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ぬいぐるみ君

 お人形ちゃんが来なくなった。いつも笑顔で窓辺にいる僕を見つけて手を振るお人形ちゃんが来なくなった。お人形ちゃんが僕を見つけて窓越しで可愛がってくれた。お人形ちゃんは僕を見ていつも頭を撫でるまねをしてくれた。撫でている間にお人形ちゃんは死人の目で何か呟いていた。僕が心配するとお人形ちゃんは笑いながら「ごめん」って口にした。お人形ちゃんが来なくなった途端に僕の心に真っ黒い穴が空いた。今も心に強い冷たい風が吹いている。その風が心の穴にまで吹いてくる。風が心がお人形ちゃんが来なくて泣いていた。僕は泣きたかったのに泣けなかった。辛かった。「お人形ちゃん、何で消えたの?」

 お人形ちゃんが来なくなって僕の主さんからお人形ちゃんが目覚めなくなったことを聞いた。主さんはお人形ちゃんのことを残念がっていたけど、人間に対する感情ではなかった。おもちゃの人形に対する感情だった。僕は主さんに叫んだ。訴えた。「お人形ちゃんはおもちゃの人形ではないよ。お人形ちゃんは主さんよりも立派な人間だよ。僕の友だちに会わせてよ。お願いだから。」


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