杏仁豆腐

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「ホラゲマニア、祓い人になる」あらすじ

 ホラーゲームが大好きな少年は、ゲームはゲーム、リアルとは別、と分けて楽しんでいた。だが彼がゲームで培ったセンスはリアルな怪異退治にも有効で――。

    • 「ホラゲマニア、祓い人になる」第3話

       息を荒くしながら家に帰ると、二階から降りてきた姉がおかえりーと声をかけてくれた。 「傘忘れたんでしょ。あーあ、濡れてんじゃん。風呂入ってきな」 「姉貴。俺……」 「ん?」  さっき怪異と戦ってたんだ、という言葉はのみこんだ。何でもないと笑って風呂に向かった。  父はまだ帰って来ていないが、電話で姉が話したらしい。これからも学費と生活費は出すから、心配しないでほしいという内容だった。 「お金とかそういう問題じゃないでしょ!ちゃんと面と向かって話せっての!」  怒る姉とは対照

      • 「ホラゲマニア、祓い人になる」第2話

         翌朝、朝食の席は重たい空気に包まれていた。母の顔をちらりと見て、兄弟は顔を見合わせる。沈黙が気まずくてテレビをつけると、男性アナウンサーがニュースを伝えていた。画面が現場の中継に切り替わる。見覚えのある風景だった。よく見ると通学路じゃないか。 『昨日の午後7時頃、少年たち5人が刃物を持った人物に切りつけられ、重軽傷を負いました。少年たちの証言から犯人は二型怪異とみられており、警察は事故として調査を進めています』 「うわ、すぐ近くじゃん」 「二型怪異……見に行こうとかすん

        • 「ホラゲマニア、祓い人になる」第1話

           初めて貰ったクリスマスプレゼントを覚えているか?俺が初めて貰ったのは、ゲームだった。ほら、これが欲しかったんだろうと父から渡されたそれは、クラスの友達が持っているゲーム機よりも二回り以上大きく、すぐに分かった。これじゃない。だが父の笑顔を見たら、間違いを指摘することなんてできなかった。何かのブランドの服と靴を貰ってはしゃぐ姉を横に、自分の気持ちがずうんと沈んでいくのを感じた。ゲーム機本体の他にソフトもひとつあり、袋から出して見てみる。パッケージ全体が黒っぽくて、アルファベッ

        「ホラゲマニア、祓い人になる」あらすじ

          「表裏亜行」 あらすじ

           要領よく生きることを信条とする少年、笙はある日父から留学を勧められる。笙はお供に使用人の男を指名し、目的の国へ向かうのだが、何か奇妙なことが増えていってーー。

          「表裏亜行」 あらすじ

          「表裏亜行」 第3話

           数日ぶりに地面に足がつく。笙は大きく伸びをして、新鮮な空気を吸い込んだ。辺りを見ると、ここは城壁の内側のようで、船の後方には大きな出入り口があった。多分船内で聞いた大きな音はあれを閉じるときに発せられたんだ。  他の留学生たちも港に渡された板を通っておりてくる。1番後ろにいた、顔色の悪い青年が情けない声をあげる。 「待ってくださいお嬢様。今船酔いがあと引いてて辛いんです」 「その程度で弱音吐かないでよ。早く歩いて」  彼は振袖の少女の供のようだ。先ほど食堂にいなかった

          「表裏亜行」 第3話

          「表裏亜行」 第2話

           風が気持ちいい。甲板の上で海を眺めている笙に、弓月が尋ねる。 「笙様。なぜ俺を供に選んだのですか」 「興味が湧いたからだ。この間、僕のことを強かだと言っただろう?」 「やっぱり聞いていたんですね」  弓月の声は笑みを含んでいた。それを見てやっぱり他と違うなと思う。他の使用人なら、やたらと恐縮してなんとか罰を受けまいとするのに、弓月は自然体だ。 「怖くはないのか?武士の不興をかって手打ちにされる者もいるのに」 「あなたはそんなことをしないでしょう。それじゃわざわざ気弱な

          「表裏亜行」 第2話

          「表裏亜行」 第1話

           木刀が弾き飛ばされ、板張りの床に落ちる。立ちあっていた父がやめ!と野太い声を発した。 「負けました。兄様は相変わらずお強いですね」  弾かれた木刀を拾い上げ、微笑む弟に勝者である兄は冷たい口調で言った。 「心にもないことを言うな。父上、私は1人で鍛錬させていただきます」  兄は1人スタスタと稽古場を出て行ってしまった。  弟は袴姿のままパタパタと後を追う。 「兄様、父様が稽古をつけてくださるとおっしゃっていました。一緒にやりましょう!」  パシッと軽い音がした。

          「表裏亜行」 第1話