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【ライブレポ】透色ドロップ ミュージックアワード2022(曲紹介)

5月2日(月)に渋谷duo MUSIC EXCHANGEにて、6人組アイドルグループ・透色ドロップの主催ライブが開催されました。

この日はいつもと一風変わっていて、持ち曲全16曲を対象に、4月から約一カ月間の投票期間で募ったファンからの人気投票を元にカウントダウン式でセットリストが組まれるというライブになっていました。
楽曲投票はグループ初の試みです。

企画要素は他にもあり、毎日投票した人にはメンバー全員のサインとコメントが入った色紙が貰えたり抽選によるプレゼントがあったり、一位に選ばれた曲はこの日のライブ映像を素材にしたMVが作られるそうです。

YouTube番組「透色って、なにいろ?」でメインMCを務めていた成海千尋さんが3月で卒業し、後任のMCとなった瀬川奏音さんがこの日はカンペを手に進行していましたが、曲振りやコメントなど司会進行以外の部分はできる限り他のメンバーが喋るようにしていたのが印象的でした。
だれか1人の進行となると喋る比重が均等にならないのは必然ですし仕方がないことだとは思うのですが、のちにインスタで他の子のファンの方ごめんねとわざわざ書いていたところに、瀬川さんの優しさを感じました。

気になる順位ですが、開演時点ではメンバーすら知りませんでした。
ドキドキしながらフロアと同時に結果を知り、そこから慌ててフォーメーションについてパフォーマンスへという流れです。
恐らくメンバーは、16曲どれがランクインしてもいいように振りやフォーメーションの確認をしていたのではないでしょうか。

ーーー

ライブに先立ち、メンバーはトップ3の順位予想をしました。
会議に会議を重ねた末、メンバーが予想したのはこのような順位でした。

◆メンバー予想Top3
1位 夜明けカンパネラ
2位 きみは六等星
3位 アンサー

ここにももう一つ企画要素があり、メンバー予想がピタリ賞であればメンバーに全員分のディズニーチケットがプレゼントされる一方で、外してしまうと過去SNSに投稿した文章をスタッフが「イジり」を加えて改変したあざとコメントを全員の前で披露しなければいけないという罰ゲームが待っていました。

順位発表はまず10~8位まで、そして7~4位までをまとめて一気に、トップ3は一曲ずつ発表という流れでした。
ステージ後ろのスクリーンに順位が表示され、ブロックごとに曲を披露した後ファンからの投票コメントや順位への感想などを読み上げていました。

いつものごとくライブレポと冠した手前、この記事ではパフォーマンスのことについても書きますが、年に一度あるかないかのこの機会ですから、せっかくなのでトップ10にランクインした曲一つ一つの好きなポイントなどを書いてみようと思います。
どれも良い曲ばかりです。

まずは10位から。
順位発表のコメントや罰ゲームのくだりは文章よりもYouTubeのアーカイブを見たほうが早いと思うので、特に書きません。

10位 ネバーランドじゃない

透色ドロップを代表する「沸き曲」がこれだと思っています。

1位だと思っていたので、10位というのはかなり想定外でした。
というのも、「ネバラン」は対バンライブでもよくお見かけする曲のわりに、単体のライブ映像やMVがありません。
他の人気曲ではたいがいあるので、1位のMV制作狙いで票が集まるのかなと思っていたのですが、蓋を開けてみれば一位どころかギリギリのランクインでした。

朝日が西から昇り、傘をさしたら地上に雨が降ってくる、あべこべなおとぎ話のような世界がこの曲に描かれています。

サビで転調するとき、Bメロ最後の音から半音上がった音が一歩目になります。
ここに、最大の盛り上がりポイントがあります。
振り付けが初心者にも優しく、パーに開いた手を右、左に上げる振り付けは一度見れば覚えてしまうはずです。

「眠れない夜にひとり空を見上げて 裸足のままベランダに出てみる」

2Aメロ、見並里穂さんのソロです。
この日のライブでは、いつも以上にメンバーの歌声がはっきりと聴こえました。
まず一発目が、ここの見並さんパートでした。

9位 夜明けカンパネラ

メンバーの予想では1位だったこの曲が早くもランクインしてしまい、罰ゲームが確定したメンバーは崩れ落ちました。

この曲も「ネバラン」同様、サビの転調で跳ねる盛り上がり曲です。
イントロのかすかな音から、フロアのテンションが上がっていくのを肌で感じます。
ネバランとカンパネラは思ったよりも順位が低かったのですが、あまりに定番すぎて票が伸びなかったのかもしれません。

