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改・「60おっさんのタイからラオス・初めてのバックパッカー1人旅」 note版

〜タイ北東部の長閑な街へ行こうとフアランボーン駅へ
No.5


6月17日(日)、3日目

 寝起き、ベッド上で微睡む。
『この先どうなるやろ。何かつまんない。不安からくる気持ちか・・・』
人の気配がないのでトイレへ行き、続いてシャワーを浴びる。
パンと水を飲んで、
行こかって気分で、10:30チェックアウト。

小さな受付カウンター、誰も居ない。
書き置かれたメッセージの通り、
Keyを置き、サイナラ!

アーリー駅まで朝の屋台売りの賑わいの中を、
昨日と同じ様にブラブラ進む。
空気で膨らんだパンパンの袋の中の食物。
『アカン、不味そーだ』
僕にとっては・・・。

何気に、37THBでチットロム駅へ向かう。
薄っすら浮かぶJTBプラザ・・・・!!??
そうか、日本がイイのか?
コーヒーと少々のリラックスを求めて行く僕。
情けない。

が、が、が、休みだ!!
そうか、日曜だ!
休みやん!
全くもって、頭が廻っていない。
考えるゆとり無し。
急に便を催す。
幸いに、お陰様でキレイなトイレで用を足し、ここを後にする。

チットロム駅からラチャムダリ通りをおおよそ一駅分南下。
地下鉄シーロム駅までの30分ほどの道のり。

高級ホテル街の脇にはどこにも巨大な観葉植物が植わっている。
なんとも、リッチ感溢れる通りだ。
いい気分に浸る。
途中、立派なビルに入っているセブンイレブンでいつものお安い水を買う。
でも、この通りで買うとリッチな気分になる。

左手にルンビン公園が見えてきたので、
ここでしばらく休憩にする。
休日を楽しむ若人、ファミリー、恋人たち、
それに、外国人観光客がニコニコ笑っている。

僕だけが・・・、
『なんで深刻なんだ!おい、楽しみに来たんだろ。ああ、そうや。
無目的に慣れてないから不安なんだろう。
それをしたかったんじゃないのか!だったら、いいじゃないか!
コトバが喋れない・・・?仕方ないだろう。
判って来たんだろ。
ウジウジ、クヨクヨするなよ!楽しめよ』
心の声をヨソに、
地図を拡げて自分の居場所を確認する。

聞こえてくる笑顔が絶えない戯れる人々の心中を
勝手に読み測って、
陽と暗やな、
とその対比に虚しさを感じる。


シーロム駅からフアランボーン駅へ行き、そこで、ゆっくりしようかと、
ルンビン公園を出たすぐの所の地下鉄への階段を降りる。

シーロム駅キップ売り場へ行く通り道に備わっている探知ゲート
(どこの駅も入る時ゲートがあり、通らなければならない)を、
潜るとピーピーピー!と鳴り響いた。

『ウワァ〜、引っ掛かった!?アレッ・・・? アアッ!(髭の)カミソリかな・・・?』
しか思い当たらないので、
やって来た検察のおばちゃんにジェスチャー交えて、
バックを開け、懸命に説明。

何故かニコニコ顔でOK!
怪しまれなかったのか?!
検察のおばちゃんは僕の持っていた地図を拡げろとジェスチャーし、
そうする。
「私の生まれはブリーラム」
とその位置を指し示し、少し懐かしがって、
「ここから来たの。ここから」
と嬉しそうに言った。
『どういうこと?・・・きっと、喋りたかったんだろう・・・』
と頷き続けた。

『さぁ、キップ、買って行こう!』
と、20THB札を入れ替え、差し替えするが、戻ってくるばかり。
『??ったく!』
そこへ、気付いた検察のおばちゃんが来て、
「古いのはダメ!王様、変わったから新王様の札じゃないと!」
「ええ!?」
探す。
たまたま、新王様が1枚あったので入れる。
スー、ガチャ、ポチッ!ピーンと地下鉄コインを無事、ゲット。
笑顔のおばちゃん。
「Good bye!」って、
手を振り、地下、深く潜っていく。

午後1時。
昨日、来たフアランボーン駅だ。
人ゴミ。
待合独特の空気。
どうしようかと思案中・・・。
手荷物一時預かりで荷を置き、出発の夕方まで、昼食と散策だ。

チャイナタウンに向かう。
ところが、行けども行けども淋しい。
地図通りの筈だ。
想像している賑わいはどうした?
今日は日曜、休み?何で?
観光相手だろ!おかしい?!

