はじめての睡眠薬

今のところ、はじめてのアコムは利用したことがないが、はじめての睡眠薬は、先月中旬、心療内科医から処方されるに至った。

まあ、端的に言えば、不眠傾向が数年単位で長らく続いていたからである。
医師から何度か「使ってみる?」と打診されたが、今まではずっと使っていなかった。

なんとなく、睡眠薬を使うことに後ろめたさというか、癖になったら睡眠薬無しでは全く眠れなくなるのではないか、というような漠然とした不安感があったからである。

だが、さすがに先月は、処方してもらうことに決めた。
6月上旬のほぼ1週間、全く眠らずに生活してしまっていたからである。
仕事を無難にこなしながら、休日は朝5時起きで趣味の登山に行き、夜はずっと深夜アニメを観たり小説を読んだり小説(モドキの駄文)を書いたりYouTubeの野球動画を漁ったりいきなり家を飛び出して近所の溜池の周りを走ったり自転車を駆って深夜のコンビニに行って一番くじを引いたりしていた。

ええ……。
と、ドン引きされること請け合い。

あるいは、「1週間って言うけど、本当はどこかで結構寝てるんでしょ」「絶対、仕事まともにこなせてないよね」「いや、1週間寝ないとか普通でしょ。俺なんて1か月以上寝ずに働いてるぜ(謎の不眠自慢)」など、多方面から否定的な意見が寄せられるかもしれない。

でも、これが本当にあったことなのだ。
というか、定期的に私の身体、というより心に訪れる変調といえばいいか。

双極性障害(躁うつ病)の患者というものは、「躁状態」のとき、本当に「無敵か!」と思えるくらいのバイタリティーと行動力を発揮し、自分の心の叫びに呼応して東奔西走、自分の欲望のままに突き進み、そして、たいていの場合は何らかの人間関係の齟齬や破綻が生じて、周囲との軋轢をきたし、「うつ状態」に達して心のエネルギーがスゥーと枯渇したときに後悔するのだ。なんであんな、馬鹿みたいな誇大妄想に踊らされて、他人に迷惑かけるようなことしちゃったんだろうなぁ……と。

抽象的でわかりづらいかも知れないが、双極性障害という脳の病気は、そういうものなのだ。

本人にとって好調時(躁状態)は、えてして自信過剰で傍若無人になるので、周囲とのイザコザを起こし大変で、家族や職場の人など、身近な人が困惑し、混乱し、疲弊する。

例えば、宝くじで7億円当たると確信して、わざわざ全国各地のよく当選くじが出ると喧伝されている10都市の店に赴き、3000円ずつ計3万円購入し、無駄な旅費と無駄な出費をした挙句、結果はきっちり300円の末等×10枚に終わってしまう。

あるいは、卒業後まったく付き合いのなかった高校時代の同級生の女性(なんなら高校時代に3年間同じクラスだったが一度も会話したこと無かった)に、社会人になってから連絡先を人づてに調べ上げていきなりメールを送り「会いたいです」などと迫る

またさらに、いきなり千葉ロッテマリーンズのホームゲームが見たくなって、コロナ禍において遠方移動が極力制限されていた時期だったにもかかわらず、関西方面から始発の新幹線(のぞみ号)に乗って東京、さらに幕張に出向いてしまったうえ、着いた後で「今日野球が観たいので仕事休みます」と上司に連絡(すでに始業時間を過ぎていた)してしまう。

おまけに、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』に影響されて、楽器経験など小学生のソプラノリコーダーや鍵盤ハーモニカ以来なのに深く考えずヤフーショッピングで高額なギターを買ったら右利き用で左利きの私には弾けなかったので部屋の調度品と化している――などなど、さまざまな突飛な行動を起こしてしまうのだ。

これらの行動に明け暮れているとき、ほぼ100%、私は心も体も眠っていない。

とにかく、眠らない
というより眠れない

どうせ眠れないなら動いちゃえ!
眠る時間なって勿体ない、行動あるのみ!!

思考回路はショート寸前な気がするのにフル回転。

1人ブレインストーミングが延々と続いて、寝転がっても瞼の裏のスクリーンにはマグマのようにボコボコ湧き出す妄想が織りなした自分だけの映画・映像が延々と流れ続けている状態みたいな。
意味不明かもしれない。

ところがどっこい・・これが現実っ・・・・!