タイトルの「カンパネラ」は、イタリア語で小さな鐘を意味します。
イントロから響く鐘の音や、サビの両手でハンドベルのように刻む振り付けなど曲自体も鐘を連想させるつくりになっていて、歌詞にある「何かが変わって何かがはじまる」高揚感と結び付けられています。

好きなフレーズがここです。

「変わるきっかけは涙だってかまわない」

あくまで前向きな曲ではあるのですが、ほんの少し哀愁も感じます。

8位 ユラリソラ

悲しい曲ではないはずなのですが、メンバーの細い歌声にかかると「強くなれたよ」というフレーズすらももの悲しく聴こえてしまいます。
先の2曲と比べるとおとなしめの曲ではありますが、苦しくなりそうなこの「静」の時間を作れてしまうのもまた透色ドロップの魅力です。

重めな曲になるとあらわれる、花咲りんかさんの表情が素晴らしいです。
どんなに踊っても顔から上がぶれないのはダンスの専門学校に通っていたという経験からきているのでしょうが、真っ直ぐ前を見据えて口を閉じ、一切崩れない表情にも絶望感を与えるようなオーラがあります。

「風にせかされ 君は大人に変わっていく」

Bメロで歌う2人以外のメンバーが上体を倒したとき、頭の中には曇り空が頭上を覆ってくるようなイメージが広がります。

7位 衝動

(↑3月5日のライブです。予想図から衝動での流れが素晴らしかったのでここに貼ります)

「夜明けカンパネラ」とともに昨2021年の終わりに初披露となったこの曲が、透色ドロップのパフォーマンスの新たな扉を開けたような気がします。

「迸った希望の予感をただ確かめていけばいい」

ピアノの音とともに劇的に感情が波打つ、まさしく「衝動」という曲です。
揺れ動いた感情には、最終的に「振り出す雨が祝福してる」と希望が差し込みます。
クライマックスに至るまでの展開がすごいです。

この曲についてはまだまだ書きたいことがあるので、2022年個人的良曲選みたいなのものでまた個別に取り上げたいです。

この日のメンバーのパフォーマンスを取り上げると、まず冒頭のこのフレーズです。

「鍵が掛かったままの白い扉 叩く音がする 聞こえるでしょ?」

天川美空さんと花咲さんのパートです。
普段のMCなどでは妹キャラという感じで他のメンバーから可愛がられる2人のハーモニーがこの日、とてもすっと耳に入ってきました。

あと橘花みなみさん。
かなり小ネタ的なのですが、ライブ中橘花さんが小さくうなずくシーンが何度かあります。
衝動だったらサビのところ「迸った...」だったり、衝動以外の曲でもたまにあるようですが、確信を持たせるかのようなうなづきが凄く良いなと思っています。

6位 りちりち

あまりフィーチャーされていないと思うのですが、透色ドロップはダンスが上手いなと素人目線ながら思います。
何がというと、テンポが速めの曲であっても外さず、どういう動きをしているのかが伝わってくるのです。
「りちりち」は速さに加えて激しさもある曲で、上半身の動きから足の組みかえまでが忙しいです。
この曲が踊れるのは、今の透色ドロップだからなのでしょう。

天川さんはこういう曲がやりたかったそうです。

5位 孤独とタイヨウ

前回のワンマンライブ「瞬間的記憶」以来に聴きました。

「遠く果てなく続いている まだ轍のない坂道で」

1番Aメロのこのフレーズでは、雲をつかむように手を伸ばしながら成海千尋さんと瀬川奏音さんが二人で歌っていたのですが、成海さん卒業後は瀬川さん一人で歌っているようです。
より一人ぼっちの孤独感が出ています。

タイトルに「孤独」とあるくらいですから、明るいか暗いかで分けたら間違いなく後者なのだと思うのですが、孤独の中にも「背中に触れた人の手」や照らしてくる「タイヨウの光」の温もりを感じます。