出くわしたセブンイレブンで取りあえずビールを買い、ウロウロ・・・。

すると、中華街のあのケバケバしさが突如、目に飛び込んで来た。
ざわざわザワザワ、
僕の頭の中の地図、
位置関係が吹っ飛んで行った。
すると、不安になってきた。

あっちへ、こっちへ。
『あれ、ここは何通り?迷ったかな?時間はタップリあるけど、
自分の位置が判らない。何か、気色悪い。しかも、異郷の地だ』
中華でも喰おうかって気分もどっかへ飛んで行った。
『アレ、変だ。小パニック。自分の今の場所が把握できなくなったら、
僕はこんな風になっちゃうんだ』
と、気落ち!!
『バカじゃないの。まだ。出発までにはタップリ時間があるんだから、
落ち着け・・・』
日本で、一度もなかった感覚に戸惑ってしまう。
深呼吸。

建物の際に座り込んで夢中に駄弁っているおばさんに目が行く。
地図を開き、尋ねる。
「駅は?」
「まっすぐ、あっちだよ」
「うーん、OK、サンキュー!」
行く。
先ほど歩いた通りに出る。

『あっ、ここか、ここに出るんだ。あーあー・・・』
点が線に繋がった。
『もう、戻ろ』

疲れた僕は、駅のベンチに腰掛けボーッと。
『中華も一人で食べに入れないのか!おい。60のオッさん、情けねぇーの』
午後3時だ。
何か腹に入れておかないと。
タイの飯に挑戦しようか?

と、駅ナカのイートーインみたいなところで、
カレーライスみたいな美味しそうな写真を見て、それを注文。
金券を買えと言うので、金券窓口で買う。
愛想のないおばちゃんだ。
カウンターに戻り、相当の金券を渡す。
その場で盛り付けられた皿を受け取り、
蝿が飛び回るテーブル席で一口。

『マズイ!甘い!なんだ!このメシもドローッとしている。ダメだ!』
でも、仕方ない、8分目ほど腹に入れとかなきゃ、
ひたすら水を飲み流し込む。
横を見ると、
ひとテーブル挟んで左隣のヨーロッパ風の男性は、
上品に同じようなモノを、平らげているではないか?
『ムムッ、お主は中々、出来るのう!』と感嘆する僕。


『早よー、寝台乗って、寝るとこ確保して、ゆっくりしたいなぁ』
と駅構内をウロウロ。

洒落たワッフルの屋台、18THB。
日本では買わないが、味を想像し、これで口直し!
『旨い!!このワッフルで生き返ったようだ』
本当にそう思った。

出発列車の電光掲示板を見る。
【10・ウボンラチャターニー・18:55】
荷を受け取り、
ホーム10へ行き、
ベンチで待つことにする。

長〜い、長〜いプラットホームを進む。
列車内販売用の飲み物、
食べ物を仕込んで待機している女性たちが
ベンチを確保して、準備している。

その一人、車内販売のおばちゃん。
『どこ行くの?』
キップを見せ、
『ウボンラチャターニー』
興味無く、
『フーン・・・』
と愛想なしで去って行く。

時間を見る。
16:00。
出発は・・・3時間あとか・・・。
『うう・・ん?しんどい・・・風邪気味か?ヤバい!』
即座に薬飲み、ひたすら待つ。


17:30。
待ちに待った列車が入線。

係りの者が保守点検、整理整頓。
通り掛かった車掌さんらしき人に尋ね、キップ見せる。
「OK?」
「OK」
乗り込み、指定寝台席に自分のスペースを整える。
『自分が安心できる領域が欲しいんだなぁ』
と、一息ついた時に、

なんと、
同じ指定番号のキップを持った女性の親子が来て、
互いに、
『????』
彼女に、私のキップを渡し、チェックしてもらう。
と、最悪の事態に陥っていた

彼女たちのキップが合っていて、
アッパーとロアーの2席の座席指定番号はキチンと印字されている

で、よく見ると、
私のヤツはなんと昨日の”16日”のロアーのキップやん!

ナンてことや!今日は”17日”!!!

よーく、よーく、よーく見ると、
”16JUN18”の字の列

ムムム!??!・・ムッ。

私は、きっと18は2018の18じゃなく、18日の18、
そして、今日17日のことをなぜか18日と思っていたみたい。
なんて言う馬鹿みたいな勘違いだ。
私が持っている、このキップは6月16日、2018年のんやないか、
今日は6月17日。
なんで、昨日、16と言う数字を認知できなかったのか・・・、
しかも、私は18日じゃなく、17日に出発するんだよ。

この時点で、
まず、このキップ代、701THB(2300円)はパーとなる

次に、
今からこの列車のキップが取れるかだ!