全部私の実体験です。
本当は、対人的にもっと問題のある行動も起こしてしまったが、ここには書かないほうがよさげなので省略する。

私の周りの皆さん、いろいろご心配とご迷惑をかけてすみません!!
そして一部の理解して配慮を惜しまないでいてくれる方々、本当にありがとう!!
あなたたちのお陰で、私は何とか仕事ができています!!

一方で、本人にとっての不調時(うつ状態)は、基本的に心が塞ぎ、何事もネガティブに捉えがちになり、不調が身体症状を伴ってつらいときが多い。だが周囲の人には、意外と本人の息苦しさは伝わらず(もともとの病前性格が、比較的ネガティブ思考な人などは、むしろ「うつ」の時のほうが本人らしさを取り戻したように映り、かえって「本来の性格に戻って良かった」などと思われたりする。これは私の場合だ。むしろ病前から陽気だったタイプの患者も少なくないらしい)、かえって大人しくしてくれているので安心なのだ。そういう周りの「大人しくて良いよね」という空気をまた、敏感に察してしまい、いっそう、躁状態の自身の問題行動を反省というか、それ以上の自己嫌悪に陥って苦しくなる。下手すると、死にたくなるし、なんなら自殺未遂までしてしまう人もいる。私は12年前、新卒で社会人になった年に一度だけ、本気で死のうと自殺企図をしたが、幸い当時の上司らが駆けつけてくれ、私自身も最後の踏ん切りがつかず、死はまぬかれた。あの時の上司や周囲の方々には、本当に、本当に感謝している。

双極性障害(私は正確には「Ⅱ型」で、こちらは躁エピソードの発現時に躁状態よりも軽い「軽躁状態」に至る程度の双極性とされる。とはいえ、うつ状態では普通に気落ちするし、かえって「軽躁」だから、自分も周囲も自分の気持ちがハイに向かって危なっかしくなっているのに気づきにくく、症状が悪化してからようやく分かるということが多い。生活の決定的な破綻に至り、入院が必要になる場合も多い「躁状態」になるのが「Ⅰ型」である)による心身への悪影響は数多あるが、やはりちゃんと眠れないことは大問題だ。眠れなくてハイテンションで過ごしていても、いずれはジェットコースターが上方からどん底へ下降するように調子の波が変化し、結局うつに下振れした時のしんどさが倍増していくように感じる。

睡眠負債の取り立ては恐ろしい。
はじめてのアコムは、お金は貸してくれるだろうが、失われた睡眠時間を補填してはくれない
ショートスリーパーだろうがロングスリーパーだろうが、結局は毎日必要な時間だけ眠り、心身の安定性を保つことが大事なのだ。
この病気を患っていると、本当にそのことを痛感する。

というわけで、私は睡眠薬の服薬に対する不安を、医師に対する質問攻めと下調べを経て宥めすかし、睡眠という多分お金より生理的に大事なものを享受することにした。

などと書いている間に、また日付が変わってしまった。
先月中旬までならば、このまま朝まで書き続けて、気が付けば朝が来ていて出勤前に慌てて寝転がって寝ようと試みて寝れないわけだが、最近は違う。

いま、はっきり眠気が来ている。

デエビゴ錠2.5mg処方。

本来は1日に5.0mg飲むのが普通らしいが、心療内科医から「そんなに不安なら、まずは2.5mgで試してみて、効果がなければ2錠分使ってみて」と諭された。

結果。

2.5mgを飲んだだけで、飲んでから30~1時間後くらいにはキッチリ眠気が来るようになったのだ。

最初の数日はその眠気に乗っかって寝ようとして、でも転がって電気を消してから相変わらず眼がさえてなかなか寝入れないという時期があった。
けれども、最近は本当に、不思議なくらいすんなり眠りに落ちれる日が多くなっている。明らかに、飲んでなかったときよりも、飲んでいるときのほうが、精神衛生上も良いし、実際睡眠時間を稼げているのだから、結局、もっと早く、睡眠薬に頼っていればよかったのだ。

私はそういう結論に達している。
達したところで、眠いから寝ることにする。
寝る前にパソコン画面を見続けるのはよくないと分かっているが、この時間が一番書きやすいんだよなあ……。
朝型人間になれればいいが、昔から夜型で、常に不規則な生活と隣り合わせだった。そういう元からの生活習慣も、双極性障害を発症した遠因になったのかなあ、とも思う。

また書く機会があれば、私が双極性障害になったと思われるきっかけや、発症後の波乱万丈の経緯など、詳しいことも伝えられる範囲内でnoteに挙げていきたい。
自分自身の生き方を見つめなおすきっかけにもなろう。

というわけで、おやすみなさい。

(了)


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