終盤にかけて上手側にフォーメーションを移動する天川さん。
レスとは別に、天川さんの視線は一度ぶつかるとなかなか離してきません。
こちらを見ているというよりまっすぐ前を見ているだけなのだと思うのですが、揃えられた黒髪の下の大きな目は、どこか見てはいけないものを見ているような感覚にさせられます。

4位 きみは六等星

一年前の2021年4月、透色ドロップはメンバーを大幅に入れ替えて現体制となりました。
その時に初披露されたのが「≒」とこの「きみは六等星」だったそうです。
現体制にとって初めてのオリジナルソングということになります。

楽しいけれども切ない恋愛ソング、それがこの曲の大きなテーマだと思っています。
「夜明けカンパネラ」で目立った鐘の音はこの曲でも多く取り入れられ、ライブではアンコールで披露されることが多いようです。

1番も2番もサビ直前の振り付けは同じです。
両手でなにかを叩いていくかのように下から上に向かって上げていくという動きなのですが、歌詞によくリンクしています。

1番では「期待と不安入り交じってく」とあり、高鳴っていく心臓の鼓動のようですし、2番「君を思い夜に駆ける」では夜空の暗闇に向かって夢の世界が開いていく感じが表現されているように見えます。

そしてこの2番サビ前、歌詞にも心動かされます。
それがこのフレーズです。

「聞き耳立て情報集め 流行りの好きな曲 君を思い夜に駆ける」

「流行りの曲」とあるので、YOASOBIのあの曲のことを言っているのかとなりますが、単純に「夜に駆ける」というフレーズだけを切り取っても、なにかと考えがちな真夜中に1人想像を膨らませるという歌詞の主人公の姿が思い浮かびます。
次は曲の話をしようと、頭の中でシミュレーションをしているのでしょう。
そして先の振り付けです。
全てが繋がっています。
上手いとしか言いようがありません。

「切なさ」もある曲だと書きました。
不思議と琴線を震わせてくるのが、2サビ終わりCメロの間奏です。
天川さんを他のメンバーが星をかたどって囲み、しゃがんでいた天川さんが飛び出すというシーンの前後、どうしてだか分からないのですが、いつもここで切ない気持ちに襲われます。

3位 君の描く未来予想図に僕がいなくても

タイトルからして恋愛ソングです。
でも、「良い人で終わってもかまわない 優しくしか出来ないんだ」と描かれる、奥手で何もできない「僕」の姿は、果たして恋愛ソングだけのものなのかと考えることがあります。ここにはもう一つ側面があるのではないでしょうか。
アイドルを見るファンの目線にも置き換えられる気がするのです。

アイドルは特殊な存在です。
地下アイドルなどと言ってみたりもしますが、どんなにステージとフロアの距離が近くともその間には絶対的な壁があるはずです。
でも特典会などで話したりSNSを覗いたりするとき、ほんの一瞬ですがそのことをわすれてしまう。
身近に感じさせるというのも言ってみればライブアイドルの「仕事」みたいなもので、それを全うしているに過ぎないですし、選ばれてステージに立っている以上絶対に手が届きようもない存在です。
それにアイドルはいついなくなるとも分からない儚さを抱えています。
そうしたことを改めて教えてくれるのが、この曲なのかもしれません。

2022年3月5日開催の単独ライブ「瞬間的記憶」でのパフォーマンスでは圧巻でした。

恋愛ソングとしても共感できますし、同じ形を保つことが1年でさえも難しい女性アイドルを「応援」することしかできない身にも染みてくる曲です。

あとこの曲、MVのダンスショットではメンバーの動きがどこか控えめでおとなしく見えるのですが、これは恐らくMV仕様の動きにしているまでのことであり、普段のライブで後ろの人もちゃんと見えるようにとどれだけ動きを大きくしてくれているかが分かります。

2位 アンサー

1年近く前に知った当初、透色ドロップにはか弱いという印象を受けていました。
音源だけを聴くと、良い曲は多そうなのですが歌声の線が細く、言い方を悪くすれば頼りなさげに感じたのでした。
同時に清楚感や透き通るようなイメージも植え付けられたのですが、そんな浅いところでのイメージがひっくり返されたのがメッセージ性の強い強い「アンサー」をライブで観たときでした。