大慌てで窓口へ。
「間に合うわよ」
彼女たちの励ましの言葉を後にして、
突っ走る。

で、ハァハァと窓口で、
使われなかった昨日のキップを見せ、
一応、払い戻しはないか尋ねるが、やはりダメ。

では、同じ列車のキップはないかと、必死に聞く。
係りの男「ありません」とアッサリ。
パソコン画面を示し、
ニンマリ「ねっ!」


〜私のキップはロアー(lower、寝台の下)だったので、ロアーしか調べてもらっていないような気がしており、その結果がNOで、この時点でロアーでなくてもいいから、アッパー(up、寝台の上)でも調べてくれと、頭が回らなかったのが残念に思う。しかし、今を振り返れば、どのように喋ったのか解らないが、なんやかんやと意志が伝わったことは大したもんで、必死だったので、苦にもならなかったなぁーと不思議に思う。
もし、アッパーが有れば、もう少し安く買え、その列車で行けたのだが、
と今更言っても仕方ない〜


で、今から何あるの?

20:30発のスペシャル特急981THB(3300円)のロアー、ならある。
(なぜ、安いアッパーにしなかったんだろうと今でも思う)

「高い!」
そやけど、風邪気味。
しかも、明日、宿もとってある。

「OK!」
購入。
今度は大丈夫だろうと、見ながらホームに向かう。

が、
『???woman!!!???』
と印字されている。
『あーぁ、また、何か言われるかも、もうしゃあない。そん時は、そん時や。もう、しんどいんや、疲れてんや』
と、キップを手に今度は、
4番のプラットホームのベンチへ重い足取りで向かう。
『あぁ、ホンマ、疲れた・・・』
でも、とにかく、キップは確保、20:30発。

今は18:10。
乗っていただろう隣のホームの出発前の列車を見ながら、
これから2時間以上待ちかと力尽きるも、
宿の予約が気になり、スマホのメールを確認。
『大丈夫だ、フー・・・』

日も暮れ始め、
ディーゼルの唸り音だけが鈍く頭に響く。
線路と線路の間を時折、駆けて行ったり、
トボトボと歩いて行ったりする
鉄道関係者の動きをぼんやり眺め、
『何してんのかなぁ』と微睡む。

そして、日が落ち、
入線するヘッドライトの光芒をまだか、まだかと待つ。

来た!!!
『おぉ!ええ感じの、スペシャルやん!!』

プラットホームの灯りに、
キラキラ反射するシルバーメタリックのボディー。


ここはタイだ!タイにも豪華寝台列車。
少し、鼓動が高鳴る。

廻りのことなど、お構いなしに、昇降ボタンを押す。
(長く、待っていた時に、そんな行為をしていた車両清掃担当者が居たなぁと思って押す)

ササッーと乗り込み、自分のスペースを作り、落ち着く。
『あー、もう動きたくない』
清掃係りの人が何度か私の前を通っていくが、
特に何も言わない。
『いいんだ、いいんだ、これで』

しばらくすると、係りの若き男性が奥から順番に、
手早く座席を寝台態勢にセッテイングし始める。

僕も、お願いして、その素早い動きに見とれてしまう。
そして、寝床を作り、
窓側のカーテンを閉め、
一人の世界に入っていこうとした時、
チケットチェックの係りがやって来る。

『・・・women!?大丈夫かいな?!』

ジーッと眺めている係りの人。
返してくれる。
フー、難なくOK。

キラリ、光る目!
「ビアー!?」
「ビアー!ノーノー!ハハー」
「・・OK?!」
チラリと見えていた缶のビアーデザインを逃さず、
飲むなと宣告される。
なんと!
タイでは列車の飲酒はダメなんです
それでも、飲もうと思っていたが、風邪気味なんで大事をとってやめる。

・・・やはり、なかなか、寝付けない。
が、ぼんやりしたまま、寝たのか、寝てないのか・・・。

いつの間にか、仄かな明かりが窓から差し込み、
もぞもぞと起き、
洗面所に行き、歯を磨き、用をたし、
丁度、やって来た若き乗務員の人に、寝床を片付けて貰う。

手際の良い寝台セッティングの事を
『Good!』と褒めたくなって、言うと、
若い乗務員はニヤッと笑い去って行った。

隣の空になった寝台席を目にして、僕は、窓外を眺める。
昨日、乗って居た隣の女性は、もうすでに居なく静かだ。
『乗務員とヤアヤア揉めていた、隣の女性。
一体、何があったんだろうか?』
もちろん、何処かで下りたんだろうけど、
なんだか寂しい気がした。

朝の光線が時折、キラキラ差し込んでくる。

降りる準備をしていると、
あの若い乗務員がニカーッと
「次、終点だよ!」
と着く事を知らせにやって来た。
ワザワザなのか、当たり前なのか知らないけれど
『サンキュー!』と気持ち良く返す。
少々、僕は元気になっている。

いい印象。今、午前5時45分である。



サポートしていただけましたら、より一層、充実した日々が送れると共に、明日へのパワーが漲ります!よろしくお願いします。