Web3は哲学です!?Web3とは何だったのか
覚えていますか、Web3のこと?いなくなってしまった技術たちのこと、時々でいいから・・・思い出してください。
いや、まだ異界送りされていない。世間はAIの話題ばかりで、ほとんど聞かなくなりましたが、たぶん完全にいなくなってしまうこともない。ただし、一般層へ普及するかは今が正念場という気がします。
来るかもしれない未来に備えて、あるいは自分(あなたも含めて)がその未来を作るために、Web3の今後について考えてみよう。
WebX
まず初めに誤解を解いておきたい。Web3はWeb2を置き換えるものではありません。共存します。ややこしい名付けはやめてほしい。
Web1やWeb2と何が違うのか?視点によって答えは様々ですが、よく見る説明は次のようなものです。
Web1・・・一方的な情報発信がメイン
Web2・・・双方向での情報交換が普及
Web3・・・非中央集権
Web1時代から2chで情報交換していたよね?とかツッコミどころはありますが、一般層ではなかったでしょう。
別の視点で次のような分類もあります。
Web1・・・WWWの誕生と情報の民主化
Web2・・・デジタル技術のスペックアップとビジネスの躍進
Web3・・・人々の人々による人々のためのインターネットへ
民主化→商業化→民主化の流れが見えてきます。非中央集権も民主化です。他にも次のように分類する人もいます。
Web1&2・・・情報のやり取り
Web3・・・価値のやり取り
Web2時代からネットバンクあったよね?ごもっとも。上記は言葉が足りません。「信頼できる第三者が不要」で価値のやり取りができるようになった、が適切な説明です。「信頼できる第三者が不要」を除くと、Web3ならではのサービスは消滅します。
ところで、デジタルデータに価値はあると思いますか?そもそも価値が発生する条件は?金塊は価値がありそうですよね。じゃあ国が発行する紙に価値はありますか?多くの人が価値を信じるなら価値があると言えます。信じる対象が国か、世界中の人か、という違いはあれど信じるなら同じです。
既存の銀行ネットワークがあるのに必要か?も気になりますよね。日本にいるとイメージできませんが、国や自国の法定通貨が信用できない、あるいは銀行口座を持たない人たちも世の中にはいます。さらに進んだ事例として、ビットコインを法定通貨にした国もあります。
“ビットコインの国”エルサルバドルは今|おはBiz|おはよう日本|NHK
Webの変貌を振り返ってみて、Web3の特徴が見えてき・・・ませんよね?まったく分かりづらい。次にWeb3のキーワードを見てみましょう。
Web3のキーワード
Web3と聞いて、何を思い浮かべますか?代表的なキーワードを紹介します。
ビットコイン
すべての始まりです。ブロックチェーンはビットコインを実現するために生み出されました。
時価総額No.1の仮想通貨です。
通貨なのに未だに買い物できないよね?とよく言われますが(実はビックカメラで買い物できる)、デジタルゴールドとも呼ばれており、金塊で買い物できないのと同じです。
ブロックチェーン
改ざんが非常に難しい分散型台帳です。世界中のユーザーによってネットワークが維持されています。
改ざんの難しさは、その技術的な仕組みを調べることでイメージできると思います。本記事の趣旨とは異なるため興味を持ったエンジニアの方は自分で調べてみてください。
仮想通貨の漏洩事件は記憶に新しいところですが、ブロックチェーン自体の改ざんは非常に稀で、ほとんどは取引所に預けられているユーザーの秘密鍵が漏洩したことが原因です。仮想通貨=暗号資産ですから、暗号化に用いた秘密鍵が漏洩したら盗まれます。
特に断りがない場合は"パブリック"なブロックチェーンを指します。
スマートコントラクト
明確な定義の定まっていない言葉ですが、ブロックチェーンという分散型プラットフォーム上で条件に応じて動作するプログラムです。イーサリアムなどのブロックチェーンに備わる仕組みです。コントラクト=契約を自動執行する仕組みという説明もよく見ますが、よくわかりません。法的な契約の意味は含まれませんし、すべてのプログラムは何らかのイベントに基づいて自動的に動作するものだからです。
スマートコントラクトのプログラムは仮想通貨そのものに書き込まれるわけではなく、ブロックチェーン上に別途デプロイされ、ノードというコンピューターで実行されます。
他のキーワードの殆どはスマートコントラクトのおかげで実現できています。
イーサリアム
時価総額No.2の仮想通貨です。
ビットコインが通貨を主な目的としていたのに対して、イーサリアムは停止せず、24時間自律的に動き続ける汎用性を持ったコンピューターを目指しています。
NFT
非代替性トークンです。デジタルデータの所有者を証明する仕組みです。誰が所有しているか、所有者がどのように移動したかを分散型台帳に記録します。
注意点として、民法上の所有"権"はありません。NFTに限らずデジタルデータに所有権は発生しません。「月の土地の売買と似ている」という例えが秀逸で好きです。所有”感”を楽しむものと言えます。あと、他人が所有するデジタルデータであってもコピーは可能です。コピーを禁止する技術ではないからです。どうです?欲しくなりましたか?
メタバース
ブロックチェーンとは直接の関係はありませんが、メタバース上の経済活動をNFTなどのブロックチェーン技術を活用して行うことから仲間認定されています。
ブロックチェーンに関係なく、ゲーム内で数が限られたアイテムってありますよね?入手できたら嬉しいです。自慢できます。ゲーム外でアイテムの売買が行われることもあります。
NFTを活用するメリットは、そのゲームが終了しても、そのデータはあなたのものとして残り続ける、他のゲームでも使える、ことです。が、他のゲームが対応するでしょうか?同じ会社であればNFTいらずで実現できますし、別の会社が対応するメリットはあるでしょうか?プレイヤーとしても、世界観が崩壊したら嫌だなぁと心配してしまいます。
X to Earn
「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」や「Move To Earn(歩いて稼ぐ)」などの「〇〇して稼ぐ」というキーワードも一時期話題になりました。運営企業だけが儲かる既存の仕組みではなく、参加者全員が儲かる仕組みが新しいのですが、お金が目的になると楽しくないのでは?と疑問を呈してみる。しかも、価格が不安定で、ゼロに向かっていく可能性の高い独自トークンをもらっても・・・。
ゲーム分野は仮想通貨に積極的に取り組んでいますが、相性が良いのか悪いのか・・・どう思いますか?自分の子供にプレイさせますか?
DAO
自律分散型組織です。中心のない、ミッションドリブンのコミュニティです。中央集権的な存在のリスクに着目し、分散管理を目指す思想が根底にあります。
あなたは何らかのコミュニティに参加していますか?趣味のサークル?町内会?DAOに近いのは株主総会です。自分の関わるサービスを良くしたい、日々議論を交わす株主総会、あなたは参加しますか?もちろん、そのサービス独自のトークン(仮想通貨)の保持が必要です。
これだけキーワードを挙げても輪郭が掴みづらいと思いますが「Web3とはブロックチェーンを使った何か」がシンプルな理解でしょう。
Web2の課題
中央集権が進みすぎてしまったこと、とWeb3の文脈からは語られます。インターネットは誰のもの?万人のものではなかったのでしょうか?どう見ても一部の巨大テック企業のものになっています。個人情報は収集されるし、友達とのメッセージも閲覧されているかもしれない。そして、サービス提供元の意に沿わない言動をした場合、あなたは排除されます。
これを良しとしないのがWeb3の哲学です。「Web3はWeb1のビジョンを取り戻すこと」と言う人もいます。Web1で叶えられなかった夢を、Web3で叶えたい。そう願い懸命に活動している人たちがいます。夢は叶うでしょうか?そのためのキーとなる技術がDAOです。
ポジティブな意見ばかりだと不公平なため夢破れちゃった人のポストを紹介します。スレッドが長いため、まとめページです。
Thread By @Travis_Kling - On the heels of pretty atrocious vibes t.. (unrollnow.com)
Web3の課題
中央集権に対する危機感と、インターネットの理想を追い求める姿勢は素晴らしいものを感じますが、現実的な夢でしょうか?
みんなで運営しようよ!なDAOは敷居の高さと、そんな時間ない、という声が聞こえてきそうです。DAOに限らずWeb3は難しい。専門用語が多く初めは理解できないでしょう。詐欺も横行しています。民主化を目指すには難しすぎます。
皮肉なことにWeb3によって一部の個人に富や権力が集中しています。高度な知識と技術、あるいは資産を要するからこそ、活躍できる人は一部に限られます。
資本主義の次へ
今の資本主義社会は、成長とともに格差が広がる構造的な問題があると指摘されています。経済成長の限界と、持続可能性の議論はかねてから行われてきました。資本によって独占されてしまった公共財を市民の手に取り戻そう。このような取り戻しの動きを実現できるのがWeb3だと語られることもあります。
Web3は、AIやIoTのような新しい市場として捉えるのではなく、株式会社をベースとした成長前提のこれまでの資本主義への「カウンターの時代」を作っていく概念と認識するべき・・・さらには、Web3は人類が目指すべき、「徳のある社会」を達成させていくのだと。
話がだいぶ飛んできましたね。Web3が解決すべき社会課題がこれであるなら話が相当に大きい。世間の理解が進まないのも納得です。
ブロックチェーンの弱点
一般的にブロックチェーンと言えばパブリックなブロックチェーンを指しますが、パブリックであるが故の使いづらさもあります。
インセンティブ
中央機関が存在せず、マイナーやバリデーターと呼ばれるネットワーク参加者によって支えられているため、彼らにインセンティブを払う必要があります。そうでなければ、誰もネットワークを支えてくれません。誰がインセンティブを払うのでしょうか?ユーザーです。例えば、仮想通貨を送金するたびにガス代と呼ばれる手数料を支払います。銀行も手数料がかかるので同じですが、送金ではなく、何らかのやり取りの記録をするたびに手数料が発生するとしたら?利用を控えるかもしれませんね。ガス代が一定ではなく、混雑状況によって常に変動するのも良くありません。万人のインターネットを維持するために、万人が負担を追う、当たり前のようで、厳しい現実があります。
「徳のある社会」と手数料のある社会は相性が悪いような気もします。結局は資本主義に囚われているような・・・。まあ、お坊さんもお布施を要求しますからね、いいのかな??
ユーザーが支払うガス代が不要なブロックチェーンもあります。EOSというブロックチェーンはアプリケーション開発者が肩代わりする仕組みです。
プライバシー
パブリックなブロックチェーンでは全ての記録が全ての人に公開されます。ユーザーのアドレスと名前などの個人情報が結びつかないため個人を特定できない仕組みですが、その言動から推測することは可能です。例えば、大規模な取引があり、その事実を公表した場合など。特定されたら、公表していなかった他の取引まで丸裸です。企業間の取引であった場合、それでは困ります。
企業がブロックチェーンを活用する際には、秘匿性の高いデータの保持や、信頼できるノードによる認証が不可欠です。信頼できる参加者のみで構成されるプライベートチェーンを用いることになります。代表格に Hyperledger Fabric と Corda があります。
ただし、誰かを信頼するということは、改ざんや検閲の可能性があり中央集権である、という点でブロックチェーンでなければならない理由をよく考える必要があるでしょう。
Web3の今後
ブロックチェーンのよく言われる課題にユースケースの欠如があります。どんなに素晴らしい技術であっても、実用的な用途がなければ普及しません。金融関連のサービスは除外して、社会課題を解決したり、生活を豊かにするキラーアプリケーションがない。長年の課題です。
ユーザーにとってはどうでもいいこと?
「改ざんが非常に難しい」「信頼できる第三者が不要」「全ての記録が全ての人に公開」などの特徴を活かしたユースケースは何でしょうか?
今更ですが「信頼できる第三者が不要」はメリットでしょうか?ユーザーの目的が送金であった場合、信頼できる第三者の有無はどうでもよくて、安くて早い方を使うだけなのでは?
国や企業を信頼できない、改ざんの可能性があったり、流通経路が不透明だったり、第三者のコストを削減できたり・・・どんなユースケースがあるでしょうか?一緒に考えてください。
最近のビックニュース
日本初のプロジェクトは少なく世界における日本の存在感は薄いのですが、日本も頑張ってるぞってニュースを紹介します。今後に期待ですね!
ソニーグループポータル | ニュースリリース | ブロックチェーン"Soneium™(ソニューム)"を開発 (sony.com)
ソニーの持つ様々な資産を生かしたサービスの開発が期待されます。
トヨタがブロックチェーンに触手を伸ばす理由 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
自動運転の開発に必要な走行履歴データをブロックチェーン上で売買する計画です。
Web3推進は維持か──自民新総裁に石破氏(CoinDesk JAPAN) - Yahoo!ニュース
岸田政権はWeb3を国家戦略に掲げていました。
Web3エンジニアの市場価値
夢みたいなWeb3時代が来るなら、エンジニアとして、あなたはどう行動しますか?Web3エンジニアは今でもかなりの高年収みたいですが、民主化=個人が活躍する時代であれば、なおさら活躍する場があるのではないでしょうか。稼いだら「徳を積む」ことも忘れずに。