上のリンクにも書きましたが、特に印象深かったのがこのパートです。

「リスクを背負うことや 見たことない事実を「無謀だ」とか「簡単じゃないんだ」って否定した」

見並さん、瀬川さん、花咲さんが前に出てきます。
上目遣いでにらみつける見並さんと入り込みすぎて泣きそうにも見える瀬川さんと、2人の間で一切ぶれない花咲さん。

ステージをみたとき、ただならぬ雰囲気を感じました。
これはちょっとした衝撃でした。
頼りなさそうという印象はほんの一部分に過ぎず、このグループにはまだまだ見えていないところがあるのだと、ここで初めて思わされました。

「どんな対バンでも戦える曲」だというコメントがすごくわかります。
SNSの画像や「ネバラン」「カンパネラ」だけでは想像もつかないような表情が透色ドロップにはあります。

瀬川さんにとっては、透色ドロップに入りたいという決意を強くしたのがこの曲らしく、加入後の振り入れがお披露目の前日で苦労したエピソードも含めなにかと「この曲にとらわれてきた」と言います。

MCを入れながら10曲も披露し、ライブはこの時点で1時間を優に越しています。
メンバーの多くは汗をかいていて、中でも目だったのが瀬川さんでした。
瀬川さんのパフォーマンスは情熱型というか、大げさに言うと魂を燃やしている感じがします。
この日も裏返りそうなくらいに歌声を出していました。

1位 君色クラゲ

場内にうっすらともやがかかり、照明は綺麗な青色に変わりました。
海の中にいるかのような世界観が演出されています。

この曲にはそこまで重めに投票してはおらず、一位だということに少し驚いたのですが、ポジティブで可愛らしいという点では一番透色ドロップっぽい曲と言えるかもしれません。

「アンサー」「衝動」が引き立つのは、透色ドロップのイメージをそのまま投影したようなこうした曲があるからこそなのだと教えられました。

親指と中指を合わせ、他の指を立てる「クラゲポーズ」は楽しく、手をゆらゆらさせて上下に動かすサビの振り付けでは、腕の上下に合わせてちょっとジャンプしたくもなります。

透明な色で向こう側まで透けて見えてしまうクラゲと透明感あふれる透色ドロップ。
好きな曲で挙げた佐倉さんの言う通り、透色ドロップのためにしつらえられたような名曲です。

ーーー

以上がランキングトップ10の曲でした。

こうしてみると、楽しい、切ない、苦しい等さまざまな感情を体験できるのが透色ドロップなのだと改めて思います。
ランキングが全て発表された後、メンバーが一人ずつ好きな曲を語る時間がありました。
印象的なのが、メンバーそれぞれ全く違う曲を挙げていたことでした。
それだけバリエーションが豊かで良い曲だらけだということでしょう。
この日はどちらかというとテンションの高い曲が入る傾向にありましたが、ランクインしなかった曲も良い曲ばかりです。

天川さん「りちりち」
佐倉さん「夜明けカンパネラ」
橘花さん「孤独とタイヨウ」「≒」「りちりち」
花咲さん「君がいない未来予想図に僕がいなくても」
見並さん「君色クラゲ」「衝動」
瀬川さん「アンサー」

曲の多彩さだけでなく、メンバーが曲ごとにスイッチを切り替えるのが早いことにも驚きました。
この日のパフォーマンスは、重い鉄下駄を履かされているようなものだったはずです。
曲は直前まで分からないし、その間にトークを挟まないといけない。
MCコーナーを挟むと空気が一旦リセットされます。
和気あいあいと喋ったあとにシリアスな曲をやらないといけなかったり、セットリストもいつもではあり得ないような流れになっていたと思います。

それでも、順位発表だけがメインイベントにならず、10曲の長尺ライブを楽しむことができたという感想が後に残ったのは、他でもなく鉄下駄を履かされながらもきっちりと切り替えたメンバーのパフォーマンスにあったと思います。
この日同時配信されていたYouTubeの画面の向こう側にも届けんとするステージでした。

無料で開催されたこの日のライブの目的は、5月末から1カ月で東名阪福を巡る「2ndバースデーライブツアー」につなげることにあったと思います。
凄く良いイベントでしたし、メンバーにとってもいい気分になれたようでした。
ツアーまでの弾みがついた気がします。


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