。

昨年11月の解散宣言以降、転校少女*は、対バンや思い入れのあるフェスのたびに最後の挨拶をして、思いを歌に込めてきました。
この日は一つのまとめでもありました。

「最初のころはあまり対バンに出ることが少なかった。でも」
塩川さんは言います。
「今では対バンやフェスにもたくさん出るようになって、7年間のアイドル人生で成長した姿を見せられる機会が増えた」

最後に披露されたのが「星の旅人」でした。
ラスサビでは4人が横に並びながら前に出てきてユニゾンを響かせ、4人はステージから去りました。


予想外の歌声【翡翠キセキ】

先入観は恐ろしいなと改めて思わされました。
翡翠キセキは、2021年6月にデビューしました。現在は3人組です。
所属事務所は「エイトワン」。
エイトワンには、翡翠キセキの一年前、2020年6月にデビューした透色ドロップも所属しています。
先に透色ドロップについて知っていたので、「翡翠キセキ」というグループ名の語感やアーティスト写真のイメージから、曲やパフォーマンスの方向性など系統は透色に似ているのだろうと思い込んでしまっていました。
どういう系統かというと、メンバーの歌声に代表される輪郭のぼやけた、柔らかで穏やかな雰囲気です。
実際には透色もこう言い切れるほど分かりやすいわけではないのですが、ともかく飛んでいきそうな歌声(悪い意味ではないです)なんだろうなというのが強くありました。

そんなことを思いながら、長めに鳴り出したovertureを聴いていました。
じっくりと物語の始まりを知らせてくれます。
「ここではないどこかを、夢見ていた」
「一緒に行こう、まだ見ぬその先へ」

おそらくメンバーが吹き込んだであろう、ポエムのようなセリフがついたovertureは、確か透色にもありました。
翡翠キセキのコンセプトは、「ここではないどこか」を目指すどこにでもいる女の子のリアリティです。

衣装のロングのスカートとケープは、綺麗な清流を書き写した絵の具のような水色で統一されています。透色とも通じる清楚さを感じました。
ゴミゴミとした落書きだらけのライブハウスではミスマッチな、今回のような新しいホールでこそ似合いそうな衣装です。

1曲目「Rainbow」は、ピアノの音から始まりました。
なんかこれもどこか透色っぽい…あとに続くのは柔らかなメンバーの歌声でしょうか。

意表をつかれたのはこのあとでした。
空気ががらりとかわり、打ち込みの音が急に顔を出してきました。
伴奏の低音がドンドンと押してきます。
勝手に抱いていた予想、先入観は、まずこのイントロから裏切られました。

しかし、翡翠キセキの意外性はこれだけではありませんでした。
ここからでした。

白松ゆりさんが歌い始めたときでした。

「胸の中の不安の渦 今は全部カバンに詰めて」

その歌声は中低音が強く響いていました。
驚きました。
透色ドロップどころか、耳なじみのある女性アイドルの一般的な歌声と明らかに違います。
発声や出し方から別物のようです。
空気を押し出すのではなく、喉のあたりに大きな空間を作り、その空間から音を響かせているように感じます。
音量もその響きから来ているようです。

地を這うような低音ボイスは消耗しなさそうですし、どの会場やPAでも通用しそうです。
途轍もない武器を白松さんに観ました。
歌唱力に圧倒されたアイドルは多数いましたが、いずれも低めというよりもハイトーンが楽々と出ている様に聴き入ってしまったというパターンが非常に多かったです。
ここでのハイトーンとは、高いドよりもさらに上の音のイメージです。
中低音にのけぞったのは初めてでした。

この日のストリームホールの音響は高めをさほど響かせず、高音を得意としている多くのアイドルだと意外と来ないような体感でした。
逆に、白松さんのような中低音に響く歌声だとすごく良く届きます。

白松さんだけでもインパクトが大きかったのですが、仲谷水伶さんも顎を引いて低音を出すようなスタイルで、メンバー3人中2人がこれまで出会ったことのないような歌声でした。
当然ユニゾンの聴こえ方も変わってきます。

曲のデザインも、そんなメンバーの声質に合わせて作られたのか、歌いやすそうです。
照明が真っ赤になった「渾身のアンチテーゼ」は、衣装とは似つかわずベースの音が強めに聴こえます。

「顔洗って鏡見て出直してこい」

こんなパートがあります。
白松さんがセンター・ソロで指をさし下しながらこの強烈ワードを放つのですが、なにせその歌声があるから迫力十分です。
こうして書きはしましたが、だからと言って頑健というか、ごつごつとしたイメージへと変わったわけでもありません。
どの曲も振り付けは清楚な衣装のイメージを崩さないよう激しさを抑えており、バランスが取れています。

ホールを揺らす【カラフルスクリーム】

関西からやってきた7人組(この日は6人)が渋谷ストリームホールを揺らしました。
ステージ中ほどから横一列のメンバーがフロアに向かってくる様は、衣装の色もあって桜色の壁のようでした。
桜色の壁はフロアに縦の動きを煽ります。
見た目はフリフリの短いスカートで、いかにもなアイドルという姿なのに、振り付けの数は多く、そのどれもが速いです。

二曲目「Innocent Scream」では「一緒にー!」を合図に、足を上げながらメンバーが迫ってきます。
運動量の多さは、汗だくになっているあみさんを見ればよくわかります。

グループの紹介文にはこう書いてあります

楽しいだけでは終わらせない

その一端を見た気がします。
歌ではゆうかさんやかのんさんが強い印象ですが、激しい動きであってもオール生歌を保っているのが素晴らしいです。
腕をブンブンとふり回す振り付けがあります。
フロアではカラフルなサイリウムがぐるぐると光りました。
白のかれんさんの腕の回し方は、何気なくやっているように見えてきっちりと鋭角です。

全6曲。
全国12都市ツアーの最中で、後日大阪NHKホールで開催のツアーファイナルを終えたそうです。
アグレッシブなライブでした。


語りたくなる【タイトル未定】

一曲目は「ガンバレワタシ
なんて平和なメロディーなんだと、イントロを聴きながら感じました。
「北海道から来ました!タイトル未定です!」
谷乃愛さんが絶妙なタイミングでフロアに声をかけました。
北海道というワードから連想される平坦な大地のイメージとともに、胸のあたりに穏やかな気持ちが押し寄せてきました。
野原で寝転びたくなりますし、なんだか草の匂いまでしてきそうです。

4曲目「鼓動」では、全てが満たされていく感覚に襲われました。
「届けたい歌があるんだ」
「wow wow..」と両手を広げて歌うところは、一緒になってやってみたいです。

M1. ガンバレワタシ
M2. いつか
M3. 溺れる
M4. 鼓動
M5. 道標

ステージ上に取り付けられたピンスポットライトの光源が数個だけなって光が絞られるとき、ステージの一部分以外は暗くなりました。
このとき、渋谷ストリームホールの両脇の白い壁には、ステージに立ってかすかな光に照らされるアイドルの姿が大きなシルエットになって投影されていました。
ソロを歌うとき、背中をかがめてフロアへと語り掛けてくる阿部葉菜さんの姿は、何度も大きな影を壁に作っていました。

七瀬のぞみさんは、腕を下から振り上げる振り付けのときに、指をスカートにかけ、上げていく腕と一緒に持ち上げてふわりとさせていました。
上げ過ぎないくらいでさりげなく、でも偶然触れてしまったわけでもないといった絶妙さでした。

富樫優花さんの、カチューシャに軽くウェーブをかけた髪型には、時代をのぼったような昔懐かしさを覚えました。
聖子ちゃんカットに代表される、80年代のアイドルっぽいなと思いながらツイートを遡ってみると、こんな動画を見つけました。

中森明菜さんのデビュー曲・スローモーションです。
まさにな選曲です。
ここまでビジュアルや雰囲気が選曲と合うことがあるのかとうなってしまいます。
本人に自覚があって選んでいるのだとすると完璧すぎて、もう何も言えません。

タイトル未定は、アイドルファンによる投票イベント「アイドル楽曲大賞2021」にて推し箱・アルバム部門でともに1位を獲得したそうです。
ここからは少し私見なのですが、このアイドル楽曲大賞で高位にランクインするというのは、もちろん純粋な曲・グループの魅力が重要な要素だとは思う一方で、投票の際にファンが曲やグループに対してのコメントを書くことができ、それが投票結果に紐づいて公開されるという大賞の性質上「語りたい欲」が強い人を多く捉えたかという点も大事なんだろうなと思っています。
「楽曲派オタク」を自称する人達のことです。

この日は初見でしたが、でも語りたくなる気持ちも非常に分かります。
メンバーが意のままに音を出し、楽しんでいる様子が存分に伝わってきました。

ところでタイトル未定、軸足を北海道に置きながら都内にも頻繁に来てライブに出演しているのですが、この日初めて新幹線を使ったそうです。
前日に大阪でライブを終え、朝一の東京への移動でした。
今年はより各所でお声がかかり、新幹線をたくさん利用する年になるかもしれません。

ここまではお昼前にかけてのライブでしたが、ここからの3組は終盤戦の夜のライブです。

この気持ちの名前は【透色ドロップ】

この日の透色ドロップは、ライブが2本立てでした。
一発目はお昼に白金高輪での対バン、そして二本目の夜が、ここ渋谷にやって来てのミュージックパークでした。
セットリストは昼夜で被らず、その色彩もがらりと変わっています。
昼は「ネバーランドじゃない」「キュンと。」などの明るくポップな曲が占め、逆にこのミュージックパークでは、暗いとまでは言わなくとも笑顔を控え目にした曲が並びました。

透色ドロップ。
音源を聴いてみるとメンバーの歌声は透き通り、曲には汚れを知らない、まっさらな雰囲気が漂っています。
しかし、これだけだと透色ドロップを語るには手落ちかもしれません。
ライブで接して意外性を感じるのが、心配になってしまうほど入り込んだメンバーの表情です。
昨年の「LEADIG SUMMER」では橘花みなみさん、「Bit Connection Fes」では瀬川奏音さんや見並里穂さんについてフォーカスしてそうした点を書いていました。

黒目がちな見並さんは、誰よりもニコニコしてフロアとコミュニケーションをとろうとするときもあるのですが、一方でシーンが変わると他を寄せ付けない、睨み付ける表情をすることがあります。
この日のセットリストだと、多くがそんな思いつめた表情でした。

4曲目には「君が描く未来予想図に僕がいなくても」が披露されました。
涼しい顔をして歌っても違和感はなさそうなこの曲を、重く苦しそうにメンバーは表現します。
先に出た翡翠キセキ同様、荒々しい振り付けがあてがわれているわけでもありません。
衣装は、ここ最近新調された、落ち着いた色のタータンチェック柄をしたワンピースの上に、明るめの色のパーカーを羽織っています。
パーカーがひっくり返って頭に乗っかるほど動き回るわけではありません。
その分メンバーは大げさとも言えるほどに顔つきやジェスチャーといった、振り付けでは決められていない細かい所作に神経を通わせています。

前回「BCF」のライブレポでは見並さんや瀬川さんについて触れました。
この日は無かった「アンサー」での不機嫌になったのかと思ってしまうようなふたりの表情が良かったのですが、この日は佐倉なぎさんも感情的なパフォーマンスで二人の表現に迫ってきています。

そして最後に披露された「衝動」。

昨2021年12月開催のワンマンライブのタイトル「透き通る衝動」にも入っている新曲です。
2番Aメロでは、コーラスするメンバー3人(瀬川さん、花咲さん、天川さん)以外の4人のメンバーがコーラス隊の周りを囲みます。
前列では、見並さんと佐倉さんが右手の拳で左の二の腕あたりを打ち付けてクラップを煽ってきていました。
見てみると優しくクラップではなく、腕を打ち付けているという表現のほうが合っています。
この姿を観てしまうと、気持ちも昂って手拍子せずにはいられなくなります。

また、これは顔つきなどとは違うのですが、この曲の間奏では、縦に2人×3の列となり、隣りあうメンバーどうしで手を繋ぎ、その間を後ろから花咲りんかさんが通り抜けようとするタイミングに合わせて手を上げ、アーチのように通すシーンがあります。
通す側も通る側も、タイミングを取るのがかなり難しいはずです。
先頭だったため分かりやすかったのですが、佐倉・見並ペアを観ると、後ろを全く気にする素振りを見せずにノールックで花咲さんを通していました。

その花咲りんかさん。
こうして書いたメンバーほど感情を大きく出す感じでもないのですが、でもなぜか結構真に迫ってくるというか、ステージにいると目に入ってきます。
表情を作るときに目を閉じず、前を見据えたままなことが多いからかもしれません。

ところでこの「衝動」という曲、こうして書いてきた透色ドロップメンバーの入り切った表現と非常にマッチした曲だと思います。
これからのライブでも沢山聴けることを期待しています。

底から光り刺せ【NELN】

個人的にNELNを観るのは結成1周年記念のワンマンライブ以来でした。
もう8ヶ月以上も前のことです。
会場は、奇しくもこの日と同じ渋谷ストリームホール。

大きく変わったことがあります。
メンバーが4人から2人に減りました。
2021年6月にAKARIさんが抜け、2022年1月3日にMAOさんが卒業しました。
この日は、KARINさんとNATSUMIさんでの2人体制の初お披露目の日でした。

ライブアイドルの世界では、ある程度のメンバーの入れ換えはもはや致し方ないことだとは思いますが、それにしてもまさかこうなるとは想定していませんでした。

2020年4月にデビューしたNELNは、デビューから12カ月連続で新曲をリリースしました。
1年間で持ち曲を一気に12曲にまで増やしたことになります。
MVのつくりは考察班がうなりそうなクオリティーの高さで、精巧に演出された世界観は、2021年からの大いなる飛躍を予感させました。

個人的にNELNを初めて観たのは、2021年2月のエクストロメ!という対バンライブでした。
このとき共演したのはサンダルテレフォンやRingwnderungといった、ハイレベルな完成され切ったグループだったため、その中にいると、まだ声が出来上がっていないように感じていましたが、ここから良くなっていくことしかあり得ないだろうと、大いなる可能性を信じていました。
そこから2カ月経ての1周年ライブでは、儚く消えていく夢の様な物語性を観ました。

ここから駆け上がっていくのかな。
その矢先の相次ぐ卒業だったので、トーンダウン感は否めないだろうと、ミュージックパークの日を迎えるまでは正直思っていました。

メンバー編成が変わると、一時的であっても見劣りしてしまうというのは一般論的にあります。
ましてやNELNはまだ完成途中であったのに、2人も減ればパワーダウンするでしょう。

でも、そもそもまだ結成から2年と経っていません。
普通に考えたら、誰かが抜けたとしてもまだまだこれからのグループです。
制作物のクオリティーがいかに高く、それに伴って期待がどれだけ膨らんでいたのかということなのですが。

これが何て失礼な思い込みだったのだろうと、ライブで覆されました。

一曲目は「スクエア」。
12カ月連続リリース第二弾の曲です。

メンバーは緊張していたそうです。しないほうがおかしいかもしれません。
フロアも様子見で暖まり切っていないように感じました。
しかしこの流れは、大サビ前のKARINさんの一声で消されました。
「いくぞー!」
KARINさんはこの一言で、サビのフリコピへの流れを強引にも作ってしまいました。
前のめりの姿勢はホールに伝染していきます。

ライブを観ていて、以前との大きな変化に気付きました。
一周年の時には、恐らく世界観の演出の一つだとは思うのですが、「うれしい、楽しい」をステージでみせるというのが極端に少ないように感じていました。
この日観て、KARINさんの一声などを聴き、こんなにステージで感情をだすのかと驚きました。

かつてはアンニュイな顔をして横にゆらゆら揺れていた「ノンフィクション」は、「もう夏だ」と、じりじりする夏の訪れをはしゃいで迎えているような動きへと変わりました。
もっともこれはこのたびの新体制に始まったことではないそうですが。

「スクエア」「ノンフィクション」の終わりには、KARINさんがNATSUMIさんの肩に頭を預けていました。
KARINさんの安心した表情は、心をゆるやかに解きほぐしてくれます。

どちらがいい悪いという話ではないのですが、純粋に楽しんでいいんだとこちらにも思わせてくれたという意味では、メンバーの笑顔を観て安心しました。
元々クオリティが高かった曲に、ぬくもりが通ってきているように感じました。

メンバー二人についてもう少し書いてみます。
パワーダウンするだろうという不安が覆されたのは、ほとんどソロで交互に歌うふたりの歌声を聴いたからでした。
以前よりも遥かに良くなっています。

KARINさんからは意地に似たものを感じました。
ややかすれて下に触れた歌声は強く、以前よりもはるかに声量がありました。
一曲目からかなり飛ばしていましたが、最後まで走り切りました。

irony」のアウトロが鳴って終わりに向かうとき、ここには振り付けがなく、二人は立ったままの状態でした。
KARINさんが上手、NATSUMIさんが下手側です。
この日のライブはフロア最後列、やや上手寄りで見ていました。
手をだらんと下ろしてすっと立っているKARINさんは、こちらの方向に目を向けたまま数秒間、目線を離しませんでした。
照明が角度を変えてKARINさんの目を光らせます。

次の曲のフォーメーションに移ろうと、NATSUMIさんが動き始めても、KARINさんはギリギリまで動きませんでした。
ゆっくりと下手に動き始めたのは、次の曲が始まろうとするぎりぎりのタイミングでした。
刹那ふと笑い、顔を残しながら下手側に消えていきました。
この時KARINさんはフロアというよりその後ろ、PA席やあるいは後ろの壁を見つめていたのだと思うのですが、目が合ったような感覚がたびたびしていて、そらしていいものか困ってしまうほどかなり鋭かったです。

NELNは現在、新メンバーのオーディションを開催中です。
いずれ誰かが入るのでしょう。
とはいえそれまではだいぶ時間がかかるでしょうから、しばらくは2人でのステージになるかと思います。
でも、KARINさんを観ていると、今を繋ぎの期間として置いておくつもりがないことが伺えます。

NATSUMIさんは、口を大きめに開け、力を入れながら険しく歌う姿は今まで通りでしたが、走り気味だったリズムに確実性が増しました。

もしも もう一度 明けない 夜がきても 嘆くのはまだ早いさ 風まかせ

「dawn」のこのパートは、4人であったころから変わらずNATSUMIさんの歌割です。

昨日にもうさよなら 始まりを知らせる 潮騒の音

「しおさい」の歌詞にはこんな言葉があります。
勝手な不安を打ち消す、堂々たるステージ。
これまでにさよならして今から新たなページを開く、その場に立ち会ったのだと自覚すると歌詞が染みわたってきます。
感動的ですらありました。

「お知らせがあります!!」と言ったものの何もなかったり、「しおさい」BメロでKARINさんがNATSUMIさんの方を見つめてアイコンタクトしたそうにしているのに、NATSUMIさんは歌の方に集中しすぎていて全然観てくれなかったりとちょっとあれれなところもありましたが、こんなものは些末なことでした。

変わっていくここからのNELNが非常に楽しみです。

何かが巡り出す【Ringwanderung】

徐々にバスドラの刻むビートが速くなり、そのインターバルが短くなっていくovertureに合わせ、照明が激しく点滅してきました。
5人組・Ringwanderungがクラップをしながら登場してきました。

東欧の軍服のような衣装は初期からマイナーチェンジをしたようですが、雰囲気は変わっていません。
実際の色は青が強めの紺色ですが、ストリームホールの背景にある黒い垂れ幕を背にすると闇に溶け込みました。
鍵盤ロックを標榜するのがRingwanderungです。
ダークさからは普通のピアノというよりも白黒逆になったチェンバロのイメージのほうが色的にはしっくりきそうです。

2周年?ライブ以来、半年以上ぶりに見ました。
ライブに隙がより無くなっているように感じます。

メンバーには余裕が増し、曲のストーリーと関係ないところで笑うことさえもあります。

軽そうに動き歌っているようにも見えるのですが、ギアを上げる時には手をつけられないほどの音を出し、暴れ回ります。

フロアの中央ではリンワンファンの方が激しくフリコピをしていました。
つられて動きたくなってしまう、この感じを久々に思い出しました。
なにかが身体を巡るようなライブというのが、リンワンでした。

みょんさんは歌うとき、髪を乱暴にかきむしり、指をかすかに曲げ、何かを受け止めるようにしています。
寺尾音々さんはベージュっぽい明るめの髪色が肩まで伸びています。ダンスに合わせて大きく乱れていました。
増田陽凪さんの表情は、食いしばりながら歌ったその直後に笑顔に変わります。
いつも気付かないうちに腕まくりをしている佐藤倫子さんは、斜めや横目に見てくる感じが毒々しいです。
River」では1,2番でみょんさん、佐藤さんのそれぞれソロがあります。
扇形のフォーメーションの中央で、みょんさんは手前、佐藤さんは奥に、というフォーメーションなのですが、この図ではボーカル二人と共にマイクを取っていない他のメンバーまで一緒に歌っているかのように思いました。
歌とダンスが共鳴し、別々のものとは思えませんでした。

こんなことを思っていると、辺見花琳さんの特徴的な高音に出会います。

ハローハロー」が終わり、5曲がMC無しのノンストップで消化されました。
これだけでも終わりとしては十分です。
しかし、終わりませんでした。
最後に残されていたのがこの曲でした。

「ササル」

ノンストップで続いた鍵盤のイントロから、マサイが大量に発生しています。
もともと大きかったフロアの動きはまた一段と大きくなりました。
曲の魅力についてはここに書きました。

少なくとも僕は、心のどこかで「ササル」を待っていました。
数えきれないほどのマサイを見るに、他の方も同じ気持ちだったのかもしれません。
終わってみれば、19時17分と、終了予定時刻の19時20分よりも3分ほど早く終わっています。
もともと巻きで始まったのか分かりませんが、6曲終わらせても時間が余り、それでいて体感は30分以上という充実のライブでした。